さて、今回紹介する作品は、『この勇者、俺TUEEEくせに慎重すぎる』です。
あらすじ
超ハードモードな世界の救済を担当することになった駄女神リスタ。チート級ステータスを持つ勇者・聖哉の召喚に成功したが、彼はありえないほど慎重で…?「鎧を三つ貰おう。着る用。スペア。そしてスペアが無くなった時のスペアだ」異常なストック確保だけに留まらず、レベルMAXになるまで自主トレし、スライム相手に全力で挑むほど用心深かった!そんな勇者と彼に振り回されまくる女神の冒険譚、開幕!
文字通り、スペックが異様に高い俺TUEEEな勇者が、ありえないほどの慎重さで異世界を救う話です。
『この勇者、俺TUEEEくせに慎重すぎる』で 注目すべき点は二つあります。一つは、女神の一人称によるおれTUEEEもので、二つめは作者が凄惨なグロ描写に重きを置いている点です。
女神の一人称による俺TUEEEもの
この作品、最後まで女神の一人称で話が進むんですよ。他ではあまりみないですよね。
女神のリスタは神でありながらもイケメンの主人公にこころを動かされたり。主人公にいいように使われてしまう。神であるのに人間味のあるいわゆる駄女神の属性を持つキャラクターです。主人公にふりまわされるこの子は読んでてかわいいです。
リスタは、今まで異世界転生した勇者をサポートすることで、何度も世界を救った立場であるため、ふつうはそんなことしないだろっと主人公にツッコむことができる。つまり、異世界転生ものを読み慣れている僕らが乗れるキャラなんですね。
であると同時に、駄女神属性をもつ彼女は。異世界転生もうええねん!って考える俺らが見下せるキャラでもあるんです。異世界転生もうええねんの話は下の記事でしています。
kamizimaryu1026.hatenablog.com
異世界転生ものに食傷気味な僕らは、勇者だったらこうあるべきと考える女神のリスタに対して、こう思うんですね。いやいや、そんな上手くいかないって。俺が魔王だったら、スライム狩ってレベルあげるとこなんて待たねぇし。俺TUEEEとかないからと。異世界舐めんじゃねぇよと。
異世界転生慣れしている駄女神と異世界舐めんじゃねぇよと入念に準備する勇者。二人のうちのどっちかに感情移入できるようにしているんですね。
作者の凄惨なグロ描写
この作品でもう一つ目立つのがかなり踏みこんだグロ描写。描写というよりも、発想っと言った方が正しいですね。拷問のため生爪を剥がしたり、逆花火だったり。わりかし人が大量に死んだり、助けられるギリギリまで痛い目みてたりするんですよね。
もともと、難易度S級の異世界を救わなきゃいけないどうしようってはなしだから、そのための絶望感を煽る演出なんだろうけどさ。このへん、ちょっとモヤっとしました。
ただ、これをやりたいからこそ、慎重に行動する勇者というキャラクターが必要になってくるんだろうなとも考えられますよね。俺TUEEEで先を予測して動く勇者がいるからこそ、敵の残忍さをどんどんインフレさせることができる。ネット小説のセオリーである読者にストレスをかけないってとこと残忍な描写、絶望的状況のバランスってのをうまくギャグや主人公の俺TUEEEで釣り合いをとって描いています。
竜宮院聖哉(りゅうぐういん せいや)は何者か
読んでいて気になるのが、召喚された勇者、竜宮院聖哉が何者かっですね。読んでいると、どうやらリスタの先輩であり、ベテラン女神のアリアドアは彼のことを知っているらしい。
彼女は意味深なこと言ってるんですよね。
(引用)
「アリア。いつも本当にありがとう」
「いいのよ。このくらい。私が出来ることは何でもしてあげたいの。それが私のせめてもの……」
「……アリア?」
真剣な表情で何事かを言いかけていたアリアは、そこで口をつぐんだ。
「いいえ。何でもないわ」
そしてアリアはいつものように優しく微笑んだ。
私のせめてものって言いかけて、続く言葉といえばもちろん罪滅ぼしでしょう。作中でアリアドアは300の世界を救ったけど、一つだけ救えなかった世界があると言っている。このへんから察しがつくように。たぶんその救えなかった世界で召喚された勇者が竜宮院聖哉で、その経験から慎重すぎる異世界俺TUEEEをやっていると考えられますよね。
この過去話がいつ明らかになるのか。これから楽しみです。