そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

ネタバレ注意! ワイルド・スピードICE BREAK

 

 ワイルド・スピードICE BREAKを観ました。

 

 話はツッコミどころがあるんですけどね。やっぱ画がいいですね。後、発想の中二力が上手いですね。

 

たとえばさ、キューバでのレース。

 

 リーダーのドミニクがですね。なぜかキューバにいるんですよ。そしたらですね。オンボロの車が借金のかたに取られそうになっててさ。ドミニクがさ。レースで片付けようぜって言うんだよ。俺に勝ったら、俺の車をやるぜみたいなこと言うわけですよ。そしたらさ、借金取りはさ、いいぜじゃあそのオンボロの車で勝ってみなって言うんだよ。

 

 しかも、相手は高級車だよ。勝てるわけないじゃん。でもさ、ドミニクさ。今日からこの車は最速だって言ってさ。何すると思う? ドアとかバックドアとかベリベリ剥がしてさ軽量化すんの。それで早くすんだけどさ。ぶっちゃけ思うやん。あれ、借金のカタで車を取られなくするためにレースすんのに。車壊しちゃうんだってさ。

 

 まあさ、それでも後で治すんだろうなって思ったんだよ。いやさ、ビックリだよ。ドミニクさ。レースでいつものニトロのやつ使うんだけどさ。あまりに強力すぎて、車炎上するからね。燃えながらさ走ってさ。最後は爆風利用して勝つんだよ。でさ、借金のカタで取られる予定だった車も爆破すんの。

 

 俺の車はどうすんだよ!ってさ。そりゃツッコムやん。そしたらさ、ドミニクさ。俺のをやるよってさ。その借金の男に高級車やっちゃうんだよね。

 

 この最初らへんがさ。カッコイイんだよね。ドミニクの人柄。オンボロの車でも勝てるっていうさ。いわゆる、ガンダムの主人公はザクに強いっていうノリでさドライブテクニックを伝える。サイコーの主人公カッケェのいりだよ。

 

 でも、そのドミニクが裏切っちゃうってのが今回の肝でさ。最初のカッコイイドミニクってのがさ。コイツを倒さなきゃいけねぇって場面でもあるわけなんだ。

 

後さ、刑務所のシーンがカッコイイんだよな。あのメッチャ屈強なハゲのキャラいるじゃん。そいつがさ。前作のライバルキャラとさ。同じ刑務所にはいんだよ。そしたらさ、ライバルキャラがさ。刑務所の犯罪者たちを牢から出してさ。その混乱の最中で逃げようとすんだよ。そんなライバルキャラを逃さねぇぞと言わんばかりに追いかける屈強なハゲ。前作から肉弾戦がカッコよくなりましたよね。この刑務所のシーンが見ごたえ抜群でした。

 

 他にもカッコイイシーンがたくさんあったのでおすすめです。

 

エロマンガ先生8巻について

さて、今回紹介するのはこちら、エロマンガ先生の8巻です。

 

 エロマンガ先生とはこんな話です。

 

 ラノベ作家、マサムネは、血のつながっていないひきこもりの妹、沙霧と二人で暮らしていた。ある日、マサムネはそんな沙霧が自分の著作の人気イラストレーターエロマンガ先生であることを知る。それをきっかけにして、距離を縮めた二人は自分たちで書いたらライトノベルをアニメ化させることを目指す。

 

 ライトノベル作家を主人公にした作品。先日紹介した『妹さえいれば』もそうですね。ちなみに、クリエイターってくくりでみると最近多いんですよ。『冴えない彼女の育て方』とか、『アオイホノオ』とか、『カクエモン』とか、『ライト姉妹』とか。

 

 この系統の代表的な作品である『バクマン』がそうなんですけどね。基本、一作目でヒット作を飛ばした方が二作目でやるってパターンが多いですね。

 

 これらが多いのは書く人が同じクリエイターだからキャラの心情や業界の裏話を描きやすいってだけでなく。読む人より書く人のほうが多い時代だから、クリエイター目線の作品が好まれるようになったのでしょう。

 

 今回のエロマンガ先生の8巻もさ。ネット小説を投稿してる人にはさ。グサッとくる展開があるんですよ。

 

 今巻で面白いのが、マサムネと他の女の子のそれぞれの絡み、小話。ついに明かされる沙霧とマサムネの過去ですね。

 

 今回、全体の話が回想を中心にしてるんですね。今巻は、京香、山田エルフ、智恵、ムラマサの順で回想シーンがはいります。じつはこの話とこの話の間にこんな話があったよといったキャラ補強の回ですね。

 

 それをしたうえで、最終的に沙霧の回想になるんですね。その話がさ。いいんだよね。マサムネはネット小説を連載しててさ。その時、はじめてファンレターをくれた人はじつは沙霧でしたって話なんだけどさ。ネット小説で連載してる人にはグッときますよ。はじめて感想もらえて嬉しかったこととかさ。それをきっかけにしてツィッターをやりとりするようになったいろんな人のことを思い出しました。

 

 それでいてさ、沙霧とマサムネの話をさ。いいなと思う自分がいるんだよな。あー! 俺も可愛い妹が自分の作品のファンだったとかあってほしいって思っちゃったよ。それも泣けた。

 

 そして最後の一行でさ。結婚しようって言っちゃったね。来月に9巻が発売なわけなんだけどさ。今からが楽しみですね。

 

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メッセージのイアンがかわいそすぎる

 今朝さ、観てきたんですよ。メッセージ。

 

 言語学者のルイーズさんがさ。国の要請でさ。数学者のイアンとともにさ。地球に降り立った。謎の飛行物体の中に入って、未知の生命体と対話してさ。なんのために地球に来たのか聞いてやるって話なんですよ。

 

 今回話したいことがさ。完全、ネタバレなとこに食い込むからさ。またみてない人はこの下読まないでください。でっかい空白入れとくので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この映画さ。最初に、じつの娘が死んでしまったってとこからはじまるんですよ。その後でさ、主人公が目覚めて、大学に来たら謎の飛行物体が現れたらしいってニュースをみるんですね。

 

 それからもさ、主人公は宇宙人との対話のシーンの後にさ。娘と楽しく過ごすシーンが流れる。

 

 この流れが自然だからさ。ああ、この人は娘を亡くした後も、大学の講師をしてて。死んだ娘がなにか今後の展開に、関わるのかなって思うやん。

 

  ちがうんだよね。

 

 

 まさかとは思うが、映画を観ずにこの先をよもなんてやつはいないよな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 じつはさ、最初の映像は過去の映像でさ。主人公は、宇宙人との対話を通してさ。未来がみえるようになってんだよ。

 ここがさ。心が震える構成なんだよな。なんでもさ。宇宙人の話す言語には過去、現在、未来がなくてさ。それによってさ。未来も過去も同じという概念を学んだ主人公は未来を今の出来事のようにみることができるんだよ。

 

 それでさ。主人公は作中最大の事件、ヤマ場を解決すんだけどさ。そんなことはどうでもいいんだよ。

 

 俺はさ。オタクでコミ症で、わりかし歳いってるの独身で不器用なイアンがさ。かわいそうでしょうがないんだよ‼︎

 

 だってさ〜。未来がみえるルイーズさ。最後にプロポーズされたイアンとさ。抱き合うんだよ。かなり間があったのもつらいんだけどさ。その時の表情のさ。冷たさがつらい!

 

 あのさ、ルイーズはさ。知ってんだよ。イアンとこれから結婚することを。その後子供を産んでさ。イアンとはいつしか別れることもさ。

 

 あれさ、パッとみは夫婦の仲はしだいに冷めて別れちゃったみたいにみえるじゃん。俺さあ、あの最後のルイーズの顔見たらそんなわけねぇなって思ったよ。

 

 ルイーズとイアンがさ。どんな話をしたかは知らんよ。作中でもさ、なんで別れたかは娘に話してる内容から推察するしかないわけだからさ。

 

 話によるとさ。ルイーズには未来が見えてさ。娘が病気で死ぬってことをさ。わりかし後らへんで言ったんでしょう。それでさ、君は残酷だって言ったわけだよ。これさ、娘が死ぬというなんてって意味じゃないと思うんだよ。

 

 そもそもさ。俺のことそんな好きでもなかったってことがさ。ショックだったんだよ。

 

 思い返せばさ。イアンが告白するシーンつらかったよ。

 

  ルイーズさ。これからのことがわかったらどうする? って言うじゃん。するとさ、イアンさ。もっと君に好きと伝えるさ。キリっ、みたいなこと言ったわけじゃないですか。

 

 あの時さ。ルイーズ、苦笑いしてんだよ。こんなこと言ってるけど、この男はわたしと別れるんだよな〜。みたいなさ。微妙な顔すんだよ。

 

 ヒドくない!メッチャヒドくない!  

 

 俺さぁ、エンドロール流れた時立てなかったよ。最後まで見たよ。あんな冷たい表情で終わりはないだろう。なにかしらのフォローあるやろなってさ。思ったんだよ。

 

 ないからね! ふつうにおわっちゃったからね。これで終わり! 俺のこのどうにもならない気持ちどうすんだよってマジ思ったから!

 

 もう、マジつらかった。SF映画でこんな気持ちにさせられるなんて思わなかった。

 

 

 

シンゴジラの上位互換、メッセージを観たよ

 さっきメッセージを観ました。

 

 未知の飛行物体が地球に現れて、言語学者の女性がその飛行物体のなかにいるエイリアンと対話するってはなしです。

 

 かなりおもしろいですよ。

 何気ない映像がじつは大きな伏線になる流れはおって思ったし。船の中と外では重力が違うんだよって表現がさ。映画のなかであったんだけどさ。それがスゴい気持ち悪い。

 

 アニメだったらドラえもん映画でよくみるし。SF映画でも、宇宙でならあったけどさ。ここまで地球と宇宙船の境目を映したのははじめてみました。

 

 こんなシーンなんだよ。

 

 さっきまで地球で、地面を歩いててさ。工事現場にあるような人を運ぶアレでさ。宇宙船のなかの穴の中に入っててさ、彼らが中心に近づくにつれて、無重力に近づいて、壁だったとこが地面になって、その壁を歩くシーンがさ。スゴい気持ち悪いの。

 

 言ってみたら、単純に聞こえるじゃん。ちがうからね! この不安定な気分にされたあの感じはさ。絶対真っ暗な劇場で見ないとわからないから!

 

 あとさ、この映画さ、ストーリーだけみるとシンゴジラなんだよ。ある日、未知の飛行物体が出現してさ。主人公らはテレビで存在を知ってさ。最初はなすすべもないんだけどさ。後で学者を集めてチームを結成してさ。最初はなにもわからないんだけどさ。じょじょにわかってきてさ。ある日、時間内に事件を解決しないと他国の介入で大変になるって時にさ。その飛行物体の残したメッセージの意味がわかって、事件が解決する。

 

 シンゴジラも、メッセージも、そういうはなしなんですよ。

 

 でさ、メッセージはさ。シンゴジラと比べるとメインのキャラは少ないんだけどさ。未知の生命体に対する接し方のさ。国ごとの違いがさ。短いシーンでわかってさ。

 

 ある事件が起きる前のさ。軍の暴走もさ。じつは一人の軍人のさ。家族との電話シーンや、ちょこちょこ映る軍人の表情でさ。日に日に溜まっていくエイリアンに対する恐怖や不満、不安がわかってくんだよね。

 

 あと、最後のさ。主人公とあるキャラが抱き合うシーン。あれさ、怖くない。俺は怖かったよ。

 

 そういう登場人物の演技だったり。細かい小ネタだったりをみるとさ。シンゴジラはここがダメだったってさ。ニコ生で言ってた岡田さんの言いたいことがちょっとわかった気がしました。

 

 

 

 

 

 

小説家になろう 書籍化作品ランキング トップファイブ‼︎

 さて、今までたくさんのネット小説の書籍化作品を紹介してきました。しかし、たくさんありすぎて、どれから読んでいいかわからないのが正直なところではないでしょうか。ですので、今回は小説家になろうからオススメの作品をランキング形式で紹介します。その名も、

 

 小説家になろう書籍化作品ランキング!

 

 私的に決めた5位から1位をピックアップ! 

 

5位  悪役令嬢後宮物語

悪役令嬢後宮物語 (アリアンローズ)

悪役令嬢後宮物語 (アリアンローズ)

 

 

 悪役令嬢といったら、まずはこれ! 悪役令嬢に誤解されるお嬢さま、ディアナが、後宮を舞台に悪役をバッタバッタとなぎ倒す! 悪役と誤解される少女がじょじょにその誤解が解け、仲間を増やしていく過程は読んでいてカタルシスを感じます。

 

 

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4位 自動販売機に生まれ変わった俺は異世界迷宮を彷徨う

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う (角川スニーカー文庫)

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う (角川スニーカー文庫)

 

 

 自動販売機オタクの主人公が転生したのは自動販売機! 生き残るためにはお金が必要! 無機物転生であり、スキルチートでもあります。自動販売機の小ネタも充実してるので、へーと言いつつ、バトルも読みたい方にオススメ。

 

 

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3位 くま、クマ、熊、ベアー

くま クマ 熊 ベアー (PASH!ブックス)

くま クマ 熊 ベアー (PASH!ブックス)

 

 

 

 元ひきこもりMMORPGプレイヤーが異世界に飛ばされた。しかもクマさんの格好の装備で。装備のおかげでつよいけど恥ずかしいよ! 童話を思わせる軽い文体にかわいいクマさん魔法、クマさん装備、クマさんハウスがとにかくいい! かわいい女の子を読みたい人にオススメ!

 

 

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2位 私、能力は平均値でって言ったよね

私、能力は平均値でって言ったよね!  1 (アース・スターノベル)

私、能力は平均値でって言ったよね! 1 (アース・スターノベル)

 

 

 小説家になろうの異世界転生といえばこれ! かわいいアデルちゃんの学園生活はにっこりしちゃう。冒険者マイルとしての活躍もおもしろい!  バトル、ギャグ、女の子が好きならこれでしょ!

 

 

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1位 居酒屋のぶ

異世界居酒屋「のぶ」 (宝島社文庫)

異世界居酒屋「のぶ」 (宝島社文庫)

 

 

 ファンタジーの世界に突如、日本の居酒屋が出現!異世界グルメはここからはじまった。日本の料理の知識がないファンタジー世界の住人による食べ物の批評の旨さと美味さに舌を巻く。誰が読んでも満足できる一品。読んだらお腹がすいてきます!

 

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 毎年数多くの本が出るネット小説!この機会にぜひ読んでみてください!

 

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電撃文庫大賞、86(エイティシックス)のはなし 前半ネタバレ注意!

 さて、今回紹介する作品はこちら、『86ーエイティシックスー』です。

 

あらすじ(公式ホームページからの引用)

 サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。

 

 そう――表向きは。

 

 本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。 

 

 死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。


 二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!

 

 いろんな方がこの作品を褒めてて、スゴイと言ってる。なんでかなと思って読んでみたらですね。

 確かにスゴイ。脱帽ですよ。ロボットものとしての戦闘の描写。悲哀さが漂うキャラクターの生きざま。

 

 ただ、かわいそうですねで終わらない。差別の仕組みを語るだけでなく、それに至る心理を描く。作中の差別に憤る読者に向かって、お前も差別してんだよつきつけるストーリーラインのスゴさ。そして、ブログでは語れない驚きのラスト。

 

 今回は文章と中盤の手前までのストーリーのうまさについて語ります。そっから先はぜひ読んでほしいので話しません。

 

ロボットの描写

 最初の数ページで作者の描写力に引きこまれます。緻密で、かつ読者の想像力を信頼した文章を書いています。

 

(書籍からの引用)

ーー節足を模した長い脚部。白茶けた装甲は無数の傷に汚れ、鋏に似た高周波ブレードと背部主砲。全体的なシルエットは徘徊性の蜘蛛、四つ足の背に長い砲身を負う様は蠍のようであり、また人間で言う頭部のないその形状はどこか、無くした己の首を探して戦場を這いずりまわる白骨死体のようでもあった。ーー

 

 蜘蛛、蠍、白骨死体。全体像をしっかり書いた上で、いろんな比喩を多用することで、ロボットがどういう姿をしているのか微妙にボカしている。だから読んでてさ。頭の中のロボットの姿がおどろおどろしく感じてさ。怖いんですよね。

 

 作者さんはさ。これはこうだった。まるまるのようってさ。言い切らないんですよね。なのに頭にぼんやりと陽炎のような夢の中の映像のようなさ。はっきりはしないけどぼやけたものがあたまにのこる。これが気持ちわるくってさ。不安でさ。ついついページをめくるんだよ。

 

 次の文章とかもスゴイんだよ。

 

(書籍からの引用)

ーー 微かにわらう気配がした。

 笑う、ではなかった。どちらかといえば嗤う、に似た。けれどもっとしんと冷えた。

凄絶なまでの鋭利さゆえに目を奪われる、鋭くも危うい氷刃のような。狂気のような。

『ーーいいえ』ーー

 

 これもさ。最後までさ。比喩が連想ゲームのようにつながるんだよ。んでさ。どんな笑顔なんだろうってさ。頭の中ぐるぐる考えてさ。ようやく形になると思ったとこでさ。いいえ、って言って終わるんだよ。つきはなされちゃったよ。すごい気になること言われてさ、電話切られたような気分だった。この描写はさ。太宰治さんの『人間失格』の冒頭並みに気持ち悪い、薄気味悪さが漂う良い文なんだよ。

 

あなたも差別をしている

 今回の作品の前半のさ。表向きのテーマがさ。共和国による86への差別。人として扱われていない彼らをパイロットにすることで、有人機である機体を無人機として戦場に出す。

 

 主人公のレーナはそんな86を監視、管理をする指揮官の立場に立つ人でさ。彼らとは通信機を介しての会話をしているんですね。

 

 レーナはさ。ある経験からさ。自分は86を対等な人間として扱おう。86を家畜として扱うなんて間違っている、と考えています。

 

 でもさ、これが偽善だと、86から言われるんだよね。これは意外でもないんだけどさ。その時にさ、言われることがさ。そう来たかって、ビックリするんだよね。

 

 その辺、ボカして言うとさ、レーナが無意識にやってたあることが、86にとっては差別的な扱いだったってはなしなんだけどさ。

 

 あのシーンさ。パッと見はさ。ズートピアでウサギの警官が記者会見で差別的な発言をしてしまったシーンみたいにさ。だれしもが無意識に差別してるってはなしだと思うんだけどさ。じつはさ、それはミスリードでさ。86の言うお前は偽善って言葉はさ。レーナだけでなく。そのレーナを通して86をみている僕らに向けて言ってるんですよ。

 

 僕らはさ。いろんな文化や人種差別のある世界のなかでさ。一番良識のある人間にさ。感情移入してさ。その世界で間違った非常識をもった人間にさ。優越感を抱いたりする。

 

 これさ、異世界転生ではよくありますよね。エルフだったり、ドワーフだったりが差別されてる時。異世界転生した主人公がこんなの間違ってると憤り、そんな彼に僕らはそうだそうだと感情移入する。

 

 その時さ。僕らは差別に怒るというよりも。差別をしている人間を自分より劣った人間だと見下げてるんですよ。

 

 作中のレーナもそういうとこありますよね。

 

 でさ、この感情をさ。面白さになっている作品の一つにさ。挙げれるのがキノの旅じゃないかと思うんですよ。

 

 キノの旅ってさ。少年っぽさをもった中性的な女の子、キノがさ。いろんな国を旅してさ。その国の問題に対して、解決したり、諦観したりするはなしなんだけどさ。

 

 あれ読むときのさ。国の人のはなしを読むときってさ。こいつらってバカだよなってさ。見下げる読み方をさ。ついしちゃう時がさ。俺らにあると思うんだよ。

 

 なぜ言い切れるかと言えば、キノの旅が寓話とミリタリーをくっつけてしまった。ガリヴァー旅行記みたいにさ。キノが訪れる国ってのはさ。僕らの身近ななにかをキャラ化したり記号化したものでさ。どうしても、コイツは愚かだって思っちゃう方向に頭が動いちゃうんだよ。

 

 キノの旅の作者さんもさ。この作品が旅を通して、一人の少女が世界の美しさを見る話じゃなく。なんでも関連づけ、考察するスノッブなヤツがさ。キノの視点でこいつらバカだよなって読んじゃう寓話として読まれることを危惧してだと思うんだよ。あとがきの悪ふざけもさ。新しいことをやりたいって、気持ちもあったんだろうけどさ。作品を権威化したフリをしてさ。人の愚かさや。戦争の愚かさを嘆くフリをしてさ。アイツらバカだよなって思いたい読者を煙に巻きたいって思いもあったんだと思うんだよ。

 

 86たちに、偽善者だと言われたレーナもさ。この読者と同じなんだよ。彼女のさ。通信機を通して、戦場を見るって行為はさ。本を読む俺らと同じことしてんだよね。

 

 キノの旅の作者、時雨沢さんもその辺を含めてさ帯で絶賛してたんじゃないかな。

 

 さて、ながながと話しましたが。じつはまだ前半。後半から衝撃の展開につながっていきます。続きはぜひ読んでみてください。

 

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チートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップの2巻について

 さて、今回紹介するのはこちら、

 『チートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップ』の2巻です。

 

あらすじ

 前巻で、武闘会の活躍によりAランクの冒険者に就任できた主人公のケイジ。今巻では、ヒロインのミーシャ、盗賊のレナと共にダンジョンの奥深くを目指します。

 

 前巻では、チートな猫に支えられる主人公の努力が目立っていたんですが。2巻からは、ミーシャのチート性。彼女とのラブコメの要素が強くなっています。

 

 理由としては、今までは人の目があったから制限されていた力が、ダンジョンの最深部という主人公たちしかいない状況のため。今まで作中にあったタガが外れたから。ラブコメの要素も、前巻ではネコから人になるまでの話が半分を占めてて。今巻の序盤で、主人公がミーシャを嫁だと公につたえたため、二人の関係が確定したからですね。

 

 そして、主人公たちに大きな目的が提示されました。これも大事ですね。今後、続きを気にならせてくれます。

 

 こちらはネットと書籍、両方の続きを追っていきます。

 

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妹さえいればいいの7巻がスゴい

 さっき、妹さえいればいいの最新刊を読みました。

 

 この作品は『ラノベ部』『僕は友達が少ない』の著者、平坂読さんの作品です。

 

 内容はライトノベル作家である羽島とその周囲を取り巻く人間模様を描いた作品です。

 じつはエロマンガ先生と作風が似てるんですね。こちらもアニメ化が決まってて、今秋放送される予定です。

 

 びっくりしたのがさ、二つ。ついにくっついた二人が○ックス。新キャラ、関ヶ原幽のモデルが作者。

 

 ニャル子さんでも、最終巻にあったわけだけどさ。何も知らずにああいうシーンにはいるとびっくりしちゃうね。そっか、やっちゃうんだってさ。それをやってもいいって流れができてるんでしょうね。つまり、ライトノベルを読んでる僕らがさ、年取っちゃってさ。読者の平均年齢が上がっちゃったからなんだろうね。

 

一回だけじゃなくてさ。四回もあるんだよ。これからもそういうシーンいれてくんだろうなって思いました。

 

 でさ、新キャラの関ヶ原幽さん。このキャラ気になりますよね。彼女は故人でさ。読んでて、けっこう前から伏線を立てていたキャラなんだろうなと思います。

 彼女が亡くなる前に書いた作品は、ネットで、ライトノベルを読まずに判断しているネットの方の批判にさらされていたって書いてあってさ。このへんの描写がさ。『僕は友達が少ない』が連載されてた時のことを思い出しますよね。

 

 不思議なことにさ。エロマンガ先生の伏見つかさも、妹さえいればいいの平坂読さんもさ。前作でネットの炎上を経験しながら書いた作家さんなんですよね。その二人が同じ時期に同じタイミングでライトノベル業界を舞台にした作品を書いた。このへんの関係は気になっているので、伏見つかさ先生の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と『エロマンガ先生』を読み終えたら書いてみたいと考えています。

 

 この関ヶ原幽さんはさ。バクマンでいうとこのさ。真城くんの叔父さんにあたるんじゃないかと思うんですよね。

 

 つまり、過去の自分を死者として、平坂読先生は関ヶ原幽さんを出したんじゃないかと思うんですよ。なので、彼女の存在がさ。今後の主人公の行動だったり。ついにくっついた二人の関係に影響を与えるんじゃないかと思うんですよね。

 

 この人、ギャグにみせかけてじつは伏線をちゃんと貼る人ですから。関ヶ原幽さんも今巻だけの特別ゲストではないと思うんですよね。

 

 続刊も追って報告します。

 

 

 

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アリの巣ダンジョンへようこそ 2巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『アリの巣ダンジョンへようこそ』の2巻です。

 

 1巻では、悪人ではない冒険者たちがダンジョンにはいったら、絶望のうえで絶滅するって展開が中心でしたが、2巻からは勧善懲悪の要素が入ってきました。

 

 今回、ダンたちはフィリオーネたちの故郷に住む妖精たちを助けるために、ドラゴンと戦いましたね。

 

 これを機に、ゲーム感覚で空間を支配し、人を殺すことで自分たちのテリトリーを発展させるクラッシュオブクラウンのような放置ゲー的面白さから。

 

 大きな化け物を集団の連携で倒すモンハン的面白さに移行したように感じます。

 

 一度、主人公をヒーローにした以上、敵キャラも悪の方向によっていきそうですね。と同時にインフレしていくであろう敵キャラに期待が膨らみます。

 

 続刊が出たら、追って報告します。

 

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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』の2巻です。

 

 1巻では、努力についての話。主人公の考え、キャラクター性を強調する展開が多かったので、その点を語りましたが。2巻まで読んでいくと、この話は家族を増やしていく話なんだなと思いました。

 

 娘のシャルシャとファルファ。弟子として、ライカとハルカラと来てですよ。まさか幽霊だったり、まさかのあのキャラも同居することになるとは思いませんでした。

 

 次はだれが彼女の家に住むようになり、どんな化学反応が起きるのか。読んでてワクワクしますよ。

 

 このへんは、ワンピースのさ。いろんなやつを仲間にして海賊団をつくっていくストーリーと面白さが共通している気がします。

 

 このままだと、巻数を重ねるたびに家族が増えて、10巻くらいには城みたいに増築した家に、2、30人くらい増えちゃいそうですよね。

 

 これからも、続きを追って報告します。

 

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ヤングサンデーの主題歌、君はエイリアンについて

 今日は山田玲司のヤングサンデーのOPのはなしをします。

 

 山田玲司のヤングサンデー。漫画家、山田玲司先生がニコニコ生放送でやっている番組の名前です。

 

 その番組ですね。OPがあるんですよ。 タイトルが君はエイリアン。視聴者の公募で選ばれた曲なんでいいんですよ。

 

m.soundcloud.com

 

 単調な音かと思ったら聞き応えがあってさ。じつはよく聞くと、山田玲司先生が公募の際に挙げたレディーガガのさいしょのイントロに近いものもいいんだけどさ。

 

  歌詞がさ。好きなんですよ。

 

 さいしょ、つぎの歌詞が流れるんですよ。

 

 ぼく、ロックンロールがだいすき。

 サタデーナイト インザモーシピッツ。

 

 ぼくはロックンロールがだいすきなんだと曲の主人公は言ってさ。土曜の夜だったんだよね。インザモーシピッツってのがさ。インザモーニングとスピッツを足したものだと思うんだよ。

 

 つまりさ、土曜の夜に、ロックンロールが好きだと言ってさ。それから、朝になった時のぼくの魂。魂がさ、こう言ったんだよ。

 

 なんでなんだ。

 UFOにのっかった。

 

 土曜の夜に、ロックンロールが好きと言ってさ。その次の日の朝にさ。なんでなんだ。UFOにのっかったような気分にさ。主人公なっちゃったんだよ。

 

 土曜の夜に、彼になにがあったってはなしじゃん。そのなにかを考えるとさ。泣けてくんだよね。

 

 土曜の夜にさ。誰かと話してたと。それで、ぼく、ロックンロールがだいすきと言ったんだよ。そのあとさ、君はエイリアンだって、前提でさ。違う星でさ。優しいガイドにさ。キミのことを教えてもらったわけじゃないですか。

 

 キミって、基本は女性でさ。君が代のこととかかも考えるとさ。十中八九さ。主人公のぼくはキミのことが好きじゃないですが。このキミとさ。土曜の夜のことが関係ないはずなくてさ。

 

 絶対、主人公の僕は、好きなキミにさ。ロックンロールが好きなんだってさ。飲み会なのか。デートなのか。わからないけとさ。たぶんそう言ってさ、ロックンロールのことを話したと思うんだよ。

 

 で、その彼女はさ。ロックンロールのこと好きじゃなくてさ。彼の話すミュージシャンのことも、ロックのこともわかんなくてさ。飲み会の席が盛り上がらなかった。デートが失敗したかしたんじゃないかな。

 

 だからさ、君はエイリアンなんだ、と絶望しちゃうんだよ。エイリアンって、よっぽどだよ。話す内容がわからないだけじゃない。文化も考えも違う。なにもわからないブラックホール。文化系の彼からしたら、とつぜん宇宙に放り込まれたように。UFOにのっかったって思うような寂しさを感じたんだよ。

 

 たぶん二人の間にはさ。アスカとシンジなみの違いがあってさ。アニメならなんとかなるけど。現実だと絶望的な違いなんだよ。

 

 なんでなんだ。どうすりゃいいんだって思うよ。ここでふつうの人ならさ。ウジウジすんな。ぶつかれって言うかもしんないけどさ。

 

 俺としてはさ。ちょっと離れて様子みてもいいと思うんだよ。つまりさ、違う星でさ。優しいガイドにさ。彼女のことを軽く教えてもらってからさ。君はエイリアンなんだってとこからさ。マジメなエイリアンなんだねってとこまでメンタルを回復させてからでもいいと思うんだよ。

 

 この違う星がさ。ヤングサンデー。

 優しいガイドがさ。山田玲司先生だよ。

 

 そう考えるとさ。いいOPだな〜って、ホント思う。ヤングサンデーさ。今度、新しいOPになるらしいからさ。それだけは言いたかったんだよ。

 

sp.ch.nicovideo.jp

 

 

 

くま クマ 熊 ベアー6について

さて、今回紹介する作品はこちら、『くまクマ熊ベアー』の6巻です。

主人公のユナの一人称で語られる絵本に近い短い文で構成された文章。かわいいクマの描写。けいおんに近いかわいい女の子のゆるい交流。

それをやりながらも中身は爽快感のある俺TUEE異世界転生もの。異世界転生のなかではかなりオススメの作品です。

今巻の魅力は、王都の学生の護衛任務。今回、ユナは冒険者を目指す学生たちを指導、監督する立場に立ちます。ある程度の無双をやった異世界転生の主人公たちがある時期に通過するイベントですね。

若い子に経験させる。教えなければいけないという状況に置くことでインフレから少し外れた展開を取ることができる。

それと生意気な若者を出すことで、舐めてたアイツはスゴイやつってカタルシスも描けます。今巻はそれをした上で、次巻でゴーレムと戦うぜってとこで続くになりました。

新たにオープンしたお店も可愛いですよね。この作品は、ユナがいろんな街にクマをかたどったモニュメントを建造していくのが、僕らに達成感を与えてくれます。シムシティ的な、主人公による街の発展を楽しむ作品でもありますね。

これからも、続きを追って報告します。

誰にでもできる影から助ける魔王討伐 2巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』の2巻です。

 

 以前、 1巻も紹介しました。

 

 作品の肝だった勇者、藤堂に対するヘイトが消え、これからどうなるかとおもったんですが。その心配は杞憂でした。

 

 昨今の異世界転生もうええねんの風潮から生まれた一歩引いた立ち位置のアレスの視点はそのままに。今巻からは、藤堂とその仲間たちの視点から描かれる心情の描写が増えましたね。

 

 二組の物語を読みながら、作中で生じているある誤解が、すべてを知っている僕らからみたらおもしろく読めて。いつその誤解が解けるのかというワクワク感がありますね。

 

 そして、今巻の話の中心人物となったグレゴリオレギンスもいいですね。神を妄信し、狂気にかられるサイコパス。彼の言動にも心を惹かれましたが。聖職者でありながらトランクを武器に戦う戦闘スタイルはカッコよかったですよ。

 

 この作者さんは戦闘シーンを書くときに、身体的、精神的状態を密に描写されている方ですから。魔法よりも、接近戦を描写するのが得意なんだなと思いました。

 

 それと、スピカちゃんの活躍も気になりますね。彼女は今回である決断をすることで、僕らを驚かせました。彼女が今後どういった形で藤堂たちと関わるかが楽しみです。

 

 

 

モノクローム・サイダーについて

 さて、今回紹介する作品はこちら、『モノクローム・サイダー』です。

 

あらすじ

今なお大人を捉えて離さないレトロゲーム。もしもそのゲームが、少年時代の恋を成就させる架け橋だったなら? こんな青春をしてみたかったと思わせる珠玉の恋物語。

 

 カクヨム小説大賞のエッセイ・実話・実用作品コンテスト受賞作です。

 

 かなり心にグサッときました。

 じつは半分まで読んだ時にですね、つい読むのを一時的に止めて、しばらく経ってから読み直しました。

 この作品ですね。感情を揺さぶられる小説なんですけどね。読むのつらいんだよ。

 

 だってさ、じつは実話じゃないですか。ただの実話なら笑い話ですむんですよ。この人さ、エッセイ書くのうまくてさ。かなり心をえぐるようなさ。構成にしてんだよ。

 

 主人公が屋上で一人の少女と出会い、グンペイを通じて仲を深める。懐かしいな、思わせるくらいさ。あの頃を描くのが優れてるのもさることながらさ。あいまあいまに、奥さんとの会話シーンいれてくるのが地味に効くんだよ。

 

  レトロゲームの比喩をいれたさ。軽い文章だからさ。ラノベのノリで読んでる時にさ。ガツンとエッセイとしての実際に会ったんだぜって重みがくるとさ。

 

 ワンダースワンってことは、俺がいくつくらいだったかな。ふとさ、俺が昼休みに放送委員として音楽流している時に屋上で奥さんとグンペイを作者さんのイメージが頭に流れてですね。

 

 俺、そこまで彼女欲しかったかな〜って頭抱えるくらいさ。心に来るんだよな。

 

 あとさ、主人公のさ。俺ら感もスゴイんだよね。主人公さ、パソコン部で下ネタを披露してさ。部のみんなとワイワイやってるってシーンがあってさ。その時のだれかのネタで笑い、笑われのさ。一方通行なコミュニケーションがさ。文化部の、男子たちのノリがさ。

 

 わかっちゃうんだよな。あるあるって思うんだよ。

 

 だからさ、そのノリに浸かってた主人公がさ。ヒロインの前である失敗をしてしまったあの瞬間がさ。俺にはわかるんだよ。あるよな〜っておもったよ。

 

 だけどさ、そのすぐに奥さんとの会話シーンがあってさ。まあ、解決するんやろうなってのはわかるからさ。やっぱつらかった。

 

 エッセイでさ。ストーリーのながれがあって。伏線がしっかりしてて。文章が上手いのはなかなかないんだよね。ほんと、おもしろかったです。

kakuyomu.jp

 

 

『異世界取材記~ライトノベルができるまで~』について

はじめに

 さて、今回紹介する作品はこちら、『異世界取材記~ライトノベルができるまで~』。

 

あらすじ

中堅ラノベ作家の俺は、編集からのオーダーである「無双とハーレム」を体験するため、KADOKAWAが用意したルートを使って異世界へ取材にやってきた。ガイドの獣人アミューさん、そして、「魔法理論」を勉強するため、わざわざ異世界転移してきたらしいラノベ作家志望のJKと、いざ取材旅行へ出発!だが、孤高無双の勇者は中二病こじらせた二刀流の少年だし、ハーレム三昧の魔王の正体は後輩の売れっ子ラノベ作家!?この取材、どう転ぶかわから…(編集)先生、宣伝足りねーよ!!こうだろ→しがないラノベ作家が取材がてら異世界を救う!?創作と現実が交錯するサクセスファンタジー開幕だ!!

 

 面白いですよ。ハチャメチャな内容でありながら、芯の通ったストーリー。文章も読みやすいし、読み応えがある。読者のツッコミを想定した、勢いのある言いきりのギャグ。

 腹を抱えて笑って、なのに感動して、最後には、うぉぉぉ! 俺もライトノベルを書きてぇぇ! って、思いましたね。

 

 異世界取材記の魅力は三つあります。僕らの知識とリンクさせる描写、フィクション化された編集者、ラノベ作家ならかくあるべし、という熱いメッセージ。

 

 それらを開設したうえで、山本寛さんがブログで語った一次資料の話を例に出して、異世界取材記の魅力について語ります。

 

 僕らの知識とリンクさせる描写

 じつは田口千年堂さんの作品ははじめて読んだんですが、文章力に驚きました。この人は僕らの知っている知識にリンクさせた文章を書くのが上手いですね。たとえば、次の文章。

 

 

例1

(書籍からの引用)

――

宿屋の二階から見える景色は、現実の外国とあまり変わりはない。

 ガラス窓の外には、二階建ての瓦葺の民家が多く見受けられる。その民家のはるか向こうに、石造りの城がある。

 このくらいの町並みなら、〝世界ふしぎ発見〟でも観られる。前に取材した事がある異能系の世界のほうがディストピア感が強かった。

――

 

 異世界転移ものだからこそできる描写です。既存のメディアを出すことで、読者の頭の中のイメージを借りて世界観を共有させることができるんですね。これは異世界転移を書く上での基本中の基本です。例1のように、異世界の風景を僕らの知っている身近なものでわかりやすく伝えられるから、ネット小説では異世界転生、あるいは転移がいまだに流行っています。

 例1は序の口で。俺がスゴイなと思ったのが次の文章なんですよ。

 

例2

(書籍からの引用)

――

 遠くから見ていると、布にハサミを入れているようだ。真黒に染まったモンスターの軍勢が、勇者というハサミによって断ち切られていく。黒い領域が波を引くように分断されているのだ。

――

 

 短い文章の中で、映像的にもきれいだし、だれが読んでもわかりやすいですよね。異世界取材記では、僕らがイメージしやすい身近なものでの比喩、例えのチョイスが上手いなって思わせるのがたくさんあります。だから、読みやすい。

 

フィクション化されたラノベ業界

 異世界取材記は序盤の流れも秀逸なんですよ。

 書き出しは次の通りです。

 

(書籍からの引用)

――

 二○XX年、某月某日。

 都内某所の喫茶店にて。

「なんか、今ネット小説が流行っているみてーだな」

 パンチパーマにサングラスという大人が見ても泣き出すルックスの編集者が呟いた。

 生まれつきの顔は仕方ないにしても、その紫色のシャツとか縦縞のスラックスとか、どこで売っているんだよ。

 KADKAWAの編集者なんて、彼以外もこんな感じだ。今時、本物のヤクザでもしない恰好の連中がうろついている編集部は常に危険な香りがする。

――

 

 読んでわかる通り、あきらかに誇張された編集。漫画でもよくある編集=ヤクザの取り立てというフィクションです。スゴイのは、7P目に挿絵が入るんですけど。それが「パンチパーマにサングラスという大人が見ても泣き出すルックスの編集者」が喫茶店でタバコをふかしている場面。

 

 カラーページの挿絵を除けば、出だしの、最初に読者が見る挿絵がヤクザの編集者なんですよ。主人公のカッコいいシーンやヒロインのかわいいシーンでなく。どうみてもヤクザの編集者の絵なんです。

 

 つまり、作者の千年堂さんが最初に伝えたいのがこの作品の世界観。異世界取材記はフィクション化されたライトノベル業界の話であるってことなんですね。

 

 最初にヤクザな編集者というでっかいフィクションをぶつけたうえで、こっからエンジン全開のギャグが始まるんですよ。

 

 この作品の面白さは、そんなわけねぇだろっていう大ボラを吹きながらも、さも本当のことのように書いている言いきりのギャグがいいんですよね。

 例えば次の文章。

 

(書籍からの引用)

――

 ライトノベル作家たるもの、銃くらい撃てなければやっていけない。

 これは必要最低限のスキルだ。銃も撃てないのに、銃の描写などできないからだ。

 

 こういった、そんなわきゃねぇだろってツッコミたくなるギャグが次々と出るんですよ。だからさ、初見で見ると、圧倒されてさ。慣れてくると、笑えてくる。小説書いている人ほど笑えるネタが多いんだよ。このへんが小説を書く人がメインの読者になるカクヨムむけなんだよね。

 

 で、ギャグでありながらも、読んでるとどんどん引き込まれて、感動しちゃう自分もいる。それはさ、ライトノベル作家ならできるだろって無茶ぶりがさ。ライトノベル作家はかくあるべし。ファンタジーを書くならこのくらいの意気込みでやれっていうさ。メッセージにみえてくるんです。

 

 つまり、1次資料の大事さを説いているんですね。

 例えばさ、涼宮ハルヒの監督で有名な山本寛さんもさ。『この世界の片隅に』の感想をブログに書いたとき。次のようなことを書いているんですよ。

 

(山本寛オフィシャルブログからの引用)

――

 今のネット社会、SNS社会は、とにかく一次資料を見ない。

 裏を取らず、まとめサイトのタイトルだけで決めつける。

 

 それも根拠のない、感情と気分によってだ。

 

 雰囲気と印象、嘘や噂で決めつけるのではなく、必ず一次資料にあたれ、そこからリアリティは、真実は見えてくるのだ。

――

 

 アニメ業界や最近の若者のはなしなわけなんですけど。この話、僕らの書くなろうネット小説にもつながるんですね。

 僕らがはじめて異世界を舞台にした作品を書くとき。ゲームや漫画で得たイメージだけでつい書いちゃう。最初はそれでよくても、いつかプロになりたいと考えたら、それだけではダメなんですね。異世界を舞台にしたとしても、その世界での文化、歴史的背景。それらをいろんな資料にあたったうえで構築しなければ、本当に面白い異世界転生は書けないんです。

 

 異世界取材記はさ、そんなんできるかー! ってつい笑いながらつっこむライトノベルでありながらも、それをやるんだって、僕らに思わせてくれる熱さがあるんです。

 

(書籍からの引用)

――

「……なるほどな、取材ってわけか」

 それなら仕方がない。

 書物やネットでいくらでも資料が手に入るこの時代。

 だけどそれだけじゃ足りないんだ。

 リアリティのある作品を書くために、自分の目で一度見たいと思うよな。

――

 

 異世界取材記は、タイトルどおり異世界の取材の話で、ファンタジーを書く上での意気込み、空想だからと舐めてかかるな。本気でリアリティを追及しろって作品です。それをいろんな場面で立て続けに強調してさ。異世界を取材する主人公カッケェェな。JKの書きたいって気持ちわかるな。いいな、俺も小説を今すぐ書きてぇなって思っちゃうときにさ。ラストの怒涛の展開につながるんです。

 

 これについてはじっさいに読んでみてください。カクヨムでも読めますし、挿絵の入った書籍版もオススメです。

 

 小説を書いたことがある人もない人にもおすすめの一冊です。

 

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