そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『悪役令嬢に転生したけど ごはんがおいしくて幸せです』について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『悪役令嬢に転生したけど ごはんがおいしくて幸せです』。

 

あらすじ(アマゾンからの引用)

朝食のおいしいスープをきっかけに、私は突然前世の記憶を取り戻した。私の前世は乙女ゲームが大好きなOL。そして今の私は、大富豪のお嬢様。名前は広陵院江梨子っていうんだけど、この名前、前世のどこかで見たことあるのよね~…あ!広陵院江梨子って、前世で大好きだった乙女ゲームの悪役じゃない!!しかも、主人公をいじめまくって最後には没落する噛ませ犬。どうしよう、私、乙女ゲームの悪役令嬢に転生しちゃったの!?でも、今はそれどころじゃないわ…だって、あっちからおいしそうな香りがするんですもの!ゲームの悪役令嬢に転生したOLが高級グルメから庶民メシまで食べ尽くす食欲系コメディ、開幕!

 

 悪役令嬢ものです。しかも今回の舞台は現代乙女ゲームでの悪役令嬢転生です。

 

 『お前みたいなヒロインがいてたまるか』とか、『ジュディハピ』とか。けっこうあるんですよ、現代乙女ゲー転生の作品って。

 

 それにグルメをプラスする。最初、食い合わせが悪そうだなって思いました。悪役令嬢ものも、グルメものも、どっちもジャンルとして確立するくらい味が強いんですよ。そんなふたつを無理やり一緒にしたら、どっちかの要素が薄くなるんじゃないかと心配したんですけどね。

 そんなことなかった。悪役令嬢に転生した主人公の葛藤とグルメがうまく融合しててさ。今まで読んだことないような作品になってる。

 

 この作品の良さは三つ。天然の主人公が紡ぐ友達関係。どことなく哀愁感が漂う転生ものだから描ける記憶と食事。小学生どうしの淡い恋です。

 

天然の主人公が紡ぐ友達関係

 まず、主人公、公陵院江梨子の性格。表紙で予想はついてましたけど。天然系で、色気より食い気な女の子。っで、お嬢さまとは正反対のタイプ。

 

 『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』のカタリナとか。『花よりだんご』の牧野つくしとか。決められたキャラクターだけが存在する世界観に、それとは正反対のキャラをいれることで。それによる秩序の乱れ、収束、変化を描くってうえで、かなり正攻法の人選ですね。

 

 今巻で、そんな彼女にやっていくことが、乙女ゲーのメインキャラとの人間関係の構築。つまり友達を増やしていく話になってるんですよね。

 

 このへんがかなりおもしろく書けてます。乙女ゲームを舞台にした場合。ゲームのキャラと関係をつくっていくって話は書かなければいけないわけなんですけども。これをただそのまま書くと間伸びするんですよ。

 

 だから、ギャグにしたり。うまくはしょったりして。一番、おいしい部分が読者の口に届くよう工夫するんですけどね。この作品では、その友達になっていく過程をかなり丁寧に書いてる。

 

 それが読んでて退屈しないし、むしろおもしろい。なぜかと言えば、グルメのようそがうまくつなぎになってるからなんですね。

 

 本来のメインヒロインである花巻つぐみとか。義弟の公陵院江介とか。桐蔭聖とか。

 

 江梨子は彼らと、ゼロよりむしろマイナスの悪役令嬢の状態から友達になっていくわけなんですけども。それが食べものをきっかけにしてつながりをよくするって展開なんですよ。

 

 しかも、グルメもの特有の押しつけがましさがなく。日常のなかのアクセントとしての食事が描かれてる。でっ、ちゃんと転生ものだから描ける食事シーンがあるんですよ。

 

哀愁感が漂う転生ものだから描ける記憶と食事

  この作品、読んでてウルっとさ。涙腺にくる場面がかなり多いんですよ。なぜかと言うと、この作品さ。

 

 全体的に懐かしいような。自分の子供の頃を思い出すかのように書かれてるんですよね。

 

 した、だったみたいな、かなり先の未来からの視点で回想する形の過去形で書かれてるからってのもあるんですが。食べものと転生した主人公の記憶を絡ませて書いてるからってのもあるんですよ。

 

 なにかを食べる時ってさ。なにを食べるかも大事なんだけどさ。どんな食べ物も一定の水準を超えている日本においてはさ。いつ、どこで、なにがあった後で食べるのかっていうさ。食べるまでのストーリーってのも大事だったりするんですよね。

 

 作者の矢御あやせさんは、その食べ物に対する思い出、思い入れってのを大事にして書いてるなって読んでてわかりますよ。

 

小学生どうしの淡い恋

 今巻の魅力は、小学生どうしの淡い恋です。人格的に未熟で、好きな子のためにがんばりたいけど、自分の力じゃどうにもできないことが多くて。男の子は恋のこの字もわかんないのに。女の子はマセてて。かと思いきや、好きって自覚はあるんだけど、どう行動に移していいかわかんない子もいて。小学生の時はだれかを好きになるときに、その子を好きになったときの他人の評価なんて気にしないから、8割くらい奇行が目立つのに、なぜか気になっちゃう異性がいたりとかさ。

 

 そういう小学生どうしの恋のいい部分をしっかり書いてるんですよね。20話の上り坂のラーメン屋のシーン、読んでてキュンキュンしましたよ。

 

 このへんの幼い頃のエピソードをしっかり書かれると。続きが気になりますね。彼らが次の巻で小学生のままでも。中学生になったとしても。二人の関係が近づいたときに、二人にはこんなエピソードがあったよなってさ。思い出しながら読むことでかなり感動するだろうなって思いますよ。

 

 今から続刊が楽しみです。

 

 

 

 僕も小説を書いています!

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