そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』6巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』の6巻です。

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 6【電子限定特典SS付】 (一迅社文庫アイリス)

あらすじ
乙女ゲームのバッドエンドしかない悪役令嬢カタリナに転生した私。魔法学園を無事卒業して破滅を完全回避!――したはずだったのに…。え? ゲームの続編が存在する!? しかも、続編ではパワーアップした出戻り悪役令嬢カタリナに前作よりも悲惨なバッドエンドが待っているの!? 次の舞台は魔法省って、私、魔法省に入ることになったんですけど!? 男女問わず恋愛フラグ立てまくり、悪役令嬢の破滅回避ラブコメディ第6弾登場★ 

小説家になろうのURL
https://ncode.syosetu.com/n5040ce/

webコミカライズ連載、ゼロサムのURL
http://online.ichijinsha.co.jp/zerosum/comic/hametu

目次

破滅フラグの魅力

まずは破滅フラグ全体の魅力について話しましょう。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』はこんな話です。

ある日、主人公のカタリナ・クラエスは頭を打ったひょうしに自身の前世を思い出します。そう、自分は前世ではこことは違う世界にいて。ここは前世で自分がプレーしていた乙女ゲームの世界じゃないかと。しかも、乙女ゲームの世界でカタリナはヒロインをいじめる悪役令嬢として描かれており。ゲームの最後は良くて国外追放、悪くて殺されてしまう破滅フラグしかない悪役令嬢であった。

でさ、この破滅フラグをなんとかしなければ、と奮起して行動するうちに。その行動が思ってもみない方向にって話です。

面白いですよ。悪役令嬢ものの魅力と言ったらさ。なんといっても、本来は不幸に終わるはずの悪役令嬢が、その運命を覆してイケメンとくっつくカタルシスにあるんですけどね。

破滅フラグはそのカタルシスの流れがさ。なんでやねんって、ツッコミたくなるくらいコミカル。

彼女はさ、破滅フラグを回避するために、本来いじめていた義弟のキース・クラエスに優しくしたり。国外追放になったとしても生きていけるようにするために乙女ゲーム内で得意とされていた土魔法の能力を向上させるために、畑を耕すとこからはじめたりさ。
そういったことをしたら、普通だったら、前世の知識でチートを見せつけてさ。この子は天才かってなるんだけどさ。元がそんなに頭が良くなかったらしく。どう考えてもツッコミどころのある方向に努力してさ。
そんなコミカルなカタリナの行動がさ。婚約者のジオルド・スティアート、そのジオルドの弟、アラン・スティアート。さらには、義弟のキース・クラエスの内面で抱えていた悩みを解決することになってさ。カタリナに対して、なんて素敵な人なんだってなるんですよ。
この流れが、カタリナの一人称をやった後で、攻略対象の一人称を見せるって流れにしてさ。落差が笑いにつながる構成になっていてとてもきれいです。
こういう何気ない行動がとんでもない出来事につながるってストーリーラインってさ。古くは、落語の天狗裁き。あれも、夢を見たけど思い出せないってのがさ。どんな夢を見たのっていろんな人に聞かれ。最後には天狗にも聞かれて裁きを受けるっていうさ。どんどんおかしなことに対するインフレが起きる話なんだけどさ。
じつは破滅フラグのモテっぷりもそれと同じようなストーリーラインをたどってる。
義弟をオトし、婚約者をオトした彼女は、さらには他のヒロインのライバル候補も攻略し、最後には本来の乙女ゲーのヒロインであるマリアも攻略するんですよ。

んでさ、このモテっぷりのストーリーラインが2巻まで続くんだけどさ。そこでのラストが、悪役令嬢として破滅する運命を予期して、それを覆そうとしていたカタリナが。じつは大勢の人に好かれていて、破滅フラグをとっくの昔にへし折っていたことに気づくって場面があるんだけどさ。

このへんのストーリーラインの流れは機動戦士ガンダムのラストと同じでしたね。最後の最後で登場人物達の関心が主人公に集まっているのが、主人公にも明確にわかる場面で。主人公自身がそこに居場所があるのを感じて、幸福感に包まれる。

じつは小説家になろうでの連載がここで終わって。そっから先は書籍だけの連載に切り替わるんですけどね。1巻から2巻の流れはきれいだと思いましたよ。

そして、3巻からは2巻から続くカタリナハーレムの拡張の勢いを落として。婚約者のジオルド・スティアートとの関係構築に舵を切ってますね。

一応、彼は1巻から、カタリナの婚約者として側にいたんですけどね。主人公のカタリナにとっては、婚約者の彼は乙女ゲームでは、途中でマリアに惹かれて婚約は解消されるもんだとばかり考えていたもんだから。彼がどんだけアプローチをしても気づかない鈍感ラブコメ状態だったんですよ。

3巻からはさ。そんなジオルドの優しい彼は今日は大胆みたいなシーンが多くてさ。そんでラストで、彼からの好意が明確に伝わるシーン。あそこも、3巻では主人公が危機的な状況に陥った場面でジオルドが気持ちを抑えきれなくなったっていう流れをちゃんと踏んでたんできれいなストーリーラインでしたね。

そもそも3巻の前の、2巻では。WEB版にはなかったんだけど、書籍版限定の書き下ろしで、ジオルドのカタリナに対する独占欲や好意がムンムンの一人称短編。完全なロールキャベツ系男子の独白みたいな短編が3巻への布石としてあったんですよ。

でっ、4巻になると重要になるのがカタリナが得た闇魔法と義弟のキース・クラエスも加わったカタリナをめぐる三角関係。
闇魔法は3巻でも敵キャラが使う魔法としてあったんですけどね。4巻でカタリナはひょんなことから闇魔法による使い魔を得ることになります。
これにより、ラブコメに対してプラスアルファだったファンタジー要素が今回紹介する6巻では大きくなっていく。
でありながら、4巻である危機的な状況を脱したキースはついにカタリナに告白し。ジークはカタリナは渡しませんよと言われる。
これでハーレムシチュに萌えるラブコメから、爽やかにみえてじつは腹黒肉食のジークと、一途でカタリナの側にいる存在だったんだけど踏み込めないヘタレのキースとの三角関係の移行が明確になりましたね。

でっ、5巻は短編集。他のカタリナハーレムメンバーのフラグ補強のための話や名前だけ出ていたモブキャラを主人公にすることで世界観の土台固めをしましたね。

では、さっそく6巻の感想、考察に移っていきましょう。今回は魔法省に就職したカタリナ。使い魔が巨大化。今後の展開はいかに⁉︎の順でいきます。

卒業パーティー

今回は3部構成の話でしたね。序盤で卒業パーティーでのカタリナたちを描き。今後の不安を煽るイベントをやった上で。魔法省への就職。そこでの初仕事で今後の方針を読者に提示しました。順に話していきましょう。

序盤が卒業パーティー。重要なイベントですよ。まず注目すべきが、カタリナに想いを寄せる四人の男性、ジオルド・スティアート、キース・クラエス、ニコル・アスカルトとのダンスシーンと、パーティーでの食事シーンでのアラン・スティアートとの会話。

現在進行中のカタリナハーレムでのそれぞれの恋愛模様の進行状況がわかるようなセリフ運び。でありながら、説明臭さがない。しかも、ヒロインに対するワンデレをちゃんといれてる。

そっから、卒業パーティー後は近くの城でカタリナ、ソフィア、マリア、メアリは女子会を。ジオルド、ニコル、キース、アランは男子会を行う。

女子会でカタリナと女性キャラたちの今後の進路を明確にしながら。男子会のキースの視点を比較対象にすることでギャグシーンとしてズラしています。

カタリナが今夜は最高だ、と言っている一方でキースは今夜は最悪だって言っているのは面白かったですね。

しかも、書籍版の書き下ろし短編では女子会が行われる裏で二人っきりになろうと画策していたロールキャベツ系男子のジオルドの視点による話は面白かったからオススメですよ。

それとさ、女子会の最後でカタリナは寝落ちして夢を見るんだけどさ。その内容が現実世界で親友のあっちゃんがカタリナのいる乙女ゲームをプレイしている。どうやら、カタリナの死後、続編が出ていたらしく、舞台は魔法省。でさ、その魔法省にカタリナが出てくる。

こうしてカタリナは、悪役令嬢としての破滅フラグを予期するんですね。

魔法省に就職したカタリナ

んで、魔法省に就職することになるんですね。
今回は、魔法省の内部と初仕事の2つに分けれますね。

今後、カタリナと関わるであろうキャラの説明をして。初仕事の時は、同僚のデューイ・パーシーとの確執と和解。そして、彼女の闇の使い魔の新たな力がわりと重要でしたね。

今回出てきたデューイ・パーシーの役割は、カタリナの深層心理にある罪悪感の具現化なんですよ。

3巻で、カタリナはジオルドからの好意を自覚したんですけどね。彼女はでも私なんか、と言ってさ。深い仲になるのを避けている。

なぜかと言えば、ジオルドと恋愛関係を結び、結婚するということが、カタリナにとっては幼い頃からの婚約者という立場に転生できたからです。

デューイは努力で魔法省に入ったキャラとして描かれてるからさ。カタリナが恵まれた立場にいることをさ。指摘したわけなんだよ。

今まで、その辺について話せるキャラがいなかったからさ。わりと重要だよ。

序盤で、同じような立場で、最終的にカタリナにデレた後輩のジンジャーとの絡みを卒業パーティーで書いたからさ。

たぶん、こんなこと言ってても、ジンジャーみたくデレるんだと思うからさ。そこまでヘイトも集まんないしさ。

今後の展開はいかに⁉︎

それと、今後の展開で気になるのが、ソフィアから渡されたロマンス小説に挟まったメモの存在ですね。
カタリナに対する不穏な未来が記された乙女ゲームの設定がそこには書かれていました。

これ、しかもカタリナの世界の言葉でなく日本語で書かれていたことにより。カタリナ以外の転生者が。しかもカタリナに対するメッセージとして残したであろうと推測できる。

ただのゲーム設定のメモならカタリナ視点でなく本来の主人公であるマリアを中心としたメモになるはずですからね。

ソフィアが書いた可能性は高いですけど。それ以外の可能性として怪しいのが卒業パーティーでカタリナが出くわした謎の女性ですよね。

そもそも、メモが挟まっていたロマンス小説を借りたのが卒業パーティー後の女子会。そこで彼女たちは会話に盛り上がりながら最後はうつらうつらと寝落ちした。つまり、女子会の最後の記憶が残っていない。

これさ、たぶん2巻でやってた闇魔法(?)によって眠らされたってのをさ。謎の女性によってやられてさ。寝てる間にその人が本に挟んだんでしょ。

もちろん、俺の推測だし。例のごとく当たっても当たらなくても楽しみなんですけどね。

では、また続刊を読んだら追って報告します。