そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『スコップ無双』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『スコップ無双』です。


スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ (MF文庫J)
著者:つちせ八十八
イラストレーター:憂姫はぐれ
レーベル:MF文庫J
出版社: KADOKAWA (2019/1/25)
ISBN-10: 4040652967
ISBN-13: 978-4040652962
発売日: 2019/1/25

あらすじ
アランは地上最強の鉱夫だ。
掘ること100年、スコップから岩石溶解ビームが出た。
1000年でビームは波動砲に進化した。グッと気合を入れたら撃てたのだ。
ある日、アランは王女リティシア姫を山賊から救う。
スコップ波動砲で山賊を(山ごと)消し飛ばすと、姫に護衛を頼まれた。
お礼は「なんでもします!」
そして始まるスコップ無双。唸る鉱夫狙撃、轟く鉱夫爆撃。
あまりの強さに姫も即惚れ
「え、えっちなスコップ(動詞)私としてください!」
と求婚(?)されるが、その活躍は後に神話となる鉱夫伝説の序章に過ぎなかった――
見よ世界、これが英雄だ。
剣と魔法の世界をスコップ一本で無双する、痛快無比なる冒険ファンタジー!【電子特典!書き下ろし短編付き】

驚きましたね、まさか最初から最後までスコップだけで話を進めていくとは、スコップ無双、王女リティシアの暴走、ファンタジーとしての面白さの順で語ります。

スコップ無双

主人公のアランはひたすらに鉱山を掘り続けた鉱夫。スコップで掘る技術を高めていくうちに100歳を超え、1000歳にいたる頃には波動砲が撃てるようになった。
何百年ぶりに鉱山から出てみると、盗賊に囲まれている少女、リティシアをみつける。
彼女を助けると、じつは彼女が王女であり奪われた王国を取り戻すためにオーブを集めなければいけないことを知るアラン。
彼は王女を助けるために彼女と旅をするという話。面白いですよ、スコップで無双するというネタ一本で最後まで突っ切るハイテンションなギャグ。
主人公にベタ惚れのヒロイン。
話が進んでいくと、常識人でスコップ無双にもツッコメる不憫キャラが増えるのもいいですね。

王女リティシアの暴走

スコップ無双の面白さを支えているのが魅力的なヒロイン。なかでも王女のリティシアは最高ですね。
王国の姫を追われたお姫さま。彼女の偽物が王国を牛耳っており、リティシア本人は彼女の名を騙る偽物として国から指名手配されていました。そんな彼女を救った鉱夫のアランは彼女の言葉を信じます。
窮地の中で、彼女を救った王子さま。そんな状態だからこそ、彼女はアランに憧れを抱き、自身を救ってくれたスコップを神聖視します。
この辺の信仰心ゆえの暴走が面白いんですよね。旅が進むうちに彼女のスコップに対する盲信が誇大化していくのは読んでて笑えます。

ファンタジーとしての面白さ

スコップによるギャグの目新しさも目を惹くんですけど、じつはストーリーもしっかりしているんですね。
さっき語ったように、アランに惚れる王女さまもじつはそうなるまでの心理描写、バックストーリーをちゃんと書いています。
道中で起きる旅のなかでの事件も、それが起きるきっかけも遡って書いてある。アランが鉱山に潜る何百年前の出来事が今につながってみたいな設定もあってさ。わりと過去があった上での今を描いているようにも思いました。
ギャグ一辺倒にならないように、ちゃんとツッコミを入れられる常識人を入れているし。そういうキャラは不憫キャラにすることで、スコップ無双の作品世界の雰囲気を壊さずにボケとツッコミのメリハリをつけてますね。

次巻が楽しみな一冊です。では、次の巻も追って報告いたします。