そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『戦国犬姫!~信長の妹と新婚ライフ~』について

今回紹介する作品は『戦国犬姫!~信長の妹と新婚ライフ~』です。

戦国犬姫!~信長の妹と新婚ライフ~ (美少女文庫)

どんな話か

 大野湊を守る武将、信政。彼は信長の妹、織田犬と結婚している。織田家とのつながりの強化のために佐知家では二人の間に子供が生まれることが望まれていた。しかし、二人はこの何年間まだ子作りを行っていなかった。なぜなら、信政の母は彼を産んだ時に、若くして生んだことによる出産のダメージで死んでしまった。じつは信政には現代の日本人の魂が転生していた。彼は自身の母親の死因が若くして子を産んだためであることがわかっていた。。そのため、信政は子の出産に耐えられる18歳のこの時まで待っていた。そして、犬姫が18歳になるのが今日だった。その日の夜に愛し合う二人。はじめて一つとなることを知った犬姫は、ことあるごとに信政と肌を重ねるようになる。一方、信長の天下統一の戦は激しさを増し始め、その戦火に信政も巻き込まれつつあった。

どう面白いか

 時代小説の側面と、官能小説の側面を両立させています。
 当時の時代背景を丁寧に描き、時代のうねりに巻き込まれた夫婦の物語として読むことができました。で、ありながら、ジュプナイルポルノとしての面白さもしっかりあります。
 犬姫のかわいさがちゃんとライトノベルのヒロインのような萌えキャラとしてのかわいさをもって描かれている。
 主人公の信政を現代から転生したキャラクターとして描くことで、官能シーンや時代描写が僕らがとっつきやすい表現で書かれています。それでいて、登場人物たちのセリフや犬姫精神描写は時代に沿って描かれたもののため、時代小説を読みながらライトノベルも読めるという一挙両得な作品になっています。

キャラクターの魅力

 主人公もヒロインも魅力的です。主人公の信政は現代から戦国時代に転生した人間です。そのため、一人だけ感性が現代に近い。そのため、18歳を待ってから子作りをはじめたという展開が、主人公の生い立ちと考え方を覗けば理解できるのものになっている。そして、犬姫の視点で考えれば、信政に大切にされていたことはわかっているとはいえ、そうした気持ちを募らせていたお預けをくらっていた形となっていた点はとても官能的です。
 信政を想うヒロインの心情もとても可愛らしい。一人の幼妻としての立場的な可愛さ。幼い時からの許嫁、婚約関係などに近い関係性は尊さがある。織田家に動かされる形で彼女の人生は決まったわけだが、後半で、主人公に対する好意を高めたことにより、主人公の立場を守るために自分の意思で兄の織田信長に対して発言するという精神的な成長にはカタルシスを感じました。

どこがエロいか

 織田家との関係強化。子供をつくることの必要性が説かれていることで、二人の間での子作りが周囲によって容認されているという形がとても自然でワクワクしました。
 また、18歳まで待ってからの子作りという流れは主人公の生い立ちを考えれば納得のいくものであると同時に、犬姫の立場ではお預けをくらっているような形であり、我慢に我慢を重ねた関係がついにすすんだという初体験はとても官能的だった。そこから、セックスが日常となった二人の間の浜辺での野姦もとてもいい。
 冬ごもりの場面で、何度も繰り返す形での性行為はとてもエロい。外的な要因によって、二人がその日はダラダラと性行為にふけることが許されているというシチュエーションがすばらしかった。
 すべての事件が終息した後の、犬姫という名前からの着想による、犬耳と首輪をつけての性行為はとてもエロかった。
 お互いへの信頼関係を積み重ねたからこそアブノーマルなプレイができるようになったという流れを汲んでいてとてもエロい。

 時代小説としても面白かったし、美少女文庫としても面白い。この作者さんだからこそできる作風はとても面白い。
 オススメの作品です。ぜひ読んでみてください。