そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『悪役令呪レベル99』1~4巻について

 今回は『悪役令嬢レベル99』1~4巻について紹介します。

 悪役令嬢転生もの。珍しいのは主人公が本来のメインストーリーには絡まないはずの裏ボスであるという点だろう。
 主人公は転生すると、自分が前世にやっていた乙女ゲームの裏ボス、ユミエラ・ドルクネスであることに気づく。
 彼女はゲームの知識を基に幼少期からレベルを上げ続けた。結果として学園でのレベル査定で上限である99を記録する。
 それをきっかけに、乙女ゲームのメインキャラやヒロインたちと対立していく、という流れになっています。

 気持ちがいいくらいの俺Tuee系。
 1巻の前半は異世界転生ものの王道のような展開が続きますが、後半からはとあるキャラとのかかわりにより、悪役令嬢ものらしい恋愛要素も含みます。1巻は1巻でひとつの物語としてきれいにオチがついています。2巻からも、領主としての彼女の能力チートによるトンデモ展開によるコメディがとても面白いです。

 1巻は王道の異世界チートとしての破滅の未来の回避によるカタルシス。主人公を黒髪を理由に差別した者たちへのザマァがなかなか面白い。それでいて、箸休めの短話に思われたストーリーが後々の急展開につながった点も先が読めない物語としてワクワクしました。そして、ラストは主人公の大きな目的を補強していくためのほろ苦い展開も尾を引いてよかったです。

 2巻からは、1巻のストーリーでの枠組みを引き継ぎながらも、物語のにぎやかしとなっていたもう一人の悪役令嬢とユミエラの関係をメインに据えている。そのうえで、ラストでの展開は1巻とは違う展開をもってきていたので意外性を感じました。1巻と比べるとコメディの要素が強くなっていたのも面白かったです。

 3巻では、主人公はもし自分が悪役令嬢であり続けていたらどうなっていたのかを示唆する存在が現れる。この巻では主人公のチートぶりに見合うさらなる強敵が現れており。そこでのバトルシーンはとても手に汗を握る展開であった。

 4巻は主人公のチートがさらに覚醒し、彼女の周辺の人間関係が大きく変わる転機となる。ここで、4巻のラストで様々な思惑や諦観が見え隠れしていて、それぞれのキャラクターの今後が気になっている。

 本作は天然な主人公の1人称でコミカルに描かれている。だからこそ、周囲のキャラクターのシリアスな心情とのズレが面白い。物語が進めば進むほど、周囲もユミエラの思考に引っ張られつつあるところも、心情の変化、あるいは成長を感じられて面白い。登場人物たちがどのように変化していくのかがきになってページをめくっていく。

 ついつい一気読みしてしまう面白い作品だった。