そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『佐々木とピーちゃん』3巻について

 今回は『佐々木とピーちゃん』の3巻について話す。
 いよいよ3巻を迎えた本作はこういった話だ。
 アラフォーの主人公、佐々木はペットショップで出会ったピーちゃんという文鳥に一目惚れして購入を決意する。
 しかし、そのピーちゃんは異世界から転生した星の賢者、ピエトロであった。
 ピーちゃんに異世界での魔法を師事されながら、佐々木は異世界と現実世界で貿易をはじめる。

 ひょんなことから、現実世界と異世界を行き来する手段を手に入れた主人公が、それぞれの世界の品を売ることで成功していく。異世界貿易ものです。
 異世界転生ものの派系として、王道のジャンルとして存在している。
 このシリーズの面白いところは、これがただの貿易もので終わらないことだ。異世界で商人として名をあげる佐々木は、現実世界で異能バトルに巻き込まれます。
 その際に、人助けのために魔法を使っているところを見られた佐々木は、同じ異能力者の持ち主として勘違いされ、異能を調査、管理する組織の一員として働くことに。

 さらには、異能者と敵対する魔法少女、現実世界の裏で行われている天使と悪魔によるデスゲームにも佐々木とピーちゃんは関わっていくことになる。。

 こういった複数の設定を絡めた長編の場合、ひとつひとつの話を章ごとや巻数ごとに分けて、長くても1巻から3巻程度で区切りをつけるものだ。これにより、世界観どうしがケンカしないようにする。しかし、本作ではこうした複雑な世界観ごとにヒロインと目標と謎を設けながら、それぞれが独立して動く物語になっている。しかも、それがわかりづらくないとっつきやすいライトノベルになっている。
 主人公はそれぞれの世界観の立ち位置としては、外的な要因に巻き込まれる受動的な一般人でありながらも、一つの目的においては能動的な英雄となる。
 その目的は、ピーちゃんとの安定した生活だ。主人公は事件に巻き込まれながらも、それらの関わるはずのない独立した世界観どうしの仲介者として、それぞれの世界観の衝突を演じ、危機を乗り越える。乗り越えた勇者はなにかしらの《洞窟のなかの宝箱》を手に入れるのだ。だからこそ、読者はこの作品を読んでいて混乱しないし、カオスを加速させていく展開から、佐々木とピーちゃんはこれをどうやって乗り越えるだろうとワクワクして読み進めていく。

 3巻では、佐々木に対して愛欲の滲んだまなざしを向けていた「お隣さん」がようやく佐々木と面と向かって関わるようになっていく。
 そこには天使と悪魔によるデスゲームという大きな舞台の招待状を添えたうえで。 
 さらには、異能力者組織のトップであり、佐々木の上司でもある阿久津との水面下の対立と利害による和解。異世界で領主となった佐々木とピーちゃんの領地経営もひとつの独立した物語のサブストーリしても大きな物語のうちの一つとしても、面白くてワクワクとする。

 さらには、また新たな敵も登場。現実世界での平穏を壊しかねない大きなトラブル。それに引き寄せられる形で今まで登場したヒロインが全員集合。
 火花バチバチの修羅場に今から続刊が楽しみでならない。