そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

じつはガチのクリエイターもの!『元勇者、印税生活はじめました』について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『元勇者、印税生活はじめました』です。

 

あらすじ

異世界の危機をその手で救った少年、刃桐創一。
勇者の使命を終え、現代日本に帰った彼が最初にやったこととは

――異世界での冒険をそのままライトノベルに書いちゃった!

実体験ならではのリアリティが絶賛され、即デビュー&人気作家の仲間入り。
だが貴重な経験ストックをわずか三巻分で使い尽くし……

「うおおお、続きが書けねえーっ!!」
迫る納期! 重すぎるファンの期待!
さらに担当編集は――

「お前、倒したはずの破壊神だろ!?」
ネタを破壊しまくるかつての宿敵登場で、どうなる俺の印税生活!?

異世界帰りの勇者さま、ラノベ書いたら大ヒット!
最強だけど締め切りには完敗。
元勇者の実録切り売りストーリー! 

 

 霜野おつかいさんの新作です。

 じつは霜野おつかいさんの作品はこれで2作目です。この前、読んだ『なぜ、勉強オタクが異能戦でもトップを独走できるのか?』ですね。

 キャッチーなタイトルに異能学園ものを勉強しつくしたであろう王道のストーリーライン。魅力的なキャラもつくれる。

 

 読んでて器用で、頭のいいかただと思いましたから今月発売された『元勇者、印税生活はじめました』も読んでみようって思ったんですよ。

 

 話の内容は異世界に転移した勇者、双桐剣一が元の世界に帰った後で、ライトノベルを書いたら大ヒット、だけど3巻目でネタが尽きてしまいどうしようと思った矢先に新しい編集が担当につく。それは宿敵であり倒したはずの魔王、リリィこと風楽梨々だった。こうして、敵同士の二人は二人三脚でライトノベルをつくっていくってはなしです。

 

 あらすじだけで、わかるように『はたらく魔王さま』×『エロマンガ先生』÷異世界転生モノです。しかも、どこが面白いのか分析して作品に取り入れている。

 

 異世界の戦いが終わった後の因縁を抜きにしたかつては敵同士であったが、どのキャラもみなが友達になってる戦いのその後を描いた幸せな空間。読む人より書く人が多い時代だからこそ共感できる産みの苦しみと、書き手の願望でもある作者の一番のファンがメッチャ美少女という夢。この二種類をしっかり両立させている。

 

 最初、主人公をラノベ作家にしたと言っても、クリエイターの要素は『はたらく魔王』要素に喰い潰されんじゃないかと思ったらですね。見事に両立してる。魔王リリィが話す編集と読者の線引き。俺TUEEものでの唐突のピンチを描くかどうかとか。ハーレムものに転向するなとか。ちゃんとしっかり創作論になってておもしろいんですよ。

 

 それでいて、リリィを魔王の座に戻そうとする存在や。魔王の力に引き寄せられるモンスターの存在を出すことで。手に汗握る戦闘シーンも自然に導入できてますね。

 

 そして、主人公が自分の作品に抱えていたであろう罪。これは読者である僕らもタイトルやあらすじを見た時から引っかかてたことをさ。見事にカタルシスに昇華させましたね。

 

最後の短編によると。次巻では、今作にちょこっとだけ出た真白ちゃんを中心とした巻になるらしくてさ。お金にガメつく、毒舌キャラの彼女に隠されたなにかに触れる話らしくってさ。これも続きを気にならせてくれます。

 

 2巻も追って報告します。