そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

小説版 星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻

 さて、今回紹介する作品はこちら、小説版 星のカービィ大迷宮のトモダチを救え! の巻です。


星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻 (角川つばさ文庫)
著者:高瀬美恵
イラストレーター:苅野タウ
レーベル:角川つばさ文庫
発売日: 2018/2/5
出版社: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ASIN: B07918YG5P

あらすじ
カービィと前に戦ったこともあるマホロアが、突然「トモダチを助けてヨ!」とやってきた。最初は怪しんだものの、トモダチのピンチと聞いて無視できないカービィは、デデデ、メタナイトたちとともに、鏡の大迷宮に行くことに。大迷宮は、不思議な鏡でいくつもの世界につながっていて、冒険も大苦戦!でも、つながっていた世界では、思わぬ出会いが待っていて!?マホロアのトモダチって、いったいだれなの!?小学中級から。

 今日も引き続き小説版カービィの感想です。1~3巻までが、カービィ、デデデ大王、ワドルディのキャラ紹介の巻、4巻がメタナイト中心の巻であり、初のシリアス展開でした。そして、5巻からはプププランド全体を巻き込んだ大レースを描くことで、今後の変化を予期させるための巻でした。今回は6巻です。この巻から、ゲームの要素が入り、キザリオと同じくプププランドの外からやってきたマホロアに導かれることでカービィたちは鏡の中の大迷宮を旅することになります。今回はゲーム要素が盛りだくさん、マホロアの順で話します。

ゲーム要素が盛りだくさん

6巻は今まで以上にゲームでの要素が多めの作品です。星のカービィ Wii初出のマオロア、星のカービィ 鏡の大迷宮 [WiiUで遊べるゲームボーイアドバンスソフト][オンラインコード]のディメンションミラー、タッチ! カービィ スーパーレインボー - Wii Uのエリーヌとクレイシア、さらには星のカービィ トリプルデラックス - 3DSのタランザ。今までの星のカービィのゲームキャラが多数登場しています。
 7巻から3DSのロボボプラネットのストーリーのノベライズとなり、ゲームの世界観とリンクした話づくりに変わっていきます。そこへのつなぎとして今巻は、複数のゲームのキャラを鏡の世界を使ってひとつなぎにしています。
 さらに、今回は星野カービィシリーズで人気の悪役、マホロアを主役にすることでこのシリーズ全体のテーマをはっきりさせていこうとしている。

不思議の国のアリスとオズの魔法使い

 今巻は、いわば不思議の国のアリスやオズの魔王使いのようなロードムービーの類です。
 マホロアの導きによって、カービィたちはプププランドとは違う鏡の中の世界へと旅立ちます。
 旅の導き手となったマホロアはカービィシリーズでは有名な嘘つきキャラ。カービィたちはマホロアを信じていいのか、とそれぞれ悩みながらも、マホロアの友達を助けたいという言葉を信じて鏡の中の世界へ向かう。
 これにより、カービィがこの旅の主人公に思われるが、途中でじつはマホロアが物語の主人公となっている。
 主人公が満たす条件としてよく上げられる有名なものに、AとBの二つの目的、あるいは空間の間を行き来して葛藤する、というのがあります。
 物語の導入だけ見れば、マホロアによって多少の葛藤があったカービィたちがその条件を果たしているように見えます。
 しかし、実際鏡の世界に行くと、カービィたちには変化がない。マホロアがカービィたちを動揺させようと、彼らの心に問いかけるも、彼らの軸がぶれたりすることがあまりないんですよ。
 むしろ逆に、マホロアが彼らから問いを返された際、いつものような嘘を返せずに話をすり替えることで逃げることしかないほど、動揺しているように描かれています。
 その問いかけが、キミの本心はどこにある、キミの目的はなんなのか。

欲望と行動の不一致

 今回、いろいろな要素のつまったカオスな内容に見せかけて、じつは本当のことを語ろうとしないマホロアの精神世界をマホロアがカービィたちと一緒に冒険するはなし。
 不思議の国のアリスとオズの魔法使いのいいとこどりみたいなところあるんですよ。
 だいたいこういうロードムービーものでよくあるのがさ。
 一人の主人公がある目的を果たすために旅に出る。すると、当初望んでいたものとは違うものが目的地にある。
 なんやかんやあった末に、主人公は自分の本当の望みを知り、それを果たせるものを手に入れる。
 猿の手とかもそうだけど、自分の願いを叶えてくれる万能具が出る場合、だいたい自分の本当の願いはなんなのかが主題になりやすいんですよ。
 その問いかけがされていたのがマホロアです。
 6巻での鏡の世界での旅は一見、いろんなキャラがごちゃ混ぜのカオスな空間のようにみせて、じつはマホロアの精神世界を旅して、彼自身の姿に彼が向き合う話です。
 たとえば、マホロアを倒す要となったミニマムのコピー能力を持ったミニー。
 ミニーは小さな姿には見合わない気の強さを持っている。これがマホロアの心のありようを現している。
 マホロアは自分自身の弱さというのを自覚しながらも、それを表に出すことができない。
 だからこそ、虚言で自分を守ろうとしている。
 彼はディメンションミラーにむかって、「ボクのノゾミをかなえておくれヨォ……ボクは、ダレにも負けたくないンダ。ボクを、モットモット、強くしておくれェ!」と願うことで、自分がそのまま巨大になった姿でカービィたちを襲います。6巻の狙いがゲームキャラの大集合だったら、ゲーム版でのラスボスの姿になるはずなんですよ。さらに、強くなりたいでなく、だれにも負けたくないが先に出てくるのも重要だ。誰にも負けたくない、は願いでなく恐れです。彼は誰かに本来の自分を見せたいと思うと同時に、弱みを見せたくないと思っている。この二つの間で挟まれて苦しむから、その本当の願いをかなえる形で巨大なマホロアが生まれている。
 今回の彼の存在は7巻のロボボプラネットの敵キャラや8巻のメタナイトの抱えた悩みに通ずるものをもっています。
 そのへんは7巻と8巻で話しましょう。

 では、次巻も追って報告いたします。

星のカービィ大盗賊ドロッチェ団あらわる! の巻 (角川つばさ文庫)

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  • 作者: 高瀬美恵,苅野タウ,ぽと
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/08/08
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星のカービィ メタナイトと銀河最強の戦士 (角川つばさ文庫)

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星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻 (角川つばさ文庫)

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  • 作者: 高瀬美恵,苅野タウ,ぽと
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星のカービィ プププランドで大レース!の巻 (角川つばさ文庫)

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  • 作者: 高瀬美恵,苅野タウ,ぽと
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星のカービィ  あぶないグルメ屋敷! ?の巻 (角川つばさ文庫)

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星のカービィくらやみ森で大さわぎ! の巻 (角川つばさ文庫)

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  • 作者: 高瀬美恵,苅野タウ,ぽと
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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星のカービィメ タナイトとあやつり姫 (角川つばさ文庫)

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