そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った』です。

キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った (ファミ通文庫)
著者: 比嘉智康
レーベル:ファミ通文庫
発売日: 2017/8/30
出版社: KADOKAWA / エンターブレイン
ASIN: B0753WTNSZ

>
あらすじ
「また多重人格ごっこして、くれないかな?」高校で再会を果たした一色華の実は、囚慈(僕)、θ郎、キイロの三人がかりで生きているチーム市川櫻介にそう告げた。そして、華の実は昔考えたみんなの夢を叶えていきたいと言う。僕達以外の誰かに、囚慈として扱われる不思議な感覚の中で、僕は自然と華の実を好きになっていった。でも、知らなかったんだ。君がどんな思いで、その提案をしていたかなんて…。不器用な二人の、純度100%の恋愛ストーリー。

面白いですよ。多重人格の主人公による独特の一人称。ヒロインの隠していた秘密。そういう作品ではないにせよ、読み終えた時にしまったそっちだったかと思わず騙されていた自分に気づきました。小学生と高校生の書き分けと伏線の張り方も上手かったですね。

では今回は、どんな話か、独特の一人称、ラストのネタバレしないような感想の順に話していきます。

どんな話か

この話は四重人格の一色華と三重人格の市川櫻介による恋愛小説です。
多重人格者×多重人格者による恋愛ってところが珍しいですね。

話の構成としては、三重人格の市川くんが小学生の頃に同じ多重人格の一色華ちゃんに会いましたよって話と、中学生の話、んで、高校生になったらその一色華と再会して幼い頃にやった多重人格ごっこをやったら衝撃の事実がって話です。

この話は二人の恋愛ものでもあるんですけどね。主人公の市川くんの思春期から大人になるまでの話だと思います。

ネタバレになるんで言わないんですけどね。思春期の子供が成長する直前にある種の事件に遭遇して成長するって流れがよくあってさ。この作品もそのストーリーラインを踏んでいるなと感じました。

独特の一人称が上手い

それと多重人格の市川くんの一人称も面白いですね。この作品は幼稚園から高校までの市川くんの人生が書かれてるんですけどね。
読んでて思うんですよ。お前、変わんねーなって。
同窓会で一人はいるタイプですよね。幼い頃にバカやってたけど。今もあんま変わってないねってタイプ。
あまりの変わらなさに読んでて嬉しくなりましたよ。その変わらなさが、他の人にとって救いになるんだって感覚がさ。読んでてわかるからさ。後々のヒロインのセリフにも共感できるんですよ。

ラストについて

ラストの展開には驚きました。
不覚にも涙腺にきましたね。
僕、恋愛もので感動します系を読むときは、タイトルや表紙、あらすじでさ。たぶんこんな話になるんだろうなって予測して読むんですよ。
そしたらさ、その予想が外れてさ。ヒロインが気持ちを隠していた場面をさ。秘密が露見された時に思い出してしまう。ここで泣けちゃうんですよね。
彼女はこういう気持ちだったかもしれないっていうのがさ。後から溢れてくるとさ。不安定になっちゃうものでさ。そこからの救済みたいなのがあるとさ。涙腺に来るんですよね。

それでは、オススメの作品なので是非読んでみてください。