そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

蜘蛛ですが、なにか?

 今回はネタバレが多めです。

 

 さて、ネット小説レビュー、第14回目の作品はこちら。蜘蛛ですが、なにか?

 

 あらすじ

 女子高生だったはずの「私」は目覚めると……なんと「蜘蛛」に転生していた! 周囲は毒ガエルや猿の化け物、果ては龍まで……って、コレもう詰んでない!? 種族底辺・メンタル最強女子の、迷宮サバイバル開幕!

 

面白いですよ。最初に目覚めたときは卵から産まれて。自分を生んだ母親や兄弟にも殺されかけるってくらいハードな世界。しかもダンジョンの中での転生なんですよね。今までは、ある程度話の流れやオチが予測できるように描かれていたんですけど。この作品はどうなるかの先は読めず、ハラハラする展開が多めになっています。

 

この話は主人公のクモを中心にして考えるといわゆるスキルチート。レベルや特殊な行動、修行をすることで各種の技能を向上させていくことで強くなっていく話です。ただレベルを上げるだけでなく、レベルを上げていくことで得たスキルをどう使っていくかで話を盛り上げていくんですね。

 

この主人公が一度ダンジョンの最深部に落ちてしまい、そこからダンジョンの外に出るためにスキルを得て、レベルを上げ、最強のモンスターになっていく過程を描きながら、じつはもう一つの話を並行して書いている。

 

その話が転生前に同じ教室にいた生徒の一人をもう一人の主人公にした十年後の異世界の話。じつはこれ、教室にいる生徒、先生が全員なんらかの理由で一度死んで転生してしまったクラス転移ものなんですね。クラス転移もの。文字通り、そのクラス全部が異世界に転生する話です。漂流教室の異世界版だって考えればイメージしやすいと思います。

 

 その話での主人公は人間の姿で生まれたため、まともにレベルを上げてモンスターと戦うのが十年後になっちゃったんですね。

 

 モンスター転生で、スキルチートで、読み進めるとじつはクラス転移で、並行して王道な俺TUEE転生ものもやる。こんなに詰めておもしろくないわけないじゃん。 

 

 これのいいとこがさ。この10年後の話を読むと。10年前からスキルチートで成長しているクモがいったい教室にいただれで。10年後、何をしているのかがめっちゃきになってくるんですよ。

 

 つまり、ミステリーもはいってんですね。

 

 前、3巻が出たころかな。デュラララの作者も絶賛って書いてあったんですけどね。そうなんですよ、あの作品面白かったら。この作品も面白いんですよ。

 

 そういった面白さがあるうえで、作品内で一貫したテーマが。わたしってなんだろう?ってことなんですよね。

 

 たとえば、クラス転移した中にですね。もう一人の主人公の同級生で、元は男なのに女性に転生しちゃったキャラがいるんですけどね。彼は女性の身体で生きているうちに男のもう一人の主人公に恋しちゃうんですよ。でも、それを転生前の男としての心が許せない。結果、彼女のなかで葛藤が生まれるも、ある瞬間を境に転生前の男は俺は今ここで死ぬんだって言っててですね。そこからは彼女はもう一人の主人公が大好きな女の子になっちゃうんですよね。

 

 これはTSものではよくあるんですけどね。こういうふうにスキルを得るのに夢中になって暴走したり。名誉や全能感によって、残忍なことをしたり。この話ではですね。スキルを得るという行為だったり、スキル自体の特性だったり、地位だったり、身体的な特徴によって、クラス転移した仲間たちの心というのが変質してしまう場面を意識的に書いている。それによって、私という個人はどこからできるのか。私ってなんなのかってのを読者に突き付けているんですよね。

 

 そんななか、教室の中の誰なのか。十年後の彼女の目的はなんなのか。そのへんのことを一切明かさずに淡々とスキルチートで強くなっていく彼女のメンタルだけはまったくブレずに「蜘蛛ですが、なにか?」なんですよね。

 

 ネット小説の中では一番好きかもしんないからさ。ぜひ読んでほしい。

 

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