そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『スーパーリッチなお嬢様姉妹が貧困俺に全裸で土下座した逆転のハメ撮り72時間コンプリートパック』について

 今回紹介する作品は、『スーパーリッチなお嬢様姉妹が貧困俺に全裸で土下座した逆転のハメ撮り72時間コンプリートパック』についてです。

スーパーリッチなお嬢様姉妹が貧困俺に全裸で土下座した逆転のハメ撮り72時間コンプリートパック (美少女文庫)

どんな話か

 お嬢様学校の寮にウーバーイーツとして配達に来ていた主人公。何度も運ぶにつれて顔なじみになっていた姉妹から男性のことについて知るための手伝いとして雇われることに。
 お嬢様の姉は主人公に対して好意的な態度を見せる一方、妹は彼に対して反抗的な態度。
 男性に興味津々な姉は主人公に対して性的な要求をエスカレートさせていき、ついには中出しをされる。
 妹とも、仲を深めていく。

どこが面白いか

 非常に丁寧に描かれた作品だ。序盤で、貧しいながらも真面目に生きている主人公を描いた上で、ひょんなことからお嬢様姉妹と関わり、彼女たちに好意を抱くと同時に、貧民とお嬢様との間の格差を感じ取り、黒い感情をときおり見せる心理描写がとてもいい。
 本作はタイトルの全裸土下座が終盤で起きることを明示した上でタイムリミットを表示しながら進行する作品だ。形式としてはアメリカドラマの24に近い。
 タイトルで読者が期待する展開がどのような形で訪れるのだろうか、というワクワク感を煽ってくれる。
 主人公とお嬢様姉妹の接点がウーバーイーツという点も今までに見なかった着眼点だったのも面白かった。
 妹がジャンクフード好きという設定が自然に出ている。お嬢様のいる豪華なタワーマンションと家族と借金取りのいる貧しい我が家を行き来する主人公から描かれる心理描写は沸騰間近のヤカンを見ているような気分だ。
  

魅力的なキャラクター

 お嬢様姉妹のキャラクターも魅力的だ。
 ただのお金持ちのお嬢様と行った表通りのキャラではなく、一人の人物として描かれているように感じる。
 個人の趣味や生い立ち、考え方のようなものが説明でなく描写でわかれせてくれるように感じた。
 主人公もいい。ときおり見せる劣等感の混じった心理描写にはひやひやしたが、基本は真面目な人物なのだということが、序盤の働く姿やキャラクターたちとの会話からわかった。だからこそ、主人公のことを嫌いにならない塩梅で尖った心理描写が描かれている。ここのバランス感覚がとてもいい。

どうエロいか

 異性の身体に興味のあるお嬢様姉妹が、教材として主人公を雇う。
 シチュエーションがシチュエーションなだけに直接的な性行為はすぐに行われる。
 性行為を重ねていきながら、主人公は一時的な豊かさと、永久的だと思わされる貧困を行ったり来たりしながら、黒い感情を蓄積させる。
 しかも、自分は貧困であり、彼女はお嬢様なんだと思わされる場面が、彼女たちの善意が垣間見える場面であるという点も罪悪感がくすぐられる。
 そのうえでの肉感的な描写を重ねていきながらの、タイトル通りの結末を期待する興奮がページを捲るほど高められた。

 とてもおすすめの作品です。ぜひ読んでみてください。