そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

ジャパリパークはユートピアか? けものフレンズについて

朝、ふとスマホを見る。

すると、みなが口々に言うのであった。

「すごーい」「たのしー」

みながみな、同じような言葉を使い出す。何事かと思うと。彼らはこちらを向いて、こういうのであった。

 

 

www.nicovideo.jp

 

「そっか、キミはまだけものフレンズをみていないフレンズなんだね」

 ちょっとしたホラーですよ。だがこれは現実にあることである。

さて、僕もついこの前にけものフレンズをみましたよ。

すごいアニメですよね。ある人はこれは重厚なSFだと語り、ある人はたのしー!とすごーい!しか言えなくなる。

 ぶっちゃけ、僕もこれを見てから数日間はけものフレンズのことしか考えられなくなってですね。ブログがかけるような状態じゃなかったですよ。今回はみんなのすごーい、たのしーなところを共有した上で、俺なりにこの世界のこういうとこがうらやましいよなって話をします。

 

けものフレンズってなに?

とつじょあらわれたサンドスターによって、動物たちは次々とフレンズという人間の女の子に姿を変え、大昔に人間が作っていた複合施設ジャパリパークでにぎやかに暮らしていた。そのジャパリパークのサバンナ地方でかりごっこを楽しむサーバルちゃんはある日、一人の少年と出会う。彼は記憶を失っていた。そのため、サーバルちゃんは彼をかばんちゃんと名づけ、彼が何のフレンズかを調べるために図書館にむかって旅立つのであった。

 

基本、自分が誰かわからない。たぶん人間であるであろうかばんちゃんが自分が何者なのかを知るためにジャパリパークにある図書館を目指すって話です。でっ、その途中でたくさんのフレンズに出会うっと。

 

この作品の魅力は1話見ただけじゃわからない。というか、あまりにも作風が挑戦的過ぎて、楽しみ方がさいしょはわからないんですよ。でも、なぜか最後まで見れちゃって、2話目だと作品内の不穏さに興味が引かれ、3話目でキャラの可愛さにやられ、4話目で作品を楽しむための頭のピントが合うんだけどさ。合わせすぎると、頭がおかしくなるんですよ。

 

表向きの作風がNHKの教育番組。最初は女の子にケモノの耳が乗っかってるだけに見えるんですけどね。人間と比べると、サーバルちゃんは走ったら息が整うまで時間がかかるとか。アルパカちゃんは不機嫌になるとツバを吐くとか。ちゃんと動物の細かいしぐさを擬人化に反映させてるんですね。

 

なさけないはなしだけどさ。俺、人間が動物に比べると持久力があって、長い距離を走れるってはじめて知ったよ。しかも、そういうのわざわざ説明しないんですよね。

 

で、教育テレビ風でありながらも世界観はかなりブラック。ジャパリパークってのがいったいどういうとこだったのかって説明はいまんとこないんだけどさ。みててわかるのが、むかしに人類が作ったであろう施設で。今はもうかばんちゃん以外の人類がジャパリパークにいなさそう。で、セルリアンという生命体がいて、フレンズを食うらしい。寂れた施設に女の子がキャッキャッと楽しそうにしてるとこ見ると、ちょっと悲しくなりますね。

 

そして、サーバルちゃんが可愛い。好奇心が旺盛で、どんなことにも前向きに取り組む。人の欠点には「キミは○○が苦手なフレンズだね」といって、その人、動物それぞれの長所に目を向け素直に「すごーい」と褒める。

 

今、TLでさ僕の知り合いもみんなけものフレンズに感化されているんだけどさ。そういうとこなんだよな。

 

僕らはさ、生まれてすぐ幼稚園に入って、小学校に入学してさ。そこでやることといったらさ。勉強がどれだけできるか。スポーツがどれだけできるか、容姿は整ってるかのこの三つだけを比べられて。それでクラスの立ち位置が決まって。それが人生のすべてだと悟った気でいたまま。大学に来て、社会に出てしまう。

 

これが学生時代ののろいってヤツでさ。これのせいでダメになっちゃうマジメな子ってのがさ。僕らの中にいると思うんだよね。

 

そんな呪いをかけられた僕らの心の傷にけものフレンズは染みこむんだよな。かばんちゃんはさ、記憶喪失だからさ、自分は人間じゃなく、なにかしらの動物のフレンズだとおもってるからさ。崖も上れないし、空も飛べない自分はダメな動物なんだっておもっちゃうんだよ。見てる俺らはそんなことないって言いたいんだけどさ。動物が擬人化している世界ではさ言葉を使えることも二足歩行できることもたいした意味がないからさ、たしかに特技がないように見えちゃうんだよ。でも、そんな彼にさ。キミは長い距離を歩いてもすぐ息が整うんだね。スゴーイ! ってさ。俺らが普段気にしないような人類の長所にすぐ気づいちゃうんだよね。でさ、いろんなフレンズが出るんだけどさ。2話や5話ではさ。かばんちゃんの考えをもとにみんながそれぞれの長所を生かしてさ橋を作ったり、家を作ったりするんだよね。それがほんとにほっこりするんだよね。

 

そんな中で俺が見ててスゴイなぁっておもうのがさ。ジャパリパーク全体にあるお互いを助け合う社会があるとこなんだよな。

 

2話でさ。ジャガーが出てくるんだけどさ。そいつなにしてるかってぇとさ。川の中でさいかだみたいなのを引っ張っててさ。なにしているかというとさ。橋がなくなって困っているみんなのためにさ、川をわたれないフレンズを運んであげてんだよね。4話見た限りではさ。フレンズには貨幣の概念がないんだよね。3話でも、カフェをやっているアルパカでるけどさ。ここに休憩所があったらいいかもなっていう優しい気持ちがあってさ。どうやらジャパリパーク内の福祉ってのがフレンズたちの趣味の延長線上、善意みたいのでできているってとこがいいよね。

 

でっ、これがさ。そういうキャラだから作風だからだけじゃなくてさ。そういう子たちが出てくるための社会の仕組みがあるからだとおもうんだよ。

 

たとえばさ、ジャパリマンってのがあるんだけどさ。フレンズたちはその饅頭を食料源にしているからさ。肉食と草食との捕食関係がないんだよ。んでさ、みんなが当たり前にそれを食べているということはさ。どうやら、ジャパリパーク内ではだれもが一定量のジャパリマンが手に入れられるらしい。

 

これさ、ベーシックインカムになってんじゃないかな。

 

 ベーシックインカムってのさ。ホリエモンさんや岡田斗司夫さんなどの文化人の方が提唱している社会保障の考え方なんだけどさ。保険や学校などのあらゆる社会保障をいったんゼロにする代わりに、一人ひとりが生きるための最低限度の金額を払うって考えたらしいんだよ。

 

 サーバルちゃんのさ。苦手なとこよりも得意なとこを見つけようって姿勢とかさ。アルパカちゃんやジャガーちゃんのみんなが喜ぶことをしたいって考えはさ。生きるための食がさ。ある程度全体にいきわたっていて余裕がある状態だからこそできているじゃないかとおもうんだよ。

 

3話でさ。アルパカちゃんは図書館で紅茶の入れ方を勉強したって言ってんだけどさ。これってさ、いわゆるネットがあればなんでも勉強できるって状態なんだとおもうんだよ。もちろん、偽の情報が多くて、今は難しいんだけどさ。グーグルとかがさ。人工知能のディープラーニングってのを発達させて、目的の情報にたどり着くための整合性、あるいは正答率? ってのを挙げようとしてるしさ。いつか頭がいい人はネットだけで勉強できるってのはありえない話じゃない。

 

安定した食料があって、誰もが学べる機会と権利がある。この状態で作られている相互の助け合いの社会。これいわゆる評価経済社会なんですよね。

 

評価経済社会ってのは、貨幣よりも周囲の評価が生きるうえで必要になるから。その評価を中心に形成されるであろう新しい社会のことで、ガイナックスの元社長さんの岡田斗司夫さんがそのことで本を出しています。

 

彼女たちのやさしさの根幹ってのがさ。動物だからってのもあるだろうけどさ。無駄なものがなくなった中で、人類の残したデータベースと大量に手に入る食料ってのも起因しているとおもうんだよな。

 

 

異世界居酒屋「のぶ」について

 

さて、第15回目ネット小説レビュー。今回紹介する作品はこちら、異世界居酒屋「のぶ」。

 

あらすじ

古都アイテーリアの裏路地に、一風変わった店があるという。
若い衛兵ハンスは同僚のニコラウスに連れられてその店──居酒屋「のぶ」を訪れる。
木の引き戸を開けた先にいるのはノブ・タイショーと呼ばれる主人と、給仕のシノブという女性。
こぢんまりとした店内は、不思議な異国の情緒を漂わせており、見たことも聞いたこともない料理を出してくる。
そして、キンキンに冷えたエール──「トリアエズナマ」がとんでもなくうまい!
噂は広が り、次々に客が訪れるようになるが、中には込み入った事情を持つ者もいて……。
これは、異世界に繋がった居酒屋「のぶ」で巻き起こる、小さな物語。

 

最近、異世界プラスグルメって作品は結構あるんですけど。まずはここからはじまった。だからこそ、他を紹介する前にこれを紹介すべきですよね。

 

二人の衛兵が最近流行ってる店があるらしいって言って、居酒屋のぶを訪れるとこからはじまるんですけど。この時点ですごいんですよね。異世界転生、あるいは転移って、転移した側の視点で物語を始める場合が多いんですけど。この作品は、異世界の人の視点で現実の世界に料理を語ってる。しかもその語り口もうまいんですよ。

 

 たとえばこれ。

 

(引用「牛すじ煮込み」)

 「煮込んでいるのは、牛の腱と……なんですか?」
「こんにゃくです」
「コンニャク……?」

 また聞いたことのない名前が出てきた。
 帝国と東王国、それに北方三領邦の料理にはかなり精通しているという自信があったが、そのどれにも思い当たる食材がない。
 柔らかそうな見た目は何かの内臓という風にも思える。

 

 内臓は鮮度を維持することが難しいのであまり流通しないから、その地方地方で独自の呼び方が定着していることが多い。見知った部位でも、思わぬ名前で呼ばれていれば、分からないこともある。
 牛の腱や内臓を使う、これも貧窮から生まれた料理なのだろうか。

 

 ぼくらが何気なく、食べているこんにゃく。それをぼくらの料理を知らない。中世の文化に似た異世界の住民の視点だとこうなんだよってのがうまく書かれているんですよね。

 

 この作品では居酒屋だからビールのことを異世界の住民のみんなはトリアエズナマって名前で認識してて。最初はこんなエール飲んだことないって言ってたんですけど。あとあと、じつはこれは流通を禁止されたラガーなんじゃないかって話になってですね。ぼくこれ読んではじめてビールにはエールとラガーがあるってこと知りました。

 

 こんな感じでですね。この作品って。食だったり、いろんな国の風土だったり、文化だったりに対する作者の知識量が半端ないんですよね。

 

 だから、僕らの世界にもありそうな居酒屋に異世界の人がやってきたってのがリアルに感じる。

 

 じつはさ、この作品。帯で孤独のグルメの作者さんがグルメにこんな表現があるとはって言ってたんですけどね。たしかにこの発想は凄いと思うんですよ。孤独のグルメは吾郎ってキャラがネットでネタ扱いされているから誤解されがちなんですけど。あの作品の魅力は男が一人で飯屋に入ったときの心情の変化だったり、しぐさのひとつひとつがなんかわかるっていう。リアルな感じが魅力なんですよ。で、のぶは異世界人でこのありそう感を出している。そこがすごいんですよね。

 

 これによってどうなるかっていうと。僕らがふだん食べている料理に付加価値がつくんですよね。何気なく、食べている料理がいつもよりおいしく感じるんですよ。

 

 ほら、テレビである料理屋さんが特集されたとして。次の日にそこに行ったら絶対混んでんじゃないですか。あれって、味がおいしい。店の雰囲気ってのもあるんですけどね。テレビで紹介された○○を食べているっていう付加価値も料理の満足感に入っているんですよね。

 

 そういう付加価値が普段家でも食べれるナポリタンやおでんにも付加される。そこが魅力なんですよね。

 

 普段見ているものが何かべつのファクターを通すことで特別なものに変わる。そういうの異化って呼ぶらしいですよ。

 

 こういう身近なものを別の世界観の人の視点で異化させる作品といえば、テルマエロマエがありますよね。

 

 テルマエロマエ、ローマのお風呂技師が日本の現代の銭湯にタイムスリップし、日本の銭湯事情。ひいては日本の文化全体を古代のローマ人が褒める漫画です。

 

 このテルマエロマエの異化と孤独のグルメのありそう感の両方がこの作品にはある。だから面白いんですよ。

 

 もしネット小説を食わず嫌いしている人がいるならばこの作品だけは読んでほしいですね。食べるという行為はだれもが共感できるし、普段の日常や文化をべつの世界の人に褒められるってのは気分がいいですよ。これを読んだ後と前とで生きるのの楽しさが大なり小なり変わる。万人受けする作品なんですよ。

 

WEB版

ncode.syosetu.com

 

 

 

蜘蛛ですが、なにか?

 今回はネタバレが多めです。

 

 さて、ネット小説レビュー、第14回目の作品はこちら。蜘蛛ですが、なにか?

 

 あらすじ

 女子高生だったはずの「私」は目覚めると……なんと「蜘蛛」に転生していた! 周囲は毒ガエルや猿の化け物、果ては龍まで……って、コレもう詰んでない!? 種族底辺・メンタル最強女子の、迷宮サバイバル開幕!

 

面白いですよ。最初に目覚めたときは卵から産まれて。自分を生んだ母親や兄弟にも殺されかけるってくらいハードな世界。しかもダンジョンの中での転生なんですよね。今までは、ある程度話の流れやオチが予測できるように描かれていたんですけど。この作品はどうなるかの先は読めず、ハラハラする展開が多めになっています。

 

この話は主人公のクモを中心にして考えるといわゆるスキルチート。レベルや特殊な行動、修行をすることで各種の技能を向上させていくことで強くなっていく話です。ただレベルを上げるだけでなく、レベルを上げていくことで得たスキルをどう使っていくかで話を盛り上げていくんですね。

 

この主人公が一度ダンジョンの最深部に落ちてしまい、そこからダンジョンの外に出るためにスキルを得て、レベルを上げ、最強のモンスターになっていく過程を描きながら、じつはもう一つの話を並行して書いている。

 

その話が転生前に同じ教室にいた生徒の一人をもう一人の主人公にした十年後の異世界の話。じつはこれ、教室にいる生徒、先生が全員なんらかの理由で一度死んで転生してしまったクラス転移ものなんですね。クラス転移もの。文字通り、そのクラス全部が異世界に転生する話です。漂流教室の異世界版だって考えればイメージしやすいと思います。

 

 その話での主人公は人間の姿で生まれたため、まともにレベルを上げてモンスターと戦うのが十年後になっちゃったんですね。

 

 モンスター転生で、スキルチートで、読み進めるとじつはクラス転移で、並行して王道な俺TUEE転生ものもやる。こんなに詰めておもしろくないわけないじゃん。 

 

 これのいいとこがさ。この10年後の話を読むと。10年前からスキルチートで成長しているクモがいったい教室にいただれで。10年後、何をしているのかがめっちゃきになってくるんですよ。

 

 つまり、ミステリーもはいってんですね。

 

 前、3巻が出たころかな。デュラララの作者も絶賛って書いてあったんですけどね。そうなんですよ、あの作品面白かったら。この作品も面白いんですよ。

 

 そういった面白さがあるうえで、作品内で一貫したテーマが。わたしってなんだろう?ってことなんですよね。

 

 たとえば、クラス転移した中にですね。もう一人の主人公の同級生で、元は男なのに女性に転生しちゃったキャラがいるんですけどね。彼は女性の身体で生きているうちに男のもう一人の主人公に恋しちゃうんですよ。でも、それを転生前の男としての心が許せない。結果、彼女のなかで葛藤が生まれるも、ある瞬間を境に転生前の男は俺は今ここで死ぬんだって言っててですね。そこからは彼女はもう一人の主人公が大好きな女の子になっちゃうんですよね。

 

 これはTSものではよくあるんですけどね。こういうふうにスキルを得るのに夢中になって暴走したり。名誉や全能感によって、残忍なことをしたり。この話ではですね。スキルを得るという行為だったり、スキル自体の特性だったり、地位だったり、身体的な特徴によって、クラス転移した仲間たちの心というのが変質してしまう場面を意識的に書いている。それによって、私という個人はどこからできるのか。私ってなんなのかってのを読者に突き付けているんですよね。

 

 そんななか、教室の中の誰なのか。十年後の彼女の目的はなんなのか。そのへんのことを一切明かさずに淡々とスキルチートで強くなっていく彼女のメンタルだけはまったくブレずに「蜘蛛ですが、なにか?」なんですよね。

 

 ネット小説の中では一番好きかもしんないからさ。ぜひ読んでほしい。

 

WEBで無料で読むならこちら!

小説家になろう

蜘蛛ですが、なにか?

 

WEB漫画

「蜘蛛ですが、なにか?」|無料Webコミック「ヤングエースUP」

 

 

 

CICADA 1話をネタバレ全開で語ってみる

 さて、ネット小説はいったんおやすみして、今日はシカーダについて語ります。

 

 もうすぐ、単行本も発売するし、岡田斗司夫さんが今度のニコ生で1ページずつ解説するそうですからね。その前に俺が1話だけでもやっちゃいます。

 

 シカーダとは、漫画家山田玲司先生の最新作です。代表作は冴えないオタクが姉の大改造によりイケメン男になって好きなヒロインを口説く漫画、Bバージン。あと、ゲイのビジュアル系バンドの男の子が好きな男のために風水を使ったボールを投げる野球漫画、アガペーズ。伝説のジゴロを父に持つNGな純情男子が憧れの彼女を口説くために父が遺したジゴロの神髄を書いた本、アムリタ経典をもとにすべての女性を救う男NGになる漫画NG。などを描いています。

 

 どれもちょっと聞いただけでおもしろそうでしょ。じっさい、おもしろいんですよ。今、あげた作品の共通するところはですね。ぜんぶ童貞の男の子が頑張る話なんですよね。僕が玲司先生の漫画で好きなとこはですね。女性に傷ついた男性のメンタルみたいなものが漫画の中に入っているってとこなんですよ。

 

 そして、このシカーダの1話もですね。童貞のモテない男の心をつかむような作品に仕上がっているんですよ。

 

 前回もちょっとだけ語ったんですが、今回は1話、ぜんぶ最後まで話します。

 ネタバレはノーセンキューって方は公式のホームページで1話が公開されているから読んでみてください。

 

 

spi.tameshiyo.me

 

『だから俺は貧乏ですぐ折れる、クズ野郎なんだよっ!!』

 

 ってさ、一人の男が叫ぶんだよね。涙目でさ。んで、左上のあたりに煽り文。

 

『結局 僕らの時代は真っ暗で、』

 

 このコマだけでさ。ウルっとくるんだよ。コイツだれだかまだわかってないのにさ。きらいになれないってとこまできちゃってんだよな。俺の中のきらいになれないってそうとうなとこだぞ。なにかしらのイベントがなきゃそこまで好感度あがんないんだよ。でもさ、このコマのさ。このセリフがさ。弱気になったり、自嘲気味で言ってんじゃなくさ。ホントにいろんなことがあってさ。ボロボロになった上のさ。魂の叫びだってわかるからさ。ページ開いた瞬間にこの子の叫びが聞こえた気がしたよ。

 

 でっ、次のコマだよ。

 

『でもプライドだけはでかすぎるし

 なんの取り柄もないし、

 君にふさわしい男なんかじゃないし……』

 

 ここでさっきの煽り文のつづきだよ。

 

『きっとくだらない大人になって、

 適当に死んでゆく。

 それでも、

 アキらめない――』

 

 車が描かれててさ。飛んでるから未来やなってわかるやん。何かから逃げてんだなってこともわかるよね。主人公も顔も映ってないし、小さいからさ。さっきの元気はどうしたかってくらい自信ないんだろうなあ、それで取り繕うように早口でしゃべってんだろうなあって思うよね。

 あと、煽り文読んでさ。わかるわってついおもっちゃいました。じつはこの文章、続きがある。そのために長い棒をいれてるってことに、この時の僕は気づかなかったなあ。

 

『ねぇ、レム……

 それって……』

 

 アップにすると車に乗っている主人公が映っててさ。ふきだしがその隣に伸びてて。おもわずその吹き出しの先をみようとしたらさ。次のコマに女の子の横顔があって。ああ、この子がしゃべってんだなって思うじゃん。ここ、ちょっとこわいんだよね。

 

『「それでも好き」って……

 言って欲しいの……』

 

 んで、次のコマで主人公の見開かれた目のアップ。しっかり涙も描いてありますよね。俺、ドキッとしましたよ。twitterで自虐ツィートしているときの俺がフラッシュバックしてさ。心臓つかまれたような気持になりましたよ。

 

 そのハラハラ気持ちのまま、不安な気持ちのまま次のページめくるんだよ。

 この後、スッゲェェェぞ。

 

 まだ読んでないやつは大きめに大きめに余白つくるから読めよ‼ 

 いいから読めよ‼!!

 

spi.tameshiyo.me

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見開きで一言。でっかいコマで一言。

 ここでようやく女の子の顔がアップででるんだよね。

 さっきは表情みえなかったのにさ。

 

 笑顔なんだよ。しかも満面な笑みじゃなくてさ。死ぬ間際にそばにいる人の手を取ってさ。わたし幸せだったわとか言いそうな笑顔っ!

 

『全部好きよ』

 

 しかも下のところにさ。煽り文が言うんだよ。

『――キミがいる。』ってキミがいるってさ!

 ウルっときますよ。

 

 んで、その次のコマでさ。

 歯ァ食いしばってさ。

 

『だめだ。』

 

 ああダメだよ! 女の子にこんなこと言わせちゃうお前がまずダメだし。今にもこの女死にそうだぞ! どうすんだよオイ!

 

 でっ、「いたぞシカーダだ」って言って追いかけている人がいて。「くっ、くそ!」と言って逃げる主人公。最後のコマで「逝くな、ロルカ――」って言いかけるんだけどさ。バシュってさ。やけに軽い音なんだけどさ。男の乗っている車が打たれるんだよね。

 

 なんでここだけたんたんと語りだすかというと。ここで原作山田玲司、作画バナーイの文字が目に入るから。

 

 その次のページにようやく表紙。シカーダとでっかいタイトル。スカイツリーみたいな建物があって、そこにドンっとちいさなピンク色の爆発。あっ、打たれて爆発したんやなって思うと同時にそういやこれ漫画だよなと冷静になる俺。

 

 そっか、玲司先生が話つくって、このバナーイくんが絵を描くのか。けっこうウマイやん、とこの時は上から目線で考える俺。

 だいたいこのあたりでホットになって感情的に作品を楽しむ俺の心のとなりにさ。冷静になってクールに自分の中の現実を語りだす俺が出てくるんだよな。

 

 やっぱ玲司先生ウマいわ。煽り文の構成とかって編集さんが考えたのかな。あやうく心持ってかれるとこだったわ。まあ、といったってこんな都合のいい女いねーしな。

 

 後でこのクールな俺、スゲェ恥ずかしい思いをすることになるんだよな。

 

 爆発したよ。どうなったんだろうと思ったら。『ロルカ!!』って地面で横になっている彼女に叫ぶ男。よかった生きてたんだね、と僕もほっと一息ですよ。

 んで、コマの中の主人公の独白。

 

『俺はずっと…

 聞きたかったんだ…』

『どうして君は

 俺みたいな

 男を……』

『こんな……

 何もない…』

 

 点の連続がさ。3点ダッシュっていうんだっけ。ウマいよね。自信なさげな感じが伝わる。

 んで、もう一回。『こんな……』って言ってさ。次のページ。

 

 日本列島全体のコマ。今見てみて気づいたんだけど。ところどころ細いね。温暖化でちょっとちっちゃくなっているのかな。1年前って書いてあってさ。ああ、回想はいるんだな、そうだと思ってたよ、と思って左下のコマをみて、あれっ?ってつい思ってしまいました。さっきの男とは違う小太りの男が映ってんだよね。

 さかのぼると寂れた商店街、ごみを片づけているのかな。なにしとんのかな。その小太りの男はボロボロの恰好で何か遠くのものをみている。

 

 次のページを見ると小太りの男はもう一人の男と対面して。なにか紙袋を渡してんですよね。セリフないんですよね。『スッ……』と紙袋を男が見せるとゴクリ……とのどを鳴らす男。中身のことを考えるとさ。今見るとちょっとかわいいシーンなんだよね。

 

 受け取って、だっと小走りで走る男。すると、男は別の男に初老のダンディな男に呼び止められるんですよな。「おい。」ってさ。

 

 ここまで読んでもまだわかんないんですよね。この男だれなのか。さっきの二人はどうなったんだよって思っちゃう。でも、緊迫したシーンだってことは伝わる。最初さ、男は麻薬でも持ってんじゃないかっておもってたよ。

 

 初老の男は、小太りの男を疑っているのかと思いきや。たんに注意しただけなんですよね。んで、そのまま目的地に走った男は仲間と合流する。

 

「手に入ったか?」

「ああ…

 多分、

 本物だ……」

 

『ひさしぶりだ……

 すげー

 ドキドキする…』

『ドアはロックしたか?』

『ああ……

 まあ、落ち着けって……』

『早く

 見せろ‼』

 

 もうさ、中身なんなんだよって気になるし。緊迫するんだけどさ。今読むと、エロ本を友達の家で開こうとしているシーンにしか思えない。 

 

 んで、次のページをめくったらさ。でっかいコマでさ。

 オニ柄のビキニを着たさ。かわいい女の子がいるわけだよ。

 主人公がちっちゃくてさ。ヒロインでかいんだよね。V字に足をひろげているのがやわらかそ~って感じでよくてさ。今、気づいたんだけどさ。はだしかと思ってたら。ちゃんと虎柄のソックスはいてるんだね。そこがいいよ。

 

 真っ赤な顔して表紙を見る3人組。

 かわいい顔してるよなこの3人。

 

 紙の本なのに状態はいいなって言ってんだよね。

 

 んで次のページ。

 

『これが、

 150年くらい前に

 作られたなんて……』

『「マンガ」って……』

『やっぱり想像以上だ……』

 

 ここがスゴイ真面目な顔してんだよね。

 今読み返して思ったんだけどさ。そうなんだよな。俺らってマンガ読むときこうなんだよな。そりゃ最初はさ。かわいい女の子の表紙につられましたよ。はいはい、そうですとも。だけどさ、その後さ、やられちゃうんだよな。その漫画のストーリーだったり、絵だったり、セリフだったり、キャラだったりにさ。感動するんだよな。

 

 んで、これで俺たちのコレクションは10冊になったとか言っててさ。あれれ、漫画ってそんなに流通してないんだって思った次のページだよ。

 

 

 大きな銃声、驚く3人。

 

「マズい、カワセミだ」

 

 いや、カワセミってだれだよ!

 って思ってめくると、さらに次のページに渋い男が出る。

 ブツを出しなって言っててさ。たぶんマンガなんだろうなって予想つくじゃん。

 

 そう思っていると、最後のコマで「レムさん!」。

 ようやく、主人公の名が出てきたよね。

 

 ハアハアって息切らしててさ。後輩には舐められている。しかも年下らしい。で、悔しいからいいとこ見せようってさ。先に現場に入ろうとすると。

 ゴッ!と次のページでパイプに頭をぶつける主人公。

 Bバージンの頃から思ってたけどさ。コミカルな絵とシリアスな絵の組み合わせがうまいよね。しかも、一番情けないコマでさ。レムディ・マーシャル28歳ってテロップ出てんだよね。その次にジェリコ・オオザト22歳のテロップ。

 

「あんたいなくてもおなじでしょ」っと後輩に言われ、次のページではわかりやすく落ち込む。コミカルだなぁと思ったら次のコマで独白すんですよね。

 

『確かに、

 俺には

 何もないし、

 心がすぐに折れる……』

『めげずに何かに挑戦したこともない……』

『仕方ないだろ……』

 

 ってさ、コマは2つに分けてあるんだけどさ。暗い闇の中を歩いているコマなんですよね。落ち込んでいたけど立ち上がって歩き出しているはずの場面心象風景ですね。さっきの『結局僕らの時代は真っ暗で……』のくだりを思い出しますよ。

 

 んで、設定が語られる。うまいですよね。この流れ。

 どうやら、未来日本人の暮らしは表向きでは平等と言ってんだけど、じつは格差が激しい。しかも色分けされていて。主人公は一番下の階層を示す金である。

 

 1ページだからわかりやすいんですよね。

 んで、次のページで先についた中将と合流する。

 ここでさ、没収されている漫画が『最終兵器彼女』なんだよな。

 もう、さっきのうる星やつらもそうなんだけどさ。ビックリだよ。しかも当たり前だけど許可とってんだってさ。他の漫画がこんなに出るなんてびっくりだよね。

 

 漫画の所持は犯罪らしく、次のページで燃やされる。ここでようやくどんな話か分かってくるよね。

 

 んで、主人公はさっきの「うる星やつら」を手に取るんだよな。「色っぽい女だな…」ってさ。たしかに、って思ったよ。ホントさ、バナーイさんの描くラムちゃんがかわいいんだよな。これでもかってくらい。

 

 んで、背後で「触んな」って言う小太りの男。いいこと言うんだよな。

 

「あんたなんかに……

 そいつの価値はわからない。

「このマンガの中にはな……

「当たり前に空を飛ぶ少女が出てくるんだぞ。

「それに主人公のあたるって奴は、

 バカでスケベでなんの取り柄もないのに……

 

 ああ、そうだった。次のページでさ。この小太りの男、メッチャキラキラした顔で言うんだよな。

 

「どんなに女にこばまれても……

「絶対に折れないんだぜ…」

 

 主人公、次のコマでえっ、マジ・・・・・・って顔してんだよ。

 

「しかもヒロインは、そんなクズみたいな男をずっと好きでいるんだ……」

 

 主人公さ。キラキラした目でさ。ちょっとこの漫画に興味持ち始めてんだよな。

 んで、背後から近寄る影。

 バッと、漫画を奪い取る。

 

 中尉だね。中尉がさ。取った本を炎に放り投げて燃やちゃうんだよな。

 

「いくぞ、そいつをつかまえろ

「……はい

 

 の次のコマで走り出す小太りの男。その男を、ジェリコとレムは取り押さえるんだよな。その時のさ。レムの表情が悲痛なんだよね。

 

 んで、仕事終わりの帰り道に後輩と話をしながら買い物をする主人公。一番下のランクであることの悔しさだったり、なぜか今日は特別だからと猫缶を買う主人公。んで、ジェリコはマナって女と帰って行ってさ。主人公はクソウって言いながら帰ると。

 

 恋人なんていねーしと言いながら。自分の家でマシューと呼ぶ。するとそこには白い猫がいるんだよな。しかもかわいい。嫌そうな顔しているとこも可愛い。

 でさ、猫抱きしめながら言うんだよな。俺の誕生日にお前だけはいてくれよってさ。

 だけど、猫はそっぽをむいて遠くを見る。しかも猫缶食べないままどっかいっちゃってんだよな。

 

 でさ、外の寒い中でさ。言うんだよな。

 

 さみしくて死にそうだ。

 

 ってさ。胸が張り裂けそうになりましたよ。

 

 で、ここでさっきの小太りのセリフ思い出す。

 次のコマで描かれるラムちゃん。やっぱりかわいいんだよな。

 

 で、目が覚めると、中尉に起こされているレム。

 また事件があったらしく。彼は車で現場へと急行する。

 車の中で、なんで漫画を燃やすのかって話をしましたよね。

 それで言うセリフがさ。

 

「あんなガキ臭い妄想に労働意欲を奪われたのが、

 この国ががけっぷちになった理由だ」

「全国民が生産性を上げないと国は滅びる」

 

 ホントに経済が困窮している時代なんですよね。今の状態がまやかしでいつ来てもおかしくないんでしょうけどね。

 

「マンガってそんなに価値がないモノなんですか!!」

 って言ってさ。

 

 そしたら、中尉は言うんだよな。

 

「ああ……あんなモノは「クズ」だね…」

 

 経済が貧窮する理由なんてさ。漫画以外にもあるはずなのにさ。それを規制しようとする。あたまごなしにダメって言ってんだよ。かなしいねぇ。

 

 で、ここでさ。やっぱりまた小太りの男のセリフがはいるんだよね。

 

 そして漫画を持っている男の部屋に押し入り、漫画を押収する。

 

 ここでさ、中尉に襲い掛かる男がいるんだけどさ。そこがカッコいいよね。銃を向けて打ち殺すあのシーン。

 

 んで、そんななか。じつは主人公はその部屋で見つけたうる星やつらをさ。こっそり持ち帰って読んじゃうんだよね。そしてさ、うる星やつらのコマをうつしながらさ。さっきの小太りのセリフだよ。しかも、これさ。さっきまで小さくコマに映ってたあたるがさ。しっかり描いてあるんだよな。

 

「主人公の男は…

 バカで、スケベで…

 なんの取り柄もないのに…

 絶対に折れないんだ……」

 

 小太りのセリフは枠に描いてんだけどさ。

 

「そして、ヒロインは…」

 

 は白い吹き出しなんだよな。つまり主人公の独白。主人公が心の底では求めていることなんだよな。

 

「そんなダメな男…」

 

 そして次のページだよ。

 

 ここでさ、ラムちゃんが抱き着くシーンがさ。めっちゃ可愛いの。あと、じょじょにあたるくんが大きくなっているよね。ほんと、バナーイ先生、マジパネェわっ!

 

 んでさ、言うんだよな。

 

「ちっ、

 くだらねぇ……

 こんな女、どこにもいねぇし…」

 

 あれぇ、おかしいなあ? この言葉どっかで聞いたぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………さっき数ページ前に俺が心の中で思ってたことじゃねぇか!

 

 もう、恥ずかしいわ! 玲司先生、俺の心お見通しじゃねぇか! 恥ずかしすぎてさ。背中のあたりがめっちゃ熱くなったよ!

 

 

 恥ずかしいな、と思いながら読み進めるとさ。主人公さ。家に帰ろうとして歩き出すと、誰かにぶつかってさ。漫画を地面に落とすんだよね。そしてそれを拾われる主人公。

 

 女の子の目線が隠れててさ。何考えてんだろうって思うじゃん。

 その次のページでだよ。

 

「だっちゃ?」

 って言うヒロイン。

 

 ああ、お前らここで出会うのか!

 つい納得してしまう俺なんだよ。

 

 いいよな、こんな女いないってさ。今こそ俺にこんなヒロインが必要だってとこ現れるラストね。続き読みてぇよ。

 さて、1話を読んだであろうみなさん。もうすぐ単行本発売ですから、ぜひともこの後のアマゾンのリンククリックして予約購入してください。もちろん、アマゾンじゃなくてもいい。面白いとおもったらぜひともですね。お近くの書店でお取り寄せください!

 

spi.tameshiyo.me

 

 

 

 

 

チートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップ。さらに獣人にしてイチャラブします

本屋には今日もたくさんのネット小説が書籍化されている。そんな中から気まぐれに手に取り、見つけた一冊聞いてください。それが、神島竜のそう、それが言いたかった。

 

 さて、第13回目ネット小説批評。今回の作品はチートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップさらに獣人にしていちゃらぶします。

 

あらすじ

「女神の私は猫好きなんです。最強設定で、猫と一緒に転生させてあげましょう」ある日飼い猫のミーシャと一緒に死んでしまった村田ケイジは、猫好きな女神の力で、チートな力を付与されて猫と一緒に転生させてもらう。ところが―。「…やっと言えた。大好きよ、ご主人様っ!」なんとチートになっていたのは猫のミーシャの方だった!?ケイジが苦戦しているモンスターを颯爽と粉砕。おまけに異世界の知識でもってご主人様を引っ張り出す。「私、人間になってご主人様といちゃいちゃしたいわ」ケイジはミーシャの力でダンジョンを楽々攻略&レベルアップ、彼女を獣人化させ、いちゃらぶライフを楽しむことに―!?

 

 

 森田季節さんの作品を紹介するのはこれで二度目ですね。森田季節さんは以前紹介したスライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになりましたを書いてます。でっ、調べてみたらいろいろ書いてらっしゃるようで。どうりで安定感があると思ったよ。

 

 タイトルからもわかる通り。主人公でなく、一緒に異世界転生した主人公の飼い猫が強くなる異世界転生物です。しかもその猫とラブコメします、と。タイトルで話の流れがわかるのはいいよね。このペットがチートってのは新鮮だし。 表紙の猫耳ヒロインがかわいかったからつい買ってしまいました。

 

 ネコちゃんがこんな可愛い美少女になるんだって期待感があるから。主人公がレベル1で苦労していてもワクワクしながら読み進められます。このペットが強いって設定もただ新鮮味があるだけじゃないんですよね。

 

 サポートとしてついてくれる猫が強くて主人公はレベル1で弱いって設定のため。読者にチートによる爽快感を味あわせつつ、主人公の成長に長めにページを割くことができるんですよ。

 

 ネコのミーシャが人間になるのって、本だと半分の手前あたりで、ここまでは主人公のレベルが弱いから2回くらい死ぬんじゃないかって、ハラハラするとこがあるんですよね。でも、ミーシャが表紙に描かれた美少女になるってのはわかってるからそれが楽しみで読めちゃう。んで、主人公が何度かダンジョンに潜ってようやくミーシャを人間にすると、そのころには主人公の株もだいぶ上がってるんだよね。

 

 最新作読んだ時も思ったけどさ。森田季節さんは努力する人を書くのがほんとに上手いんだね。この作品もさ。ただペットが強いだけじゃなくてさ。今まで一緒にいた女の子が強くて、異世界に来たら守られてばかりだから俺も強くなりたいっていう努力の過程を描いた作品になっている。そんな主人公のことはなかなか嫌いになれないよね。

 

  この森田季節さんの作品、これからもちょこちょこ読んでいきたいね。

 

 

平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです

 バカは風邪ひかないってあるじゃないですか。あれってさ、バカは身体が丈夫って意味じゃないと思うんですよ。

 

 そうじゃなくて、バカでも風邪はひいてるんだけど。それを気にせずに、体の不調に気づかず動く鈍いやつがバカだってことなんですよ。

 

 おなじように本当は傷ついているのに。その傷に鈍くなる。これをつよさと勘違いしちゃう。

 

 俺だけじゃないと思うんだよな。

 

 栄養ドリンクを飲んで乗り切るも大事だけどさ。ちゃんと泣いたり笑ったり怒ったりできてるか。時々は確認したほうがいいですよ。

 

映画とか、アニメとか、本とか読んでさ。面白いと思う。他の人とも話してみると、面白いとこが違うときもあれば同じときもある。そしたら、その面白いはなんなのか。泣けるのか笑えるのか熱いのか。なぜそう感じるのか。哲学に浸らず、イデオロギーでごまかさずに、五文字の言葉のその先を語り。最後にこう言うんだ。

 

そう、それが言いたかった、と。

 

 さて、大事な12回ネット小説レビューは久々の第一回カクヨムネット小説大賞受賞作、平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです。

 

あらすじ

ここは乙女ゲームの世界ですか?いいえ、現実です!京都に修学旅行中、突然平安時代にタイムスリップした女子高生・香子。イケメン貴族に助けられた恩返しに、中宮様へ献上する物語作りを手伝うことになった香子は、持ち前の妄想力でアイデアを出しまくる。しかし出来上がっていく話が『源氏物語』と似ていることに気がついて…?もしかして、私が“紫式部”になるの?現代×平安、時間を超えたラブファンタジー開幕!!

 

読んでみたらさ。予想以上に面白くてビックリした。最初に、わたしが紫式部になるなんてって感じのさ。宮廷でモブに言い寄られてキョドルとこからはじめてからの、タイムスリップの経緯。平安時代で王子様役と出会って、最初は険悪なんだけど、住まわせてもらう恩を返すために彼を助けていくうち紫式部になっていくと。

 

ネタバレじゃねぇかっておもうかもだけどさ。ホントに序盤で、わたしが紫式部なんてただ〇〇してただけなのに……っていろいろ説明しちゃってんだよ。

 

なのに面白い。ゴールがわかるってことはさ。二人がどうなるのかって不安がないことでさ。安心してハラハラドキドキできるんですよ。

 

君の名だってさ。目が覚めたら涙が出るのはあの時からだって回想にはいるからさ。どちらかが死ぬことはないだろうなって思ってみれるじゃん。

 

ゴールを安定させたうえでさ。丁寧に時代考証してんだよな。十二単のしくみだとか。当時は、名前を名乗ることは求婚だったとか。

 

読んでてへーって思いながらも。ちゃんと異性の距離が近すぎて嫌じゃない恥ずかしいシーンもありつつ。最後の最初のシーンに追いついた後のエンディングの流れはうまいですね。

 

 話の構成においてはカクヨム受賞作のなかでは一番うまい作品だと思うのでオススメです。

 

web版

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154922583

 

 

 

 

私、能力は平均値でって言ったよね!

ツィッターで前から知っていたひとが今度書籍化すると聞いて、本屋に言ったらその人の本がある。去年から、そんなことがたびたびある。相互フォローじゃなかったり、こっちが一方的に知ってるだけってのも。なくはないんだけどさ。

 

努力してるって知ってたひとがさ。結果出すのをみるとさ。これをみる俺はなんなんだって思うよな。

 

俺もなんかしたいって思わなくはないんですよ。

 

最近できたネット小説のコーナーの棚を覗いてふと思います。

 

さて、第11回ネット小説レビューはこの作品。私、能力は平均値でって言ったよね。

 

あらすじ

 私、アスカム子爵家長女、アデル・フォン・アスカムは、10歳になったある日、強烈な頭痛と共に全てを思い出した。
 自分が以前、栗原海里(くりはらみさと)という名の18歳の日本人であったこと、幼い少女を助けようとして命を落としたこと、そして、神様に出会ったことを……

 出来が良過ぎたために周りの期待が大きく、思うように生きることができなかった海里は、望みを尋ねる神様にこうお願いしたのであった。
『次の人生、能力は平均値でお願いします!』

 なのに、何だか話が違うよ!

 3つの名前を持つ少女、剣と魔法の世界で、うっかりS級ハンターなんかにならないように気を付けて普通に生きて行きます!
 だって、私はごく普通の、平凡な女の子なんだから!

 

 スゴイ面白いんですよ。息つく暇がないくらい最初から最後まで笑いをつめこんでいってるとこがよくってですね。

 

しかも、その笑いは最後まで主人公の「チートを持ってるんだけどそれを隠して普通の子になりたいのに天然だからバレバレな女の子」ってキャラを立てるためのエピソードをこれでもかってくらいつめていくんですよね。

 

だからさ、一巻読み終えるとさ。主人公のことが好きで好きで好きでたまらなくなってな。ついブログ書く途中だと言うのに、WEB版を覗いてさ。  一昨日更新されたばかりなのにさ。続きがよみたくてしょうがない焦燥感に駆られている。

 

主人公も魅力的なんだけどさ。主人公にふりまわされる周囲の登場人物もいいキャラしてんだよな。

 

あんまさ、コミカルな作品はネタバレしづらいから語りづらいんだけどさ。ホントに面白いんだよ。

 

あと、世界観もいいんだよ。魔法ってのが、ナノマシンで行なわれる世界ってのは目新しいなって思いました。

 

 

 

 

 

ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだについて

むかしさぁ、バトルロワイヤルって小説あったじゃないですか。

 

とつぜん、教室に集められたと思ったら、今からみなさんに殺し合いをしてもらいますって言われてさ。殺し合いをしていくってはなし。

友達同士だったり、兄弟だったり、仲悪かったり、いろんな人間関係がある中で極限の状態で戦わされるデスゲームの原点とされる話ですよ。

 

あの作品さ。映画化した後でさ。ある殺人事件が起きたときさ。少女がこんなことしたのはあの映画の影響だって言ってさ。叩かれてましたよね。まあよくあるテレビのオタク叩きっスよ。今もちょいちょいあるけど。むかしはもっと露骨でしたよね。

 

彼らの言い分ってのがさ。いわゆる子供たちってのはまだまだ何色でもない真っ白な布でさ。その布を自分たちがきれいだと思う色で塗りつぶせばさ。きれいな布になると思っていてさ。俺らのすきなものはその子供の成長の邪魔になる汚い何かだと思ってんですよね。

 

その言い分もわからなくはないんですよ。わからなくはないけどさ。それはあまりにも世界を単純に見すぎじゃないですか。

 

そもそも、教室の中でこれから殺しあえと言われたバトルロワイヤルというのがなんなのかといえばですよ。いわば、受験戦争の暗喩らしいんですよ。俺らってさ。多感な時期に、教室っていう狭い空間に閉じ込められてさ。勉強させられて。テストでほかのヤツよりいい成績をとって、ほかのヤツよりいい大学にいけってさ、そう仕向けられるような仕組みになってるじゃないですか。

 

だけど、教師は仲良くしろ。いじめはよくないって言うじゃないスっか。

 

その矛盾にさ。んなわきゃねーだろー!って大声出しちゃったあの作品だって、むかし『Bバージン』の作者の山田玲司先生がどっかで言ってましたよ。

 

ようはですよ。空気なんですよね。空気。

 

そのきれいな白い布をですよ。東京のビルの真上にでも垂らしてみてくださいよ。10年後にはめっちゃ汚れますよ。車の排気ガスで。

 

そう、排気ガスなんですよ。

 

俺らはな社会の汚れた空気を吸って生まれてきてるんですよ! こんな漫画あるから! こんな小説があるから! 映画があるから子供がヒトを殺すだ言いますがね! 逆だよ!社会やお前らのそういう空気があるから生まれてきてんですよ。俺たちゃな! みんな空気を吸って生まれてきてんだよ!

 

さて、第10回目はこの作品。『ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ』。

 

あらすじ

 御宮星屑は、勇者として召喚されたいじめっ子・鳳崎遼生に巻き込まれる形で異世界に降り立つ。与えられた唯一の固有能力「悦覧者(アーカイブス)」は、世界に存在しているすべての書物を脳内で閲覧する能力だ。異世界でも執拗ないじめを受ける我らが「ゴミクズ」は、「悦覧者」を駆使してレベルを上げ、密かに、そして着々と勇者への復讐の準備を進めていく。愛するロリっ子たちと共に――。
異色の異世界ピカレスクファンタジー、開幕!

 

絵は表紙買いしたんですけど、中身は予想以上に面白かったですよ。

 

この世のありとあらゆる記録媒体にアクセスできる力。悦覧者を使って、レベルを一気に上げスキルを得ていく。何の力もない0の状態のステータスがどんどん上がって、スキルも増えていくのはみててワクワクする。この溜まっていく力の出どころがわかっているのも魅力なんだよな。

 

この作品さ。主人公の目的がいじめっ子に勇者への復讐なんだけどさ。その復讐の相手がスゲェ絵に描いたような嫌なヤツ。だからこそ、ホントはステータス上では格上の主人公に対して調子にのってるとこをみるとさ。いつか痛い目みるんだろうな、と思ってさ。ちょっとニヤニヤしちゃうね。

 

こうした異世界転生ものでお約束のステータス上昇の面白さも魅力なんだけどさ。さらにいいのは少女を隷属させる、あるいは親愛関係をつくっていくとこだね。

 

 ここがこの作品のひとを選ぶとこなんだけどさ。この作品はいじめられっ子が異世界でいじめっ子に復讐する話であると同時に、異世界にいる少女を隷属させる話なんですね。

 

ちなみに俺もこういうのは大好きだ。

 

で、この話に関して大事なのはですね。べつに僕らは加虐趣味、サディスティックだからいいっていってるわけじゃないんですよ。

 

重要なのは裏切られない状態にしたうえで関係を組み立てるってとこに安心感があると思うんですよね。

 

ネット小説が売れる法則ってのはいろいろあるんですけどね。そのなかでとうぶんはぶれないであろう原則なのが読んでてストレスを感じない、感じさせないことなんですよ。

 

 だからこそ恋愛を描くときも、ヒロインが主人公と破局したり、主人公以外の子と付き合う可能性ってのはできるだけ排除しなきゃいけない。

 

基本はヒロインが主人公のことがスゴイ好きってエピソードを押し出して押し切るんですけど。この作品の厄介なとこは主人公がいじめられていて。主人公の他にも、男性キャラがメインでいることなんですよね。ちょっとやそっとのことじゃだめだから契約ってのが大事なんですよ。

 

だからこの主従関係、逆でも構わないんですよ。たとえばゼロの使い魔とかは少女の奴隷になる話ですからね。絶対に離れない関係からはじまる、これが大事なんですね。

 

現に一巻は二人の少女を堕とす話だったんですが、二巻は一人の少女の下につく話で、ちょっとほのぼのしたりぴょんぴょんする場面もあるんですよ。

 

表紙の絵が象徴的ですね。一巻は主人公の手元で死んだ目で人形のようにおとなしくしている少女たち。二巻はツンとした少女に首をたれてその手にキスをしている絵。

 

この作品は自信を喪失していたいじめられっ子が異世界で復讐を決意する話であると同時に、そんな彼だからこその主従関係からはじまる関係構築の話でもあるんですよ。

 

三巻はやくでないかな。web版も更新してくれないかな。いつも楽しみにしてる作品です。

 

web版

http://ncode.syosetu.com/n8769bz/

 

 

 

 

くま、クマ、熊、ベアー

ネットが身近になったおかげでさまざまなことが無料で知れるようになりました。知るべきことがたくさんあって。だからこそ知ってもらうことにお金が必要になり。

 

それ以外が知ってもらうための手段となり。相対的にほとんどの娯楽が無料となって。全体的にモノの価値がお金だけじゃはかれなくなってる。

 

僕らの幸せは何で買えるのだろうか。ネットで小説を読みながら、何を買うべきかふと考えてみるそんな日々。

 

さて、第9回ネット小説レビューはこの作品、『くま、クマ、熊、ベアー』。

 

あらすじ

 VRMMOゲームをやる15歳の少女のユナ。
株で数十億稼ぎ、学校に行くこともなく、家に引きこもってゲームをしている。
本日も大型アップデートが行われるを楽しみにしてインする。そして、キャンペーンで、激レアチートの譲渡不可のクマさん装備一式を当てる。(クマの着ぐるみ、クマさんパペット、クマさんの靴)
でも、こんなのボッチでもゲーム内の装備でも恥ずかしくて着れない。
さらにキャンペーンのアンケートを答えてゲームを再開すると、クマさん装備の格好で知らない森の中。
ここはどこ? 神様からメール? 異世界?
クマさん装備を付ければチート、脱げば普通の少女。クマの着ぐるみを着たユナの気のままの冒険が始まる。

 

もう最初の数ページから可愛いすぎる。文章はすごい読みやすい一人称なんだけどさ。短い文でサクサク進むのに、今どうなってるのかわからなくなんないし。女の子の話を聞いてる感がたまらなくいいんですよね。

 

神様からチート能力を持ったクマの着ぐるみを着せられた女の子が異世界で戦うけどさ。異世界でも奇異で見られる格好で恥ずかしなりながらも戦うって時点で可愛いのにさ。使い魔も白と黒のクマで可愛いしさ。家もクマの家つくっちゃうしさ。出てくる魔法がぜんぶかわいいから。読んでてニヤニヤしちゃうのよ。

 

現実世界の知識を異世界に持ちこんで無双ってのもやってさ。お店も出す。そのうえ、おっきなモンスターはチートで倒し。人間関係を広げながら。自分のテリトリーを発展させる。異世界転生もののお約束をやったうえでさ。悪役は極力目立たせない。色々やって成功させた後で、じつはこんなやついたけど、小物すぎて相手にならなかったよってさ。主人公と関係ないとこで成敗する。

 

かわいさの邪魔になるものはうまく排除しながらも勧善懲悪のスカッと間も忘れてないんだよな。

 

5巻まででてんだけどさ、 今から次作が楽しみでしょうがない。オススメの一冊です。

 

 

 

 

悪役令嬢後宮物語

クールジャパンってあるじゃないですか。アニメ、漫画、ゲームを含む大衆文化も国が支援するぜって話。正直言ってさ、金かけてランキングやったりとか。総理がマリオの格好したとかさ。だれだれがクールジャパン担当大臣になったとか。対策室がどうとかさ。新しい天下り先つくっただけじゃねぇかと思ってんだけどさ。

 

スマホゲーをつくる会社がさ。テレビのスポンサーになったり、パチンコの台になったり、さらには海外の人気によってさ、アニメの収益が無視できないレベルになったおかげでさ。オタクをみくびっている人はいるかもしんないけど、サブカルを面と向かって非難することはなくなってさ。公の存在になっちゃいましたよね。

 

それはいいことなんだけども、不安なことでもありますよ。これから、僕らよりもおおきな声を出せるひとが、サブカルのどれかをこれがこの国が誇るべき文化だとプッシュする。それはいいことのようにも思うんだけどさ。わかりやすくぜんぶノーと言われてた時代と比べるとさ。つまりはそれ以外は違うって区別化されちゃうかもしんないんだよ。

 

それはもしかしたら差別よりもたいへんなことかもしんないよ。

 

それはテレビかもしれない、ネットかもしれない、まだだれも知らないユーチューバーかもしれない。ある日いつかオタクのファッションリーダーが現れて。このアニメがおもしろい。この漫画がおもしろいと言ってさ。それでなにを見たらいいのか。読んだらいいのかわからない僕らは安心すると同時にさ。それ以外の本来それもオタク文化と呼ばれてたものが片隅に追いやられてしまう。

 

そんな日が来たとしても、俺だけは本当に好きなものを紹介したいですね。

 

さて、第8回ネット小説レビュー。今日はこの作品、悪役令嬢後宮物語。

 

あらすじ

『エルグランド王国の悪を牛耳る、裏社会の帝王』と悪名高いクレスター伯爵家令嬢、ディアナ。その美貌で老若男女を虜にして弄び、逆らう者は容赦なく叩き潰す……美しく冷酷な彼女を、人は『氷炎の薔薇姫』と呼ぶ――「えぇと、それ、誰の話?」 嫌々ながら側室となってみれば正妃候補にされ、当の国王にはいきなり嫌われ、側室同士の勢力争いのトップに祭り上げられ、ついには刺客に命を狙われる……!? 人の心を弄びそうに見える美貌――“悪役顔”のせいで、やることなすこと誤解されながらも奮闘する令嬢ディアナの、勘違い系コメディ!

 

 おもしろいですよ。

 キャラのたてかたがうまいんですよね。悪女のようにみえる顔なんだけど、じつは優しいディアナ。同じく悪人顔の父親と兄。彼らのことをしっかり理解している優しい母。このキャラをですね。最初の数ページの母と父の夫婦ゲンカとそれを止めようとする兄弟のほんのちょっとの会話でしっかり読者にわからせ、彼らを好きになったうえではじまる。ちょっとクスっと笑っちゃう誤解劇。

 

やることなすことが悪だくみにみられてしまうというコメディだけでなく。それを逆手に取ったうえで行う勧善懲悪。じょじょにできていく仲間たち。異色でありながら王道って感じで読んでておもしろいんですよね。

 

最初は、少女漫画のメタみたいな話かなって思ったんですけど、結構当たり前のテーマをうまくファンタジーに落とし込んでいるんだと思います。

 

つまりこの話って、小さな問題を数多く抱えている集団をまとめるためにあえて嫌われ役を買わざる負えない立場の主人公が、部下の話を真に受けて社長に冷遇されたりしながらも、めげずに頑張っていくうちにそこで働く仲間から尊敬され、最終的には集団の中にある問題を解決するっていう現実でもよくある話なんですよ。

 

だから、ふだんと違う世界に浸りながらもキャラに感情移入ができて泣けちゃうんです。

 

続き出て欲しいな! ほんとマジで!

 

WEB版

ncode.syosetu.com

異世界に転生したら全裸にされた

小学生の時は手のひらでインターネットをする日がくるなんて思ってもみませんでした。

 

スマホ、スゴイっスよね。むかしはインターネットなんて家でしかできないもんだから。オタクの趣味としてさ。電車男なんかでは格好の笑い物だったのに。手軽になれば、みんなスマホに夢中になってるとおもいません?

 

昔と比べたらさ、アニメに嫌悪感を持たない人はオタクだと考えたらさ。けっこうなひとがオタクなんじゃないかな。

 

だからこそ、アニメが好きのハードルが下がって、みんながいろんな情報にアクセスしてさ。お互いが共有すべき教養というのがなくなっている。

 

今ってさ、それぞれで村をつくって、その村から外れている人を常識がないというようになってんじゃないかな。

 

いろいろ知れる状態だからこそさ、お互いが共有できるものがないってものがたくさんあるとおもうんだよ。

 

スマホがどうとか、ゲームやアニメがどうとかじゃないんだよ。いろいろな情報にアクセスできるから、なにが共有すべき知識なのか話題なのかわからないんだよ。

 

だれかを村八分にしてると思ったら、自分が村八分にしていた。生きてるとなぜか漂う孤独感、そう思うのは俺だけかなぁ。

 

さて、てなわけで第7回は異世界に転生したら村八分にされた、あらため、異世界に転生したら全裸にされたです。

 

あらすじ

俺は異世界で全裸にされたうえにロープです巻きにされていた。ちょっとしたドMな格好だが、
そういう店に来たわけではなかった。バイトの帰り、確か駅前の立ち飲み屋で一杯だけひっかけて帰ろうと思っていたところ、
気が付けば異世界でとある村人に拘束されてしまったのだ。
怪しいよそ者の俺が、転生先でつまはじきにされながらもハーレムを築きなり上がっていく物語、ここに開幕!

 

面白いですよ。読みやすさと読みごたえが両立していて、主人公に好感が持てます。

 

主人公の修太はフリーターで、いろんなバイトをしています。これの面白いとこはですね。その修太のバイト経験が異世界での暮らしに役立ってる。彼はこうした経験があるからこれができる。そこんとこをしっかり考えてあるからさ。主人公の成功に説得力がある。

 

さらにですね。この作品、元々のタイトルが村八分だったとこからもわかるとおり、村の人に認められ、成功しはじめるまでにけっこう時間がかかるんですよ。だけど、そこが欠点になってない。主人公がポジティブな性格だから、語り口が明るいんですよ。それでいて堅実。問題が起きた時、その問題の対処のしかたが他の異世界転生ものに比べて突飛じゃないんですよ。だから、丁寧に書かれているって感じますね。

 

リゼロとか、灰と幻想のグリムガルとかさ。異世界に行ったけど、現実は甘くなかったよって話はあるんだけどさ。この作品は主人公に降りかかる問題は理不尽だけど、解決の仕方は合理的なんだよ。そこがさ、異世界転生もうええねん!って時に読むとさ。メッチャいいんだよね。ホント、面白いの。

 

あとさ、ヒロインがかわいいを通りこして、愛おしくなるんだよな。カサンドラちゃんとかさ。ガンギマリーとかさ。0よりもマイナスまでいってるとこからスタートしてさ。その子との間のいろんなエピソードを積み重ねてからできる関係だからさ。他の作品よりもキャラの好きになりかたがじわじわ〜って感じがいいんだよね。キャラの記号だけをみての好きじゃなくていろんなとこをみたうえでの好きってなれるとこがいいんだよね。

 

自分の経験ってのが、作中にあって、文章はスリムでありながら伝えるべきことは伝えてる。全体的に明るくてシリアスなとこもちょっと笑える。読んでてさ、作者真面目だなって思う。この人こんなひとかなって思うんですよね。かといって、作家性がつよいというわけじゃないから押しつけがましくない。だから、この人の作品が本になったり、新連載はじめてたりすると。なぜか知り合いが書いているような気分になってつい読んでしまう。

 

この作品以外にも何作か本出てたり、小説家になろうで書いてたりするんでぜひ読んでみてください。

ncode.syosetu.com

 

  

 

竜の子を産んだら離縁されたので森で隠居することにしましたについて

 

 Twitterをはじめて4年経ちました。

 

pixivが小説機能をはじめたのと同時期にツィッターをはじめ、その時に知り合った書き手さんをフォローし、その友達、また友達のみなさんをジャンルを問わずにフォローしております。

 

だいたいザッと150人以上はフォローしてるんですけどね。そのなかの10人は書籍化してる。意外と多くない?

 

こういうのをみると、勇気をもらえますね。

 

ただ、チャンスがたくさんのひとにわたるぶん。そのチャンスをものにするのは難しそうだ。

 

最近、うちの近所の本屋にもネット小説のコーナーが12月の中頃にできたんですが、この棚の流動が激しい。

 

ちょうど知り合いの本が並んだ時があったのだけれども、一冊しか並んでなくてさ。しかも、発売日なのにメインじゃなく棚のすみにあった。それがまあ2、3日置かれたら消えた。

 

本になったからといっても、そこがゴールじゃないんだと思いますよ。

 

応援したい本がある。続きを書いてほしい本がある。

 

ブログのなかではがんばれと言っている、読んでほしいあなたにも。ウルフルズだね。

 

さて、第6回目に紹介する作品はこちら『竜の子を産んだら離縁されたので森で隠居することにしました』

 

あらすじ 

「1回のキスで子どもが授かるなんて幸運だわ!」。
家名目当ての望まない結婚をした箱入り娘のシャーロット。
夫は愛人の元に行きっぱなしで、義両親には使用人扱いだったが、いきなり妊娠!
でも、生まれたのは誰にも似つかぬ、というか、どこから見ても竜の子だった。
爵位と名を奪われ、婚家を追い出されたシャーロットは息子(竜)と共に、禁断の森で暮らすことに。
それから3年。北の森には魔女が住むという噂が王都で流れるようになり、と同時に怪しい人物が彼女たちの前に現れはじめ……。

 

今回は異世界転生なしのファンタジーを舞台にした作品ですね。世界観のイメージの源流はドラクエやFFなどのゲームでなく、赤髪の白雪姫とか、知らない国の物語、それでも世界は美しいみたいな。童話が少女漫画の世界で発展していった世界っぽいですね。

 

ネット小説にはけっこうあるし。漫画でも、あれこれ俺がいつも読んでるファンタジーと違うなって感じのあるんですよ。

 

俺のなかで、ファンタジーってふたつあるんですよ。童話系ファンタジーとゲーム系ファンタジーのふたつが。

 

便宜上、童話系ファンタジーと呼びますけどね。漫画でたとえるとリボンの騎士、ライトノベルならキノの旅ですかね。

 

魔法もあったりなかったりするし、ドラゴンもいたりいなかったりするんだけど、だぶんTRPGを起点にしてつくられたファンタジーとは別の経路を通って構築されたもうひとつのファンタジー。それが童話系ファンタジー。

 

少女漫画でけっこうある気がするんですよ。

 

だぶんさ、ファンタジーがTRPGに変わる前に、漫画、絵本のなかで発展してさ。時々ゲームと合流してるんだよ。

 

僕、姉が持ってた乙女系のゲームいくつかやったことあるんだけどさ。それのファンタジーもこれ系が多い気がする。

 

作品全体の雰囲気がひとつの童話を読んでるようなそんな気分になるんですよ。語り口が優しいんですね。ひとつひとつの設定を語る時がどこかにある国を紹介してるかのようで、読んでてひっかかりがない。

 

それとこの作品、三人称で書かれているんですけど、そこもグットです。話の内容は、竜の子を産んでしまった女性と竜の子の話なんですけどね。どうしても、この設定で優しい童話を書くにはですね。この女性が竜の子を産んでもその子を可愛がる天性に優しさと純粋さをもたせなきゃいけないんですけどね。それで、彼女の心の動きと成長に密着した一人称の作品にしちゃうと、彼女の心がつよすぎちゃって感情移入しづらくなっちゃう。

 

だからさ、この作品では、彼女と竜の子の関係、生活が描写される場面があるときはさ。必ず、乳母だったり、薬屋だったり、衛兵だったりとさ。彼女たちをそばで見て、安心したり、戸惑ったり、羨ましがったりするようなさ。僕らが感情移入できるふつうの人々の視点を介して彼女たちを語るようにしている。そこが丁寧なんだよね。

 

だから、シリアスになり切らずに一歩引いた目線で、ほっこりとした気持ちで読み進められました。

 

ぜひ、本屋で取り寄せてみてください。

 

WEB版

ncode.syosetu.com

 

 

 

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってましたについて

書店に積んであったカクヨム受賞作たち。今朝見たらなくなってました。ネット小説は日々出版され、最近できたネット小説の棚もコロコロ変わります。

 

ゆく棚のながれは絶えずして、かつもとの本にあらず。メインとなった話題の本は、かつ消え、かつ出版され、久しく棚に並ぶ試しなし。

 

出版がはじまった時、嫌でも本は場所を取る。

カルマだね。

 

消えてしまう本があるのなら、

だれかが話さなきゃいけないよね。

おもに俺がさ。

 

さて、カクヨム受賞作紹介はいったんおやすみ。第5回目、ネット小説紹介、次の作品はなろう出身のこの作品、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』。

 

あらすじ

現世で過労死した反省から、不老不死の魔女になって、スローライフを300年続けてたら、いつの間にかレベル99=世界最強になってました。生活費を稼ぐためにこつこつ倒してたスライムの経験値が蓄積しすぎたせいみたいです…。そんな噂はすぐに広まり、興味本位の冒険者や、決闘を挑んでくるドラゴン、果ては私を母と呼ぶモンスター娘まで押し掛けて来るのですが―。冒険に出たことないのに最強…って、どうなる私のスローライフ!?

 

読んでいて、焦ったり、不安になったりしないストレスを感じないんですよね。

 

それでいて、話の方向性とテーマがブレないんですよね。

 

主人公は転生前に過労で倒れている。だから今度は頑張りすぎない。自分のためのことをする。その考えでスライムを倒し続けた結果、レベルがMAXになり、周囲にはそんな彼女を慕ってひとがやってきて。彼女は家族をふやしていく。

 

この作品が伝えたいことって、だれが読んでもわかるんですよ。特別ななにかを目指した努力より、ふつうだと思うような努力を継続しておこなう。そっちのほうが大事だよってはなし。

 

じつはこの話、ワンパンマンに似てるんですよね。

 

ワンパンマンとは、WEB発のヒーロー漫画です。主人公のサイタマはヒーローを志し、修行し続けた結果、ワンパンで敵を倒せるようになる。ある日、サイボーグのジェノスから自分を弟子にしてくれと言われ……ってはなしですね。

 

あの漫画で、サイタマは悪い科学者にどうやってその力を手に入れたって言われるんですけど。彼、メッチャ深刻そうな顔で言うんですよ。

 

「腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、ランニング10km、これを毎日やる‼︎!」

 

ワンパンマンもスライム倒して300年も同じテーマをそれぞれ方向性を変えていってるんですよね。ふつうの努力を継続してやるのが大切なんだよっていうね。

 

そんな単純なことって思うんだけどさ。これは今の時代、そろそろいろんなひとが言ったほうがいいんだよ。

 

むかしはさ、ジャンプがさ、努力、友情、勝利って標語を掲げてさ。みるからにキツイ修行をしないとさ。友情や勝利は得れないって展開を、僕らにとことん叩きこんだわけだ。

 

ジャンプ読んでなくても一緒だよ。

 

ドラゴン桜の時期さ。頑張るんだ、頑張ったらなんでもできる。お前がダメなのは頑張っでないからだってさ。漫画やアニメは言ってたし、ドラマも言ってたんだよ。

 

そんなふうに言われたらさ、僕らもさ、どーせ俺はダメなんだってさ。ふてくされるじゃない。だからめだかボックスの時期に修行シーンってのがなくなってさ。主人公が主人公なのは才能あるからだよねってはなしになってきちゃった。

 

そういうさ、努力の正しさってのが言葉の表面だけ社会に浸透しちゃってるからこそ。ブラックによる過労死が起きちゃうわけだ。

 

この作品はさ。そういう努力、頑張るって言葉の狂いをライトな作風で優しく優しく調整しようとしてるんだよな。

 

たとえばさ、主人公はさ。自分の弟子に対してこう言ってんだよ。

 

 

 

「頑張るって言葉をいい意味で使いすぎちゃダメ ! 」

私は社畜時代のことを思い出していた 。

今日 、無理に残業をすればどうにかなる 。

今日 、徹夜をすれば遅れは取り戻せる 。

そういう考えで何度も強引に物事を進めていた 。結果として 、何が起こるかというと 、常態的に無理を強いるスケジュ ールになってしまったのだ 。

もう結末は見えている 。

最後には私は過労死した 。

あれは一言で言えば頑張りすぎた結果だ 。

なので 、過剰な頑張りはもうやらない 。

日が暮れるまで働いたら 、もう残りは明日でいい 。

 

 

読んだ時さ。上手いな〜って思った。主人公の死んだ理由から話の積み立てかたまで、ぜんぶ一貫したテーマで書ききってだよね。スゴイよ、ホントに。

 

続きが読みたいからさ。みんなぜひ書店で注文して読んでみてよ。

 

WEB版

http://ncode.syosetu.com/n4483dj/

 

 

勇者のクズについて

ネットには今日も多くの小説が投稿されている。だれがネットで語るのか。ネット小説の書き手であり、読み手でもある神島竜が今語る。現在、できるだけ毎日更新中のこのブログ。そう、それが言いたかった。

 

さて、第4回目はまたしてもカクヨムネット小説大賞受賞作。勇者のクズ。

 

あらすじ
「勇者なんて、最低のクズがやる商売だ」改造手術を受けたヤクザが魔王となり、それを狩る職業が勇者として合法化した現代。金に困り勇者志願の女子高生3人の家庭教師となったチンピラ勇者ヤシロは、魔王の事務所へのカチコミ、勇者養成学校への不法侵入、死んだ勇者の遺品漁りなど落ちこぼれの少女たちを『指導』するうち、身体強化薬“E3”を巡る陰謀に巻き込まれ―!?第1回カクヨムWeb小説コンテスト現代アクション部門大賞作!

 

カクヨム受賞作の中では一番読みやすいです。路地裏で女性が襲われているところを助けると、その女子高生が自分の仕事を志す少女で、その少女たちは困っていてって導入があるんですけど。このへんで世界観の説明、キャラを立てることをやりながらサクサクとはなしを進めてるんですよね。

 

展開が速いけど、説明してるとこはしっかりしてるし、ちょっとの掛け合いでキャラが立ってるんですよ。

 

そうしたストーリーのうまさがあるなかで僕が面白いと思ったのが。バーで集まる主人公とその仲間たちと女子高生たちがうまく対比できてるとこですね。

 

主人公には女子高生たち以外にむかしからの仲間たちがいてですね。彼らは勇者に憧れたり、使命を感じたりする女子高生たちと比べると、勇者の仕事をその日暮らしの食い扶持と考えてて、基本、悪友と仲良くすることや自分の趣味を謳歌することを楽しんでる。

 

最初、大人と若者の対比で読んでて。うまく色を分けてるなって思いました。キャラの作風が違うようにみえるんですね。

 

で、読み進めると、あれ、どっかでみたことあるぞって思ったんですよ。

 

この大人たち。池袋ウェストゲートパークのキャラになんとなく似てる気がするんですよ。

 

いわゆる、アウトサイダー気取ってて。大人になったのに、不良のメンタルを捨てられなくて。仲間のためを優先し、狭い範囲で戦うヒーローですね。

 

もしかしたらこの作品、こういういわゆるセカイ系といわれたヒーローが消えつつあるんだけど、そんななかまた古いといわれたみんなのために戦うヒーローが今のどうしようもない現実を受け入れて現れようとしているそういう作品な気がします。

 

たとえば、この前、こち亀が終わったじゃないですか。彼はいわば酒とギャンブルとサブカルが好きで、近くの仲間を大事にするってキャラで。じつは勇者のクズと同じ要素のキャラ。それが終わって、べつのキャラが、新しいヒーロー像が必要になってる。

 

それは勇者という憧れとされる職業が決して憧れの職業ではないとしたうえで、それでもその憧れを希望を追いかけるいわばまどマギのまどかみたいなのが求められてる。そういう時代の変化によるヒーローのバトンタッチみたいのがあるんじゃないかな。

 

タイトルに1と書いてあるので、続き読みたいですね。オススメの一冊なんで是非どうぞ。

 

web版

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154963487

 

 

 

誰にでもできる影から助ける魔王討伐について

小説家になろうがオープンしてからもう12年は経ちましたね。

 

 僕が中学の時からはじまって、それから大学生の頃にSAOのアニメ化をきっかけに存在を知りました。それが今やここまで広がるとは思いませんでしたよ。

 

小説家になろうとは、文字通り小説家になるためのサイトってやつでして。そこで掲載された作品で人気になった作品は書籍化、コミカライズ、アニメ化しています。

 

むかしはちょっと大きい書店に行かないとネット小説の書籍化本はなかったんですけどね。最近、僕の近所の本屋にもネット小説コーナーができてマイナーなのも一冊は置いてくれるようになりました。

 

アマチュアとプロの垣根は崩れている。それはプロになってもアマチュアに読者を奪われてしまう厳しい世界になったということなんですけども、入り口がひろくなったようにみえるのはありがたいことですね。

 

しかし、この入り口もひろいようでせまい。

書店では次々とネット小説が並んでは消えていく、そんな彼らには共通する特徴がある。それは異世界転生だ。

 

異世界転生もの、じつはネットだけじゃなく、一般のライトノベルでもこれを意識した作品がちょこちょこ出てますね。

 

これ、アニメ化や書店だけでみると、二年くらい前から流行ってるようにみえるじゃないですか。どーも、かなり前からあるみたいなんですよ。

 

この素晴らしい世界に祝福をって作品、あるじゃないですか。あれは憧れの異世界転生をしたんだけど、なんか思ったのとちがーう!という異世界転生ものが流行ってるけど、実際はこうだよね。笑っちゃうよねって感じのさ、定番化したものを笑うって流れの小説家になろう出身の作品なんですけどね。

 

あれが書籍化されたの2013年なんですよ。

 

2013年ですよ。だいたい書籍化されたのがそうなら投稿されたのがもう一年くらい前だと思うんですよ。だとしたら5年以上前にようやくまだまだ異世界転生ものやってるよ笑っちゃうよね的なギャグはいってるんですよね。

 

のはずなのにだ。まだまだ書店に並ぶ異世界転生もの、最近なろうを知った俺みたいなのはまだいいだろうけどさ。かなり前からなろうを知ってる人からみたらさ。いまだに会社で倍返しだって言ってるおっさんをみてるようなもんなんだよ。

 

そうなるとさ。去年くらいからさ。笑っちゃうよねがだんだんと憎たらしいよねになってさ。今はもうさ。もうええねん異世界転生もの!って叫んでいるかたがポツポツと出てきている。

 

それがわかるのが今回、紹介するこの本。誰にでもできる影から助ける魔王討伐。

 

さて、ネット小説を紹介するのもこれで第三回ですね。今回もカクヨム第一回ネット小説大賞受賞作を紹介します。

 

あらすじ

魔王を倒すために異界から召喚された聖勇者、藤堂直継。彼のサポートを命じられた僧侶アレスは、パーティメンバーを見て愕然とする。火系統しか使えない魔導士リミス。流派を変えたばかりの剣士アリア。そして肝心の聖勇者は、女性ばかりをそばに置き、無謀な行動を繰り返す―。どうやって倒すんだよ魔王。色物集めてんじゃねえぞ。アレスはそこで、自分のレベルを隠して裏からフォローするのだが…。これは、ハイ・プリーストであるアレスが、聖勇者を英雄に導くまでの物語。

 

 この作品、いいよぉ。なにがいいてっさ。メッチャ異世界に召喚された勇者、藤堂直継にイライラすんだよ。

 

イライラっていうのがさ。なんでこんなことするんだとかさ。こんな理不尽なこと起きるなんてってイライラじゃないんだよ。

 

たとえるならさ、飲み屋でそこにいないやつの悪口を言ってさ。わかる!って思ったときのイライラなんだよ。

 

俺らさ。よく、芸能人が浮気しただとか。あの芸人がへんなこと言ったとか。あの元社長があんなことしたとか見てさ。イラって思ったときさ。Twitterで検索したりさ。2ちゃんのまとめみたりとかしない。悪口あるの前提でさ。

 

それで、悪口みつけてさ。そうだその通りだ、って思ってさ。イライラすんだけどさ。その時のイライラって、最初のイライラと違うじゃん。そのイライラはさ。心のなかで思ったことをだれかが言ってくれた、そういう共感による安堵とかうれしさも混じったイライラだと思うんだよ。

 

この作品の主人公はさ。現実世界から異世界に召喚された勇者、ではなく。その勇者とパーティーを組むハイプリーストのアレスなんだけどさ。

 

これも去年からはじまった大きな流れの答えなんだと思うんだよ。

 

異世界転生する彼は俺だって感情移入していく流れがあったんだけどさ。こんな性格が悪くて、自分勝手な男は俺じゃない!って流れがここへきてようやく出たんじゃねぇかなと思う。

 

むかしは現実世界では冴えない主人公が異世界転生して俺ツェーするのに感情移入できたんだけどさ。今はさ、その主人公のうしろでなんでここでこんなとこでこうするんだってイライラするちょっと離れた立ち位置で読む読者が多いんだな。

 

そのくらい、藤堂直継はあるとこまではとことんイライラするし、好きになれないキャラになってて。そのぶん、それをサポートするアレスはカッケェって思うようにできてる。

 

オススメの一冊なんで、ぜひ読んでほしい。

 

web版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880238351