そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか』の3巻

さて、今回紹介する作品はこちら、『お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか』の3巻です。この作品は今巻でめでたく完結となり、3巻は最終巻となります。


お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか3 (ファンタジア文庫)
著者:はむばね
レーベル:ファンタジア文庫
ISBN-10: 4040728998
ISBN-13: 978-4040728995
発売日: 2018/8/18
出版社: KADOKAWA / 富士見書房

あらすじ
夏休みを利用して旅行に行くことになった僕ら。旅行の間に真琴さんのお助けキャラとして、彼女の恋の手助けしなくちゃいけないんだけど……庄川さんと好乃さんが、僕とやたら二人きりになろうとするのは何故だろう?

シリーズ全体の魅力

 この作品は勘違い錯綜系ラブコメに当たる作品です。ライトノベルだと葵せきなの『ゲーマーズ』。お笑い芸人で例えるとアンジャッシュのコントを長編のストーリー仕立てにしたものです。

 主人公の平地護常は、ひょんなことから町を守る魔光少女の正体が庄川真帆であることを知ってしまう。彼女が魔光少女であると周囲からバレるとあるペナリティが課されてしまう。それを知った彼は彼女の正体を知ったことを彼女自身にも告げずに彼女のお助けキャラになることを決意するも普段の彼女はいつどのタイミングで正体がバレてもおかしくないくらいのうっかり屋さんであった。

 そんな彼女をいつでもお助けできるように、平地は彼女のお友達になろうとし、彼女に「(お友達として)付き合ってください!」と言ったところ、真帆も思わず「(恋人として付き合うことを)はい」と言ってしまう。こうして友達として一緒にいるつもりの平地護常と恋人として一緒にいるつもりの庄川真帆の勘違いラブコメが始まる。

 さらに、勘違いは二人の周囲にいる里崎翔子と空橋悠一にも飛び火してしまい。集団を巻き込む勘違いはどう収束するのかというのがこの物語の魅力です。

 この勘違いが3巻でようやく収束するんですね。キャラクターそれぞれの心理的問題と勘違いをどう解決させるのかと気になりましたが、予想以上のきれいな締めに読んでて驚きましたよ。読んでいる途中、主人公のキャラクター性や登場人物たちのコミカルな心理戦には笑いました。

 では、順に書いていきます。今回は庄川真琴と空橋悠一の恋の行方と、平地護常と庄川真帆の勘違いの行く末について話していきます。

庄川真琴と空橋悠一の恋の行方

 3巻を読んでいて安心したのは空橋悠一の出番がちゃんとあったことですね。僕は空橋好きなんですよ。主人公と真帆の恋を応援していて、かつ街田好乃を含めた三人の恋愛関係に対してかなり勘違いを重ねていたキャラとして一番一人称の心理描写が読んでいて好きなキャラでした。
 そんな彼にはある過去があって、それを理由に主人公を応援していたことは1巻で知っていたので。彼のそんな過去の一端やそれによる心理的問題の解消みたいなのは1巻の時点でわりとシリーズに期待していた要素でした。そんななか、2巻だと影が薄くなっていたので、このまま勘違いがインフレする中で存在感が薄れていくのではと危惧していたんです。
 しかし、2巻での新キャラ、庄川真帆の妹である庄川真琴ちゃんによって、3巻では彼がクローズアップされていましたので、それはうれしかったですね。
 空橋に好意を抱いていた真琴ちゃんは、主人公が街田好乃と庄川真帆との三角関係によるラブコメを重ねている裏で、空橋の抱えている深い部分を知ってしまうイベントを重ねてですね。ラストの二人の関係性を決定づけるイベントまで、静かにしかしゆっくりと着実に物語での恋愛関係の盛り上がりを積み重ねていたところがよかったです。
 群像劇っていろんな話が同時進行で動くわけでさ。ラブコメだといろんなキャラの心情があるわけだから。それを文字媒体でやろうとするとややこしくなりそうなもんなんだけどさ。このシリーズだと、それぞれの抱えている勘違いと問題がわかりやすく書かれているから、読者も追いやすいんですよね。
 本当はもし続刊があったとしたら、彼がうちに抱えている心理的問題が解消されるであろうでなく、解消された場面が見れたであろうと思うので、しいて挙げるならそれが残念でした。

平地護常と庄川真帆の勘違いの行く末

 もちろん、この作品の本筋である二人の恋の行方も当然目が離せない。今回は魔光少女のドキドキを察知して現れる怪人をおびき寄せるという名目で主人公とイチャつこうとする街田好乃とそれに嫉妬する庄川真帆のラブコメもかなり読みごたえがありました。
 街田の視点で見れば、彼女は魔光少女としての使命にかこつけて主人公に近づこうとする自分に対する葛藤があるんですが、その辺は自分でなくみんなを優先しようとしていた初登場時の彼女と見比べれば心理的な成長であると見れる。だからこそ、彼女の失恋も彼女自身の精神的問題が解決されたことを考えればそこまで後味が悪くない。
 真帆と誤解がなく、改めて自分の好意を自覚したうえで付き合うことになった平地を読んだとき、よかったと安心しました。
 2巻のラストで衝撃的な終わりで絞められたので、3巻ではどうなるかと思いましたが、きれいに終わりを迎えた作品が読めてとても満足です。

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