そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『転生令嬢カテナは異世界で憧れの刀匠を目指します』について

 今回紹介する作品は『転生令嬢カテナは異世界で憧れの刀匠を目指します』です。

転生令嬢カテナは異世界で憧れの刀匠を目指します! ~私の日本刀、女神に祝福されて大変なことになってませんか!?~ (オーバーラップノベルス)

もくじ

どんな作品か

 主人公のカテナは、前世では刀に憧れる女子高生だった。彼女は刀鍛冶の工房に見学に行く予定だった。しかし、その直前で事故で死んでしまう。〇〇家の令嬢のカテナはそのことを思い出す。前世では果たすことのできなかった刀を自分で作るという夢を叶えることを目指します。苦手な魔法を研鑽し、父の抱えている工房で鍛冶を学んだカテナはついに刀を作り出す。
 すると目の前に女神の〇〇が現れる。彼女はカテナの刀を神器として認定し、カテナに神子の称号を与える。
 この神子というのがこの世界では重要な役割らしく、平穏に趣味を極めたいカテナの位にそぐわない流れになる。
 しかし、平穏を望むカテナは日本刀をつくり続けるためにさまざまな努力をする。

どこが面白いか

 異世界転生ものとしてしっかりと良くできている。タイトル通り、生産チートでもあるし、技術チートでもあるし、魔法や剣技のチートもある。かといって、なんでもありというわけではない。カテナは1巻を通していろんなことができるようになるんですけども、それらはすべて平穏に刀づくりをしていたいにつながるんです。例えば、カテナは刀をつくりたいのだけれども、この世界の技術では刀作りを再現することが難しい。だからこそ、5属性の魔法を十全に使えるようにして魔法で刀を作り上げた。刀をつくったはいいけども、その刀は神器として女神に認められてしまった。しかし、カテナの住む国では刀は初めて見る武器で体験が主流だった。これにより、王子とも対立することになる。そのため、彼女は刀の有用性を示さなければいけなくなった。また、神子は魔物たちに狙われる存在であった。そのため、彼女は刀を使いこなすために剣技を学ぶ必要があった。「戦わなければ生き残れない」という言葉がありませけども、この作品は「戦うだけでは生き残れない」んです。
 そのうえで、さまざまな課題を乗り越え成長していくカテナを見ていくと、これから彼女は何をしていくのだろうとワクワクする。
 主人公の幼少期の成長物語として面白く、これからはじまる1巻として期待感を煽る理想的な1巻です。

キャラクターの魅力

1巻は主人公がチートを得て成長する物語だ。だからこそ、主人公のカテナは応援したくなる魅力的な人物だ。彼女は刀作りのために魔法を学ぶが、魔法を遠くに飛ばすことができないという壁にぶち当たっている。しかし、刀作りという目標のために5属性の魔法のコントロールを上げ、複数の魔法を組み合わせる、付与させることで戦闘面でも刀作りにも活かしている。
 刀を作るという目的が最初から最後まで一貫してブレない。しかし、それはひとりよがりではなく、目標を達成するために生じる課題を真正面に超えることにより、彼女の夢がしだいに周囲を巻き込んでいくという流れにカタルシスを感じる。
 また、カテナの周囲のキャラも魅力的だ。彼女の幼少期では、彼女の一人称が中心のため、周囲のキャラは異世界チートテンプレのための画一的なキャラクターに見える。しかし、彼女がひたむきに努力し、成長していくに従って、周囲のキャラも彼女の夢を支えたり、対立、あるいは相対する存在としてのキャラクター性を確立していく。

続きが気になる

 しっかりと応援したくなるキャラクターをつくり、爽快感のあるちチート性を持たせている。そして、そのチートは1巻ぶんしっかりと修行、あるいは試行錯誤の描写を割いて描かれたもののため、嫌味な感じのない彼女の魅力となっている。終盤にシリーズ全体を通した敵も明らかになっている。まさに理想的なスタートを切っている。ゆえにこれから本シリーズの世界観がどのように広がっていくかが楽しみです。
 2巻も引き続き買って読む予定です。

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