そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

勇者のクズについて

ネットには今日も多くの小説が投稿されている。だれがネットで語るのか。ネット小説の書き手であり、読み手でもある神島竜が今語る。現在、できるだけ毎日更新中のこのブログ。そう、それが言いたかった。

 

さて、第4回目はまたしてもカクヨムネット小説大賞受賞作。勇者のクズ。

 

あらすじ
「勇者なんて、最低のクズがやる商売だ」改造手術を受けたヤクザが魔王となり、それを狩る職業が勇者として合法化した現代。金に困り勇者志願の女子高生3人の家庭教師となったチンピラ勇者ヤシロは、魔王の事務所へのカチコミ、勇者養成学校への不法侵入、死んだ勇者の遺品漁りなど落ちこぼれの少女たちを『指導』するうち、身体強化薬“E3”を巡る陰謀に巻き込まれ―!?第1回カクヨムWeb小説コンテスト現代アクション部門大賞作!

 

カクヨム受賞作の中では一番読みやすいです。路地裏で女性が襲われているところを助けると、その女子高生が自分の仕事を志す少女で、その少女たちは困っていてって導入があるんですけど。このへんで世界観の説明、キャラを立てることをやりながらサクサクとはなしを進めてるんですよね。

 

展開が速いけど、説明してるとこはしっかりしてるし、ちょっとの掛け合いでキャラが立ってるんですよ。

 

そうしたストーリーのうまさがあるなかで僕が面白いと思ったのが。バーで集まる主人公とその仲間たちと女子高生たちがうまく対比できてるとこですね。

 

主人公には女子高生たち以外にむかしからの仲間たちがいてですね。彼らは勇者に憧れたり、使命を感じたりする女子高生たちと比べると、勇者の仕事をその日暮らしの食い扶持と考えてて、基本、悪友と仲良くすることや自分の趣味を謳歌することを楽しんでる。

 

最初、大人と若者の対比で読んでて。うまく色を分けてるなって思いました。キャラの作風が違うようにみえるんですね。

 

で、読み進めると、あれ、どっかでみたことあるぞって思ったんですよ。

 

この大人たち。池袋ウェストゲートパークのキャラになんとなく似てる気がするんですよ。

 

いわゆる、アウトサイダー気取ってて。大人になったのに、不良のメンタルを捨てられなくて。仲間のためを優先し、狭い範囲で戦うヒーローですね。

 

もしかしたらこの作品、こういういわゆるセカイ系といわれたヒーローが消えつつあるんだけど、そんななかまた古いといわれたみんなのために戦うヒーローが今のどうしようもない現実を受け入れて現れようとしているそういう作品な気がします。

 

たとえば、この前、こち亀が終わったじゃないですか。彼はいわば酒とギャンブルとサブカルが好きで、近くの仲間を大事にするってキャラで。じつは勇者のクズと同じ要素のキャラ。それが終わって、べつのキャラが、新しいヒーロー像が必要になってる。

 

それは勇者という憧れとされる職業が決して憧れの職業ではないとしたうえで、それでもその憧れを希望を追いかけるいわばまどマギのまどかみたいなのが求められてる。そういう時代の変化によるヒーローのバトンタッチみたいのがあるんじゃないかな。

 

タイトルに1と書いてあるので、続き読みたいですね。オススメの一冊なんで是非どうぞ。

 

web版

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154963487