そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

ヒーローは眠らないについて ネタバレ注意!

  さて、今回紹介する作品はこちら、『ヒーローは眠らない』です。

 

 あらすじ

大手映像制作会社・東光で働く宮地麻由香は、ある日突然、子供向け特撮ヒーロードラマのプロデューサーに任命された。シリーズ人気は右肩下がり。視聴率次第で打ち切りもあり!?おまけに「あなたにとってヒーローとは?」なんて、いきなり言われても。スタッフ間の軋轢、スポンサーからの圧力、ネット炎上に監督の隠し事―数多のトラブルに晒されながら、番組成功のため奔走する麻由香は、果たしてヒーローを見つけられるのだろうか…?また明日頑張る元気をくれる、痛快ワーキングストーリー!

 

  まずお仕事ものとしての完成度の高さに驚きました。取材をしたのか、調べたのか。僕はテレビ業界には詳しくないのですが。戦勇を任された宮地さんや長門監督の書かれ方が。まるで実際にモデルがいるんじゃないかと勘ぐりたくなるくらい。人物像の描写が細かくて、自伝を読んでいるのかと錯覚しそうなくらいリアルなんですよ。

 

 戦勇のプロデューサーに任命され、監督、脚本家、キャスト、スタッフを集め、撮影に乗り出す。ここだけでもお仕事ものとしてはかなり完成度の作品として評価できる作品です。

 

 それでいて、この作品のすごいとこは、お仕事ものとみせかけて、じつはミステリーだったってとこですね。

 

 戦勇の関係者と思われる謎の人物、さかなによって行われるネット内への情報流出。しかもその存在は宮地プロデューサーに対するいわれのないバッシングへと発展し、最終的に驚愕の事実が発覚する。

 

 この後の犯人の正体が明らかになってきた時のさ。伏線の回収の仕方が上手いんですよね。本人の気にもしない所作がじつはこう受け取られていたっていうのがさ。人間の悪意みたいなのを浮き彫りにしたようにみえますよね。

 

 このお仕事ものだと思ったらミステリーでもあったってのがさ。この作品の面白いとこでもあるんだけどさ。じつはこれもヒーローは眠らないっていうこの作品のタイトルであり、テーマにもつながってるんですよね。

 

 このヒーローは眠らないってのはさ。コンテンツは眠らないとも言い換えられるんですよね。主人公の宮地プロデューサーの何気ない行動がさかなから恨まれる結果につながったり。長門監督のしたことが戦勇の新シリーズに影響したりさ。だれかがしたこと、つくったものというのはけっして消えることはなく。眠ったりしない。たしかにそこに存在し続けてだれかにメッセージを発し続ける。今回の話はそうした創作物に対する責任を宮地プロデューサーが持つようになる成長譚にも読めるんですよね。

 

 これは宮地プロデューサーだけのはなしじゃない。君がなんとなくつぶやいたことや。友だちと話したこと。君にとってはどうでもいいことでも誰かにとっては大きな影響を与えるかもしれない。

 

 僕のブログもだれかにとっての眠らないヒーローであってほしいと思ってます。

 

kakuyomu.jp