そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『星のメイドさまと新婚生活』について

今回紹介する作品は『星のメイドさまと新婚生活』です。

星のメイドさまと新婚生活 (美少女文庫)

どんなはなしか

 祖父の一周忌に来た若狭学。幼い頃からメイドとしてそばにいた屑川天音もそばにいる。
 そこで、祖父の顧問弁護士がある遺言状を遺族たちの前で明らかにした。
 曰く、メイドの天音は祖父の血を継いでおり、若狭学と屑川天音は従兄弟同士だというのだ。
 これにより、祖父の血を引く遺族に等しく分配される遺産は天音にも渡ることが明かされた。
 騒然とする親族、もちろん、主人公である若狭学も驚く。しかし、メイドであるヒロインの天音は落ち着いた様子。
 その日の夜、主人公に告白する天音。彼女は幼い頃から学のことが好きだった。パーティーで星の王子さまの話をしたあの頃から。
 メイドであった頃は財産目当てだと思われたくなかったので思いを告げていなかったが、自身も彼と同じ立場となった今なら。天音はそう考えていた。身体を重ね、夫婦となった二人は日常的なイチャイチャをしながら、様々な性行為を行う。

どう面白いか

 心臓の音が聞こえそうなくらい丁寧でしっとりとした描写だ。
 青橋先生の描く交際までのスピーディーな流れをおさえつつも、主人とメイドとしての日常の積み重ねがきれいに描かれていると感じた。
 そのうえでの、誘い受けな彼女のセリフの一つ一つが心を躍らせる。
 お互いがお互いが好きなのだ、というのが早い段階で読者の自明となった上での二人のイチャラブは離れた位置から読んでも楽しかった。
 本作はヒロインが魅力的であることもさることながら、彼女と主人公の関係性、周囲の反応、序盤から展開する詩的な表現が物語として読み応えがあり、セリフににじみ出るデレが、その後の性行為への期待を煽り、とろ火で茹でられた鍋のような心地でページを捲ることができた。本作は、星の王子さまの著作権が切れたことをきっかけに描かれた作品なのだろうけども、それも小道具として二人の出会いをとてもロマンチックなものとして描くのに役立っている。

キャラクターの魅力

 ヒロインがとてもかわいい。台詞の端々がとても知的だ。それでいて主人公に対する捕食者としての肉欲が垣間見えるようなセリフのエロさがある。主人とメイドという時間の積み重ねが感じ取れるような描写があったことも良い。それらがある事件をきっかけに好きな者同士の逢瀬へと発展していく流れは主人公を主体として読むのもよい、少し離れて二人の関係性を眺めてみるのもなかなか趣があって良い。
 見守りたくなるようなほほえましさがある。そして、年齢差があるであろう二人のおねショタ的な関係性もとても良い。
 二人の同棲生活の合間でのエロはじわじわと熱が上がっていくようなシークエンスを感じた。

どうエロイか

 恋人のようなイチャラブな会話。主人公の純真さ、奥手な部分による初心な会話からの肉体的な接触、視覚的な誘惑からのじょじょに性行為に流れていくまでの丁寧な流れがとても良い。
 その後の夫婦となってからのイチャラブもとてもエロかった。
 メイドと主人との関係性が崩れるような事件が起き、するのではないか、という予想からワンテンポ遅らせてからのエロはとてもよかった。

 おすすめの作品です。ぜひ読んでみてください。