こんにちは、神島竜です
今回紹介する作品は『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』についてです。
あらすじ
絶対に百合にはなり得ない新感覚の学園バトル&ラブコメ!
男子禁制のゲーム世界に、どんなルートでも破滅確定のお邪魔キャラとして転生してしまった俺、ヒイロ。迫りくる死亡フラグを回避するには強くなるしかない。そんな必死の努力を重ねた影響か、エルフの姫ラピス、メイドのスノウ、妹のレイ、主人公キャラの桜など、ゲームのヒロインたちから好意を寄せられることに……。このままでは「百合の間に挟まる男」認定されて抹殺されてしまう! やっぱり死ぬの? どうする俺!? さらに、俺というイレギュラーをめぐって彼女たちが争いはじめて……って、女の子同士が仲良くなる設定はどこいったんだよ。百合の間に挟まる男は●ね!
タイトル:『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』
著者:端桜 了(https://x.com/YR_HASAMARU)
イラスト:hai(https://x.com/hai_hyu)
ASIN : B0C22LKQ2Z
出版社 : KADOKAWA (2023/4/25)
発売日 : 2023/4/25
舞台は百合ゲー
面白い作品です。舞台は百合ゲー。女性同士で子供をつくることが当たり前の世界。主人公は百合の邪魔をする破滅確定の男性キャラ。
この時点で珍しいアプローチの作品だと感じました。最初は乙女ゲーとファンタジーRPG転生のいいとこどりのように考えました。
破滅するという自身の運命を変えるカタルシス、それでありながら、ゲーム世界でルールの裏を突いて強くなっていく効率化の追求による爽快な読後感。
実際、1巻はこの要素の強い作品となっている。
強くなっていく過程が早い
読んでいて、展開の速さと主人公がどんどん強くなっていく勢いのある展開に惹かれました。
文章自体が端的で事実を短くしっかりと伝えていくような文章で、それを矢継ぎ早に畳みかけている。それでいて、ライトノベル特有のその時の流行りのアニメネタを意識した主人公視点のユーモラスな語り口をカッコつけずにちゃんとやりきっている。読んでいて、展開の速さが他の作品にはない魅力としてあります。
たとえるなら、知らないゲームのRTAを見ているような気分です。作中のフラグを踏みながら、レベル上げていくのは、RTA実況特有のこんな方法があったのか!と目から鱗が落ちる感覚に似ています。
さらに、うまくいっている要素を出しながら、主人公の欲求である百合を大事にしたいという目標を、意図せずヒロインとフラグが立ってしまうでままならぬトホホ要素として出してきているのが面白いです。
バトル展開が熱い
敵と戦うバトル描写が熱いです。
なろう作品特有のRTAレベリング要素をしっかりと描写されていることで、バトル描写の作中世界のルールに基づいておこるバトルに読みごたえを感じます。
物語の展開が早く、主人公と敵が矢継ぎ早にいろんなことをしている場面展開はどうなるかがわからず読んでいてハラハラさせられます。
敵役がかなり強者としての描写が丁寧でとても良いです。例えるなら、本来なら10巻以降に出るはずの温めておいた秘蔵の強キャラが雑誌の都合で3巻で出てきて、それがライブ感のある作品ですごい盛り上がっているような作品を読んでいる気分です。
主人公がカッコよく、ヒロインの心理描写が濃い
また、本作は主人公も魅力的に書かれている。主人公は転生した百合ゲーの信者で、作中でも重度の百合信仰を見せます。
1巻では、なにがなんでも強くならなくてはいけないという目標で行動しています。読者はなろうのテンプレだと思い、RTA要素として楽しむ。しかし、1巻の終盤でそれが作中で起きる悲劇を避けるための行動で、主人公本人はその悲劇を避けるために死にたくないと考えているのであって、百合を守るためなら死んでもいいと考えている。
レベリング描写を重ねながら、百合を大事にする主人公の要素が丁寧に描かれており、それがヒロインを守るために戦わなければいけないという状況で、すぐに迷わずに危機につっこむことのできる主人公のカッコよさを引き立てます。しかも、普段はギャグとして扱われる向こう見ずな態度が、シリアスな場面ではカッコいいヒーローな姿になるというのが、二面性があっていいです。
また、作中ではヒロインの心理描写も濃い。主人公がヒロインのために立ち上がり強大な障害に立ち向かう場面で、ヒロインの心理描写が描かれます。そのときに、なぜ彼女はふだんこんな態度をとっているのか。なぜこんなことをしているのか。今何を考え、迷っているのかという情報が矢継ぎ早に開示され、濁流のような心理の流れに圧倒されます。
そのうえで、この娘が助かってほしいという強い想いが湧いてきたところで主人公が逆転の一手を打つという展開に手に汗を握るのです。
とても面白い作品です。オススメですので、ぜひ読んでみてください。