そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

ネタバレ注意! キリトはVR男子⁉︎ 劇場版ソードアートオンラインについて

 劇場版ソードアートオンライン  オーディナルスケールを観てきました。

 

 

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まずはソードアートオンラインシリーズについて説明します。

 

ソードアートオンラインとは、

 装着することで仮想現実空間にダイヴできる機器ナーヴギアを介して行われるVRMMORPG、通称SAO。そこにサービス開始初日にログインしていたプレイヤー、合計1万人がゲームの開発者、茅場晶彦によって閉じ込められる。

 

 SAOは、ナーヴギアを外す、あるいはゲーム内で死ぬと現実世界でもプレイヤーは死んでしまう。生きてSAOを脱出するには最下層100層のボスを倒さなくてはいけない。

 

 主人公の桐ヶ谷和人、キリトは当初孤高の凄腕ソロプレイヤーとして数多の敵を屠るも、その過程でたくさんのヒロイン、男性キャラと交流していくうちに心を開くようになり。たくさんいるヒロインのうちの一人、結城明日菜、アスナとSAO内で結婚し、彼女と現実世界で幸せになるために、ラスボス撃破によるSAOからの脱出を目指す。しかし、その途中、キリトは黒幕の存在に気づき、彼との対決に勝つことで1万人のプレイヤーは現実世界に帰還し、キリトはアスナとめでたく恋人どうしになれたのでした。

 

いろいろ端折っちゃてるけど、この辺が映画を観る上で重要なこれまでの話です。

 

 さらに、ソードアートオンラインの魅力はですね。このSAO事件が序章に過ぎないってことですね。キリトはSAOから現実世界に帰ってくるわけなんだけども。その後、彼の前に立ちはだかる敵はSAO事件で黒幕だった茅場晶彦を模倣する者。SAOの時の恨みを晴らそうとしたり、その世界での万能感が忘れられない者。つまり、原点にして頂点。最初の事件と最初の敵が一番強くて、あとのはそれの派生でありながら、一つ一つが魅力的なストーリーになっている。ジョジョを想起させるような世界観の広げかたをしている。だからこそ、いまだに人気で世界観が広がり続けてるんですね。

 

それを踏まえた上で、ソードアートオンラインを語る上で重要なのが、この作品は俺TUEE小説であるようにみえるが、じつは俺強かったんだぜ小説。つまり、青春時代の万能感に想いを馳せるノスタルジーを描いた作品であるということだ。

 

ソードアートオンラインの悪役たちはSAO事件を土台に生まれている。彼らはあの時の感動を再現する模倣するために生まれてきていて、それこそが主人公の影として悪役、シャドウとなっている。

 

悪役は主人公のもう一つのありえた未来、シャドウであるっていうベタでこの物語を読み解くとするなら、キリトくんはあの頃の自分ってやつにいまだに依存してるんですよ。

 

 今回、まず序盤でオーグマーっていう現実世界に仮想のデータを付与するARデバイスが流行ってるって話をした上で、ヒロインたちはそのARデバイスをいつもつけてて、キャッキャッとゲームすんだけど、主人公のキリトは不満げで、極力ARデバイスをつけないようにしてますよね。

 

 あれ、ぱっとみ、ガッチャマンクラウズのハジメちゃんみたいにさ。周囲の変化の異常性に主人公だけは気づいてるって感じにも見えんだけどさ。

 

ぶっちゃけさ、俺らからしたらさ。現実を盛ることに楽しみを見いだすインスタ女子と名前からプロフィールまで架空のものにするツィッター男子の構図にみえてさ。ARを不審に思うキリトの気持ちがさ、俺らにもちょっとわかるよね。

 

これ見てるとさ。もしかしたら、ARとVRもこうやって男女にわかれて発展していくんじゃないかと思えるのが面白いんですよね。

 

んで、キリトはやっぱVRがいいっていうんだけどさ。みんなはどんどんARのほうに行ってしまい。既存のVRゲームの利用者は減ってしまう。しかし、キリトはそれでもARでなくあくまでVRのほうが好き。だからこそ、アスナも途中でARのイベント戦にキリトを誘わずに一人で参加してるんですね。この辺からさ、二人の関係の不穏さみたいなのを暗に示してんだとおもうんだよね。

 

 キリトはVRに心が向き、アスナはARに心が向いている。今回の事件はその時に起きるってのが悪意たっぷりなんですよ。アスナはARのイベント戦であるボスモンスターと戦う。そいつはなんとSAOに存在していたボスモンスターと同じなんですよね。ある日、彼女はキリトを誘わずに一人でイベント戦に参加したところ、そのボスモンスターにやられてしまう。するとなんということか、彼女はSAOの時の記憶をなくしてしまうんですよね。

 

 この後の僕にとってすごい好きなシーンがさ。キリトとの病院の待合室での会話。キリトがさんざんSAOの時の思い出の場所に連れ回した後でさ。アスナちゃんは思い出せない自分にヘコんじゃってるんだよね。そんな彼女に対して、彼はきっと思い出せるよって言うとさ。彼女は突然、青ざめた表情で右手を上げ、まるで人差し指で空中をなぞるようなしぐさをした後で倒れてしまう。

 

 キリトには最後まで彼女がなにをしようとしたのかまったくわからないんだけどさ。僕らにはわかるよね。彼女は、ネットに繋いでメールを送ろうとした。オーグマーなんてつけてないのに。

 

  じつは彼女は序盤で同じしぐさをしてるんですよね。目の前にキリトがいるのに、彼に送るプレゼントのことを秘密で相談するために。

 いわゆるデート中にスマホをいじるってやつなのに。この映画だと可愛くみえるから不思議だよね。

 

 あの時の彼女は、キリトにきっと思い出せるよっなんて言って欲しくなかったんですよね。思い出はこれからつくればいいとか。過去よりも今が大事とか。そういう言葉を言ってほしかった。そもそもSAOの時の記憶がないだけで、恋人になってからの記憶はあるんですよ。だからキリトの言葉にアスナの指が思わず動いた。無神経な彼氏の言葉よりも別の遠い友達と繋がりたかった。だって彼は今のアスナなんてみてないもの。過去の俺TUEEの延長線上のアスナをみてるんだもの。このまま思い出せなければ彼は自分を捨てるのではないかそのくらいの不安が頭をよぎったんじゃないかな。

 

 その後、ヒロインの日記を勝手にみることでアスナの心の内を知ったキリトがハッピーエンドにむかっていつものお得意の俺TUEEでゲームを攻略するわけだけどさ。あの日記を彼氏に見られたアスナちゃんはまるで突然ロボットになっちゃったようにみえたよ。彼氏に日記見られたのに、キリトくんならいいとか、お前聖人かよっての。

 

 アスナちゃんは一人の女の子のようにしっかり心の動きを繊細に描かれるときもあれば、ある一定のラインを超えそうになった時にいかにもアニメキャラですって言わんばかりに優しくなるんだよね。

 

 つまり、アスナちゃんにはさ、こんな子いたらいいなって信じるための心の屈折と都合のいい可愛い女の子のプログラムが組み込まれている。でっ、そんなもの本来は両立するわけないんだから、ときどきバグかなって思うくらいチグハグな時がある。

 

 これを踏まえた上で、主人公のシャドウたる悪役の目的を考えると笑えてくる。彼らの願いはSAOで失ってしまった一人の少女を生き返らせること。これこそがキリトの闇なんだよ。彼はSAOの時に手に入れたアスナが好きなんだ。だからSAOの時の記憶をなくしたって時に彼は必死で彼女の記憶を取り戻そうとする。

 

 敵役の言うように、死にさえしなければ一人の女の子を生き返らせるためにSAOの時の記憶くらい犠牲にしたっていいだろうにね。

 

 ラストは結局VR世界で過去のキャラが全員集合して戦うまるで仮面ライダー大戦のようなラスト。つまり、二人の未来の不安を提示するだけ提示してぶん投げたわけだ。

 果たして、このまま二人の時計の針が進んだとして彼らはこのままSAOの時のように結婚できるのだろうか。俺には二人の未来が、旦那さんは青春時代の栄光に思い出に胸を馳せ、奥さんはこの人と一緒でいいのかと将来に不安をかんじるなんてことになってしまうんじゃないかと考えてしまう。

 

 なんてたってさ、彼女は明日に向かって芽ぶく菜と書いてアスナと呼び、彼は俺らのような学生時代が華と考える典型的な日本人、和の人と書いて和人なんだぜ。二人がいい夫婦になりたいと考えるのならばもうすこしアスナちゃんはキリトにキレたほうがいいと思うんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようですについて

 さて、今回紹介する作品はまたしても悪役令嬢転生もの、ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようです。 

 

あらすじ

「攻略対象全員ヤンデレの乙女ゲーム世界に転生!? よりにもよって!?」婚約者の絵姿を目にした瞬間、私――リコリスはとんでもない記憶を取り戻してしまった。どうやら私は、記憶を持ったまま転生してしまったらしい。それも『ヤンデレ系乙女ゲー』の世界に! この記憶が確かなら、ゲームの中での『リコリス』もヤンデレだ。ヒロインをいじめまくり、周囲を傷つけ、最後は婚約者に刺されて……ってそんな人生お断り! 私は絶対、幸せになりたい! 決意を固めた私の前に、将来のヤンデレ?婚約者・ヴォルフが現れ……!? ネットで大人気! ヤンデレ系乙女ゲー・ラブミステリーがいよいよ登場!

 

 この話を一言で言うならば「ヤンデレは忘れた頃にやってくる」ですね。最初は、あれいうほどヤンデレ要素ないんじゃないかって思うんですよ。婚約者のヴォルフはツンの入った俺様っぽいってだけで、リコリスとはじめて会った時は完全に闇がないですからね。

 

 だから途中までは王道の悪役令嬢ものなんですよね。婚約者としてヴォルフと出会うと、周囲に心を開かなかった彼はヒロインにだけは心を開き、彼女の内面に惹かれる。しかし、ヒロインは悪役令嬢としてヴォルフが他の女の子に取られる結末を知っているから。彼のみえみえの好意に気づかない。

 

 悪役令嬢ってのが、いい感じに障害になってくれるからみててニヤニヤするんだよね。で、そんな日常が、ふつうの悪役令嬢ものが続くんじゃないかっておもうときに主人公たちに絶望的な障害、ヤンデレがやってくる。

 

 これがうまいんですよ。最終巻の理不尽だけど、しっかりと主人公のこれまでの行動を踏まえてのヤンデレはギョッとしましたよ。

 

 四巻で完結してる作品なので、短くて読みやすい。悪役令嬢もので最初に読むのにオススメですよ。

 

 

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったについて

 

 さて、今回紹介する作品はこちら、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』。

 

あらすじ

頭をぶつけて前世の記憶を取り戻したら、公爵令嬢に生まれ変わっていた私。え、待って!ここって前世でプレイした乙女ゲームの世界じゃない?しかも、私、ヒロインの邪魔をする悪役令嬢カタリナなんですけど!?結末は国外追放か死亡の二択のみ!?破滅エンドを回避しようと、まずは王子様との円満婚約解消をめざすことにしたけれど……。悪役令嬢、美形だらけの逆ハーレムルートに突入する!?恋愛フラグ立てまくりの破滅回避ラブコメディ★

 

 タイトルでわかるとおり、乙女ゲームの悪役令嬢に転生する主人公、カタリナが、このままだと本来の主人公が男性キャラとくっつく時に破滅しちゃうからそれを阻止するために必死で生きようってはなしです。

 

 悪役令嬢転生ものの面白いところが、ゲームだと破滅することになるっていう結末を知ったうえで、その運命を回避しなくてはいけないって目的がはっきりしてるとこですね。

 

  さらにいいのが、主人公のカタリナのキャラですよね。彼女は破滅するのを避けるために没落しても働けるように農業を勉強したり、剣と魔法を幼い頃から修行するわけなんですけど。これでチートになるかと思いきや。農業以外てんでダメ。しかも、その農業は趣味になるんですね。

 

 でもですね、それがまわりまわって周囲のキャラとの関係につながり最終的に惚れられる。コメディたっぷりのカタリナの視点と惚れるキャラの視点を交互にやって。すごい勢いで一巻で5人のキャラがカタリナに落とされるんですね。

 

 悪役令嬢もののなかで、一番コメディ色がつよいのでオススメです。

 

 

 

 

 

 

 

第一回神島竜の創作紹介 はじめて書いた処女作の話

 さて、そろそろ自作小説の宣伝もしちゃいます。

 

 その名も神島竜の創作紹介。

 第一回はpixivに投稿していた処女作。

 『who are the hero』です。

 

「Who are the hero 第1話 黒かばんと男」/「神島竜@小説書いてます」の小説 [pixiv]

 

 中学の時に書きなぐった短い話を30万文字の長編にふくらました話です。

 その短い内容はこんな話でした。

 

 火星へと向かう宇宙船の中で少年だけが青ざめた顔でいた。

 原因は少年お隣に座っている男の存在にある。

 

 一人の少年が宇宙船に乗る前に吐き気を催し、トイレにかけこむ。すると、そこにはチャック口が牙のように生えた黒いカバンがトイレで見知らぬ男性を捕食していた。化け物は少年に気付くと、次は少年に襲い掛かる。化け物に食べられてしまうっと死を覚悟するが、化け物はトイレの中に入ってきたもう一人の男に呼びかけると、少年のことなど忘れたかのようにトイレから出ていった。

 

 少年は何が起きたかわからないとでも言いたげに、トイレから出ると、両親の前で吐いてしまい、自分は火星に行きたくないと告げる。だが父親は反対する。火星に行けば、それだけで国からお金がもらえるし、いい仕事にもつける。少年たちにもっといい暮らしをさせてやることができる。そう言って、彼のお父さんは無理やり少年を宇宙船に乗せて、火星へと旅立つのである。宇宙船に乗ると、隣には化け物を従えた男がいて、その膝の上には先ほど少年を襲った黒いカバンが乗っかっていた。

 

 少年は不安になる、黒いカバンは今にも少年を襲うかもしれない。少年の家族を襲うかもしれない。だけど、宇宙では逃げ場がない。どうしよう、どうしよう、とグルグルと悩み続けると。

 

「ご搭乗いただき誠にありがとうございました」

 

 と、機内アナウンスが流れる。そう、少年が考えているあいだに地球を離陸した宇宙船は火星に着陸したのだ。搭乗者たちは続々と荷物を棚からおろして火星へと降り立つ。少年の隣に座っていた男も黒いカバンをもって火星へと降り立った。

 

 これが高校2年生から、pixivで投稿をはじめたwho are the heroの第1話となりました。今、読み返してもちょいちょい頭の悪いところがある作品です。冒頭から出てくる宇宙船は完全に空港のジェット機ですからね。

 

 1話で両親との不仲、謎の怪物に襲われても、そのことを親には伝えない、大人を信用しない少年。彼は精神と身体のバランスが悪く、吐き気を催してトイレに駆け込んだ。このへんが僕にとって重要だったんですね。

 

 この時は、少年と出会ってしまった黒いカバンがwho are the hero内であそこまで活躍することになると思わなかったな。

 

 火星に向かった少年に襲い掛かる騒動を描いた1部の内容はまさに異能力バトルロワイヤルでした。人を捕食する黒いカバンを持ち歩く謎の男、影沼隼人。なんと彼のカバンの中には大量のクモが出てくる。そして、そのクモに噛まれると火星の住民たちは次々と怪物へと姿を変えた。

 

 クモと言えば、何かと言えばスパイダーマンだ。中学の時、ちょうどスパイダーマン1が金曜ロードショーで流れていた。

 

 怪物に変わった人々は貧富の差、互いの利権、内に秘めた欲望を爆発させて、次々と暴走していく。その中で、影沼隼人のそばにいた黒いカバンも強くなるために火星で奇形で生まれた天才児、善導寺新を捕食し、彼にそそのかされるがままにほかの無機物生命体も捕食しはじめる。

 

 このあたりの展開はかなり間を開けて高校の時に書き始めていた。火星年代記を読んでいたのを覚えている。仮面ライダーoooもはじまっていたな。

 

 少年も同じく怪物としての力を会得する。その力は空気でできた龍を吐き出し、使役させる力。その名はエアーマン。

 

 もちろん、元ネタはニコニコ動画で有名なエアーマンが倒せないのエアーマンだ。後、伊坂幸太郎の漫画版、『魔王』に出てくる悪役の特殊能力の影響もある。

 

 このように話の中にちょいちょいなにかしらのメディアをそのまま流用したようなものを寄せ集めて作られている。あの頃は他人の作品をパクりながら書いているそんな自分に嫌気がさしていた。だからこそ、作品の途中で九条剣という火星で働く技術者が現れる。

 

 彼の特技は物の分解とコピー。一度見て触れた物ならなんでも分解するし、そのへんの部品を使って一度触れたものと同じものをつくることができる。英雄願望が強く、自分には才能があって、もっとその才能を認めるべきだと考えている。クモに噛まれたことで鋼鉄でできた小鳥のような姿に変わった。完全に小説を書いている自分が感情移入するためのキャラなんだな。

 

 そんな彼は自分が英雄になるために少年とチャック・ザ・ジッパーにも襲い掛かったりしている。火星の重力装置に細工して、火星を揺るがす事件を起こそうともした。そんな彼の鼻っ柱が物語の終盤でおられることになる。それが思念生命体だ。

 

 彼らは少年たちと影沼隼人との戦いが終わると思ったその直前に現れる。なんと彼らは宇宙人でずっと人類の頭の中に取り憑いて人類の技術の発展に貢献してきたそうだ。影沼隼人もその技術の発展をのばすための脅威をつくるために操られていたのだ。

 

 ちなみに最近の作品でもこれのR-18版を出していたりする。

 

 彼らは人類の殲滅をはじめる。これまで伸ばしてきた技術を自分たちだけのものにするためにだ。彼らはそれを技術を貸してきた見返りだと言っている。

 

 しかも、彼らの見た目は完全に○ッキー、○面ライダー、○トラマンなんですね。つまり彼らの技術を貸した分を徴収するってのは著作権のわけなんだな。

 

 そんな彼らの一人、○面ライダーの姿をした思念生命体。ミスターマスクは九条剣を踏みつぶしてこう言う。お前のような才能、世界にいくらでもいる。実際その通りで、彼の触れたものを分解して、さらに同じ物を組み立てる能力を当たり前にもつ新人類ってキャラもちょいちょい出てきてるんですよね。

 

 そんな感じでさ。話したらキリがないくらい。この作品には中学の時の自分ってのがたくさん詰まっている。だから今でもすきだったりするんだよな。また、続きかきたいな。

 

www.pixiv.net

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨うについて

さて、今回紹介する作品は『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』です。

 

あらすじ

交通事故に巻き込まれた「俺」は、目が覚めると見知らぬ湖の前に立っていた。
体は動かず、声も出せず、訳もわからぬ状況に混乱し叫び出すと予想だにしない言葉が――!?
「あたりがでたら もういっぽん」
ど、どうやら俺は自動販売機になってしまったらしい……!
選択出来る行動は自動販売機の機能"のみ"。自力で動くこともできず、会話もまともにできない
状況で異世界のダンジョンを生き抜く事は出来るのか!?
小説投稿サイト「小説家になろう」で話題沸騰!
ダンジョンの奥深くで出会った少女と自販機を描く、新感覚迷宮ファンタジー開幕!!

 

昨日、剣が転生した作品を紹介しましたが。次は自動販売機です。石、ブラックバス、盾、剣といろんな異世界転生がありましたが、まさかの自動販売機ですよ。どうやって戦うんだよって話じゃないんですが。これがおもしろいんですよ。

 

自動販売機の主人公は、もちろん自販機の中にある商品を異世界で売るんですけどね。売るときに自分の身体にいれてもらったお金はそのまま自分のポイントになるんです。いわゆるスキルポイントって奴ですね。そのポイントを使って自分のスキルをふやしたり、商品のラインナップを変えたりできるんですよ。

 

このふやせるスキルを使ってですね。敵と戦うスキルチートものおでもあるんですけどね。それだけじゃないんですよ。

 

この自販機ですね。ドリンク以外の自販機にもなれるんですよ。

 

たとえば、カップラーメンだったり、からあげとかの食べ物だったり、温泉の自動販売機とか。

 

それで新しい自動販売機にフォルムチェンジするたびに自動販売機の豆知識が語られている。ここスゴイですよ。個人的にはヒロインの絵もいいけど。作中に登場する自販機の挿絵とかもつけてほしいと思ったくらい。作品の魅力になってんですね。

 

あとですね。

 

食べ物系自販機のネタのおかげでグルメの要素も入っている大きいですね。しかも、自販機だからわりかし探せば見つかるし、安い。僕、これを初めて読んだとき、その日のうちにスーパー銭湯のとこの自販機まで行って唐揚げ買っちゃいましたからね。

 

もちろん、ヒロインのラッミスも可愛い。元気いっぱいで、純真な感じがいいですね。主人公を慕っているとこも、自販機が相手だから見てほほえましいし。

 

豆知識をこまめに入れて、グルメ要素もはいっている、ヒロインも可愛いいとなろうでヒットさせる要素を詰め込みつつも自動販売機という新しい要素をいれているとこもいい。ぶっちゃけ一番アニメ化してほしい作品です。

 

続刊もどんどん出てほしい。ぜひ読んでください。

 

転生したら剣でしたについて

 本屋のネット小説のコーナーを覗いたら、メインとして大きくソードアートオンラインと魔法科高校の劣等生が積まれてました。この二作品は三年前からずっと人気ですね。

 

 どちらも学生が俺TUEEをする作品ですね。あと、妹がいる。主人公には隠された圧倒的な才能が……あげようと思えばキリがないんですが。一番は世界観ですかね。読者が想像を共有できるくらい念密につくられた世界。

 

 最近、流行ってるけものフレンズ。マッドマックス。ズートピア。どれも僕らが行ってみたい。生きてみたいとおもいをはせてしまいそうな非現実がある。

 

 このすばを見る限り、異世界転生は3年前から流行ってるって話はしましたが。きっと僕らはここではないどこかにずっと行きたいとおもってるんでしょうね。

 

さて、今回紹介する作品はこちら、『転生したら剣でした』。

 

あらすじ

気がつくと異世界に転生していた。普通の人間としてではなく、剣として。
さらに周りを見渡せば、魔物が闊歩する危険な草原地帯。身の危険を感じた主人公は自分の体を浮かせる能力を駆使して魔物を狩っていく。
そんな折、休憩として地面に刺さった瞬間、能力が発動しなくなり動かなくなってしまう。
途方に暮れる主人公の前に、奴隷姿の猫耳少女が突如として現れるのだが……。

 

 またしても異世界転生ものです。しかも今回は剣。無機物転生ってのもジャンルとしてあるんですよ。剣だけでなく、畑、石、温泉なんかもあるんですよ。

 

 この作品の要はなんといっても、スキル吸収ですね。主人公の剣はなんと倒した魔物のスキルを吸収して自分のものにすることができます。いわゆるスキルチートですね。スキルチートの魅力は蜘蛛ですがやああ勇者でも語ったんですが。ここでの面白さは。倒すのに苦労したあいつの力が俺のものっていう達成感ですね。強敵が現れれば現れるほど、その後、主人公がその能力をどう使うのか。どう強くなるのか、それがワクワクするんですよね。

 

 それにさ、剣の装備者として出てくる。獣人のネコミミの少女、フランが可愛いの。無表情ロリで食いしん坊。彼女の目標は進化すること。なんでも、この世界の獣人は進化するらしいんですよ。でっ、彼女は黒猫族って種族らしいんですけどね。この種族で進化した者はだれもいない。だから彼女は黒猫族ではじめて進化した者になるのが目標らしいんですよ。

 

 これキャラづけがいいんですよね。復讐とか。金持ちになるじゃなくて。進化っていう、いわゆる自身の成長が目的になってるてのが。これにより、彼女は剣である主人公をただ使うだけでなく、主人公を師匠と呼んで彼に頼りすぎずに努力する。それが健気で保護欲を駆り立てるんですよ。

 

応援したくなるキャラなんですね。

 

そんな彼女を剣としての立場で見守る。スキルチートでありながら、少女の成長譚になってるんですよね。

 

続きをこれからも読みたいです。

 

 

 

 

算数で読み解く異世界魔法について

 

 さて、今日紹介するのはこちら、『算数で読み解く異世界魔法』

 

あらすじ

落ちこぼれフリーターのタカハが転生したのは魔法の詠唱に数字を用いる世界だった! 彼は転生特典『対訳』の力で全ての魔法言語を瞬時に理解し、持ち前の数学知識を駆使した大魔法使いを目指す。
──が、まさかの大問題は転生先の家族にあった!
頑固な父親、のんびり屋の姉と築く生活は、喧嘩ばかりで修行もままならない。
おまけに、タカハの前には前世からの因縁を持った宿敵まで出現。異世界では最強の魔法使いとして成り上がるはずだったのに……。

家族の絆と自身の誇りを胸に、今、タカハのかつてない戦いが始まる!
完璧な計算を越えた想いが絆を繋ぐスイートホーム・ファンタジー!

 

 算数で読み解くってタイトルがいいですよね。なんだこれ?っておもうじゃないですか。でっ、この設定が面白いんですよ。この世界では、17よりさきの数が言語として存在しないらしい。なぜなら、魔法を発動させるための限界が17までだから。

 たとえばですね、作中の呪文ってのがこの呪文自体は12マナ、この操作を命令したらプラス1マナ、合計で対価として10マナ使いますって意味でそれが算数なんですよ。

 で文章にするとこうなる。

 

「水--十二の法--一つーー今--眼前に ゆえに対価は10」

 

 魔法の発想としては目新しいし、ほかの魔法ものと比べて呪文のつくり方が理にかなっているんですよね。しかもかっこいい。

 しかも、この縛りがあるから主人公の成長や戦い方がなんでもアリってかんじにならず。ほんとに努力をしたうえで得た勝利って感じで読めるのがいいですね。

 

 俺がすごいと思うのが、この話読んでてちょっとストレスがかかるんですよ。このストレスってのがですね。主人公にむかついてイライラするとか。そういう悪い意味じゃないんですよ。この物語が最終的に爽快感のある展開に持っていくために、ラストの開放を印象付けるための序盤の抑圧の描き方が上手いんです。

 

 主人公は両親に恵まれていないフリーターで、周囲の人間を数字で当てはめて評価する。そんな彼がある日、自分がずっと欲していた大きな才能を手に入れて転生する。だけど、転生したんだけども。師匠からは9歳まで魔法の修行を禁止されている。しかも主人公もいい感じに性格が悪くてですね。ヒロインにも冷たく接している。

 

 見てて、イライラするんですよ。するんですけど、この作品の端々にある世界観ってのがしっかりつくりこまれているのがわかるからですね。これが後々の主人公の成長によって得られるカタルシスの前フリだってのがわかるんですよ。

 

 理不尽なこといくつも起きるんですけど。その理不尽なできことの中で主人公が気づくのが。才能よりもそれを伸ばすための努力が大事で。転生前に自分がもっていなかった大事な家族というのがじつは自分の周りにいるってのが主人公が気づいていき、成長していき、最終的にライバルとの戦いで開放するカタルシスってのが面白いんですよね。

 

 続きが読みたい作品です。

 

ncode.syosetu.com

 

 

ジャパリパークはユートピアか? けものフレンズについて

朝、ふとスマホを見る。

すると、みなが口々に言うのであった。

「すごーい」「たのしー」

みながみな、同じような言葉を使い出す。何事かと思うと。彼らはこちらを向いて、こういうのであった。

 

 

www.nicovideo.jp

 

「そっか、キミはまだけものフレンズをみていないフレンズなんだね」

 ちょっとしたホラーですよ。だがこれは現実にあることである。

さて、僕もついこの前にけものフレンズをみましたよ。

すごいアニメですよね。ある人はこれは重厚なSFだと語り、ある人はたのしー!とすごーい!しか言えなくなる。

 ぶっちゃけ、僕もこれを見てから数日間はけものフレンズのことしか考えられなくなってですね。ブログがかけるような状態じゃなかったですよ。今回はみんなのすごーい、たのしーなところを共有した上で、俺なりにこの世界のこういうとこがうらやましいよなって話をします。

 

けものフレンズってなに?

とつじょあらわれたサンドスターによって、動物たちは次々とフレンズという人間の女の子に姿を変え、大昔に人間が作っていた複合施設ジャパリパークでにぎやかに暮らしていた。そのジャパリパークのサバンナ地方でかりごっこを楽しむサーバルちゃんはある日、一人の少年と出会う。彼は記憶を失っていた。そのため、サーバルちゃんは彼をかばんちゃんと名づけ、彼が何のフレンズかを調べるために図書館にむかって旅立つのであった。

 

基本、自分が誰かわからない。たぶん人間であるであろうかばんちゃんが自分が何者なのかを知るためにジャパリパークにある図書館を目指すって話です。でっ、その途中でたくさんのフレンズに出会うっと。

 

この作品の魅力は1話見ただけじゃわからない。というか、あまりにも作風が挑戦的過ぎて、楽しみ方がさいしょはわからないんですよ。でも、なぜか最後まで見れちゃって、2話目だと作品内の不穏さに興味が引かれ、3話目でキャラの可愛さにやられ、4話目で作品を楽しむための頭のピントが合うんだけどさ。合わせすぎると、頭がおかしくなるんですよ。

 

表向きの作風がNHKの教育番組。最初は女の子にケモノの耳が乗っかってるだけに見えるんですけどね。人間と比べると、サーバルちゃんは走ったら息が整うまで時間がかかるとか。アルパカちゃんは不機嫌になるとツバを吐くとか。ちゃんと動物の細かいしぐさを擬人化に反映させてるんですね。

 

なさけないはなしだけどさ。俺、人間が動物に比べると持久力があって、長い距離を走れるってはじめて知ったよ。しかも、そういうのわざわざ説明しないんですよね。

 

で、教育テレビ風でありながらも世界観はかなりブラック。ジャパリパークってのがいったいどういうとこだったのかって説明はいまんとこないんだけどさ。みててわかるのが、むかしに人類が作ったであろう施設で。今はもうかばんちゃん以外の人類がジャパリパークにいなさそう。で、セルリアンという生命体がいて、フレンズを食うらしい。寂れた施設に女の子がキャッキャッと楽しそうにしてるとこ見ると、ちょっと悲しくなりますね。

 

そして、サーバルちゃんが可愛い。好奇心が旺盛で、どんなことにも前向きに取り組む。人の欠点には「キミは○○が苦手なフレンズだね」といって、その人、動物それぞれの長所に目を向け素直に「すごーい」と褒める。

 

今、TLでさ僕の知り合いもみんなけものフレンズに感化されているんだけどさ。そういうとこなんだよな。

 

僕らはさ、生まれてすぐ幼稚園に入って、小学校に入学してさ。そこでやることといったらさ。勉強がどれだけできるか。スポーツがどれだけできるか、容姿は整ってるかのこの三つだけを比べられて。それでクラスの立ち位置が決まって。それが人生のすべてだと悟った気でいたまま。大学に来て、社会に出てしまう。

 

これが学生時代ののろいってヤツでさ。これのせいでダメになっちゃうマジメな子ってのがさ。僕らの中にいると思うんだよね。

 

そんな呪いをかけられた僕らの心の傷にけものフレンズは染みこむんだよな。かばんちゃんはさ、記憶喪失だからさ、自分は人間じゃなく、なにかしらの動物のフレンズだとおもってるからさ。崖も上れないし、空も飛べない自分はダメな動物なんだっておもっちゃうんだよ。見てる俺らはそんなことないって言いたいんだけどさ。動物が擬人化している世界ではさ言葉を使えることも二足歩行できることもたいした意味がないからさ、たしかに特技がないように見えちゃうんだよ。でも、そんな彼にさ。キミは長い距離を歩いてもすぐ息が整うんだね。スゴーイ! ってさ。俺らが普段気にしないような人類の長所にすぐ気づいちゃうんだよね。でさ、いろんなフレンズが出るんだけどさ。2話や5話ではさ。かばんちゃんの考えをもとにみんながそれぞれの長所を生かしてさ橋を作ったり、家を作ったりするんだよね。それがほんとにほっこりするんだよね。

 

そんな中で俺が見ててスゴイなぁっておもうのがさ。ジャパリパーク全体にあるお互いを助け合う社会があるとこなんだよな。

 

2話でさ。ジャガーが出てくるんだけどさ。そいつなにしてるかってぇとさ。川の中でさいかだみたいなのを引っ張っててさ。なにしているかというとさ。橋がなくなって困っているみんなのためにさ、川をわたれないフレンズを運んであげてんだよね。4話見た限りではさ。フレンズには貨幣の概念がないんだよね。3話でも、カフェをやっているアルパカでるけどさ。ここに休憩所があったらいいかもなっていう優しい気持ちがあってさ。どうやらジャパリパーク内の福祉ってのがフレンズたちの趣味の延長線上、善意みたいのでできているってとこがいいよね。

 

でっ、これがさ。そういうキャラだから作風だからだけじゃなくてさ。そういう子たちが出てくるための社会の仕組みがあるからだとおもうんだよ。

 

たとえばさ、ジャパリマンってのがあるんだけどさ。フレンズたちはその饅頭を食料源にしているからさ。肉食と草食との捕食関係がないんだよ。んでさ、みんなが当たり前にそれを食べているということはさ。どうやら、ジャパリパーク内ではだれもが一定量のジャパリマンが手に入れられるらしい。

 

これさ、ベーシックインカムになってんじゃないかな。

 

 ベーシックインカムってのさ。ホリエモンさんや岡田斗司夫さんなどの文化人の方が提唱している社会保障の考え方なんだけどさ。保険や学校などのあらゆる社会保障をいったんゼロにする代わりに、一人ひとりが生きるための最低限度の金額を払うって考えたらしいんだよ。

 

 サーバルちゃんのさ。苦手なとこよりも得意なとこを見つけようって姿勢とかさ。アルパカちゃんやジャガーちゃんのみんなが喜ぶことをしたいって考えはさ。生きるための食がさ。ある程度全体にいきわたっていて余裕がある状態だからこそできているじゃないかとおもうんだよ。

 

3話でさ。アルパカちゃんは図書館で紅茶の入れ方を勉強したって言ってんだけどさ。これってさ、いわゆるネットがあればなんでも勉強できるって状態なんだとおもうんだよ。もちろん、偽の情報が多くて、今は難しいんだけどさ。グーグルとかがさ。人工知能のディープラーニングってのを発達させて、目的の情報にたどり着くための整合性、あるいは正答率? ってのを挙げようとしてるしさ。いつか頭がいい人はネットだけで勉強できるってのはありえない話じゃない。

 

安定した食料があって、誰もが学べる機会と権利がある。この状態で作られている相互の助け合いの社会。これいわゆる評価経済社会なんですよね。

 

評価経済社会ってのは、貨幣よりも周囲の評価が生きるうえで必要になるから。その評価を中心に形成されるであろう新しい社会のことで、ガイナックスの元社長さんの岡田斗司夫さんがそのことで本を出しています。

 

彼女たちのやさしさの根幹ってのがさ。動物だからってのもあるだろうけどさ。無駄なものがなくなった中で、人類の残したデータベースと大量に手に入る食料ってのも起因しているとおもうんだよな。

 

 

異世界居酒屋「のぶ」について

 

さて、第15回目ネット小説レビュー。今回紹介する作品はこちら、異世界居酒屋「のぶ」。

 

あらすじ

古都アイテーリアの裏路地に、一風変わった店があるという。
若い衛兵ハンスは同僚のニコラウスに連れられてその店──居酒屋「のぶ」を訪れる。
木の引き戸を開けた先にいるのはノブ・タイショーと呼ばれる主人と、給仕のシノブという女性。
こぢんまりとした店内は、不思議な異国の情緒を漂わせており、見たことも聞いたこともない料理を出してくる。
そして、キンキンに冷えたエール──「トリアエズナマ」がとんでもなくうまい!
噂は広が り、次々に客が訪れるようになるが、中には込み入った事情を持つ者もいて……。
これは、異世界に繋がった居酒屋「のぶ」で巻き起こる、小さな物語。

 

最近、異世界プラスグルメって作品は結構あるんですけど。まずはここからはじまった。だからこそ、他を紹介する前にこれを紹介すべきですよね。

 

二人の衛兵が最近流行ってる店があるらしいって言って、居酒屋のぶを訪れるとこからはじまるんですけど。この時点ですごいんですよね。異世界転生、あるいは転移って、転移した側の視点で物語を始める場合が多いんですけど。この作品は、異世界の人の視点で現実の世界に料理を語ってる。しかもその語り口もうまいんですよ。

 

 たとえばこれ。

 

(引用「牛すじ煮込み」)

 「煮込んでいるのは、牛の腱と……なんですか?」
「こんにゃくです」
「コンニャク……?」

 また聞いたことのない名前が出てきた。
 帝国と東王国、それに北方三領邦の料理にはかなり精通しているという自信があったが、そのどれにも思い当たる食材がない。
 柔らかそうな見た目は何かの内臓という風にも思える。

 

 内臓は鮮度を維持することが難しいのであまり流通しないから、その地方地方で独自の呼び方が定着していることが多い。見知った部位でも、思わぬ名前で呼ばれていれば、分からないこともある。
 牛の腱や内臓を使う、これも貧窮から生まれた料理なのだろうか。

 

 ぼくらが何気なく、食べているこんにゃく。それをぼくらの料理を知らない。中世の文化に似た異世界の住民の視点だとこうなんだよってのがうまく書かれているんですよね。

 

 この作品では居酒屋だからビールのことを異世界の住民のみんなはトリアエズナマって名前で認識してて。最初はこんなエール飲んだことないって言ってたんですけど。あとあと、じつはこれは流通を禁止されたラガーなんじゃないかって話になってですね。ぼくこれ読んではじめてビールにはエールとラガーがあるってこと知りました。

 

 こんな感じでですね。この作品って。食だったり、いろんな国の風土だったり、文化だったりに対する作者の知識量が半端ないんですよね。

 

 だから、僕らの世界にもありそうな居酒屋に異世界の人がやってきたってのがリアルに感じる。

 

 じつはさ、この作品。帯で孤独のグルメの作者さんがグルメにこんな表現があるとはって言ってたんですけどね。たしかにこの発想は凄いと思うんですよ。孤独のグルメは吾郎ってキャラがネットでネタ扱いされているから誤解されがちなんですけど。あの作品の魅力は男が一人で飯屋に入ったときの心情の変化だったり、しぐさのひとつひとつがなんかわかるっていう。リアルな感じが魅力なんですよ。で、のぶは異世界人でこのありそう感を出している。そこがすごいんですよね。

 

 これによってどうなるかっていうと。僕らがふだん食べている料理に付加価値がつくんですよね。何気なく、食べている料理がいつもよりおいしく感じるんですよ。

 

 ほら、テレビである料理屋さんが特集されたとして。次の日にそこに行ったら絶対混んでんじゃないですか。あれって、味がおいしい。店の雰囲気ってのもあるんですけどね。テレビで紹介された○○を食べているっていう付加価値も料理の満足感に入っているんですよね。

 

 そういう付加価値が普段家でも食べれるナポリタンやおでんにも付加される。そこが魅力なんですよね。

 

 普段見ているものが何かべつのファクターを通すことで特別なものに変わる。そういうの異化って呼ぶらしいですよ。

 

 こういう身近なものを別の世界観の人の視点で異化させる作品といえば、テルマエロマエがありますよね。

 

 テルマエロマエ、ローマのお風呂技師が日本の現代の銭湯にタイムスリップし、日本の銭湯事情。ひいては日本の文化全体を古代のローマ人が褒める漫画です。

 

 このテルマエロマエの異化と孤独のグルメのありそう感の両方がこの作品にはある。だから面白いんですよ。

 

 もしネット小説を食わず嫌いしている人がいるならばこの作品だけは読んでほしいですね。食べるという行為はだれもが共感できるし、普段の日常や文化をべつの世界の人に褒められるってのは気分がいいですよ。これを読んだ後と前とで生きるのの楽しさが大なり小なり変わる。万人受けする作品なんですよ。

 

WEB版

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蜘蛛ですが、なにか?

 今回はネタバレが多めです。

 

 さて、ネット小説レビュー、第14回目の作品はこちら。蜘蛛ですが、なにか?

 

 あらすじ

 女子高生だったはずの「私」は目覚めると……なんと「蜘蛛」に転生していた! 周囲は毒ガエルや猿の化け物、果ては龍まで……って、コレもう詰んでない!? 種族底辺・メンタル最強女子の、迷宮サバイバル開幕!

 

面白いですよ。最初に目覚めたときは卵から産まれて。自分を生んだ母親や兄弟にも殺されかけるってくらいハードな世界。しかもダンジョンの中での転生なんですよね。今までは、ある程度話の流れやオチが予測できるように描かれていたんですけど。この作品はどうなるかの先は読めず、ハラハラする展開が多めになっています。

 

この話は主人公のクモを中心にして考えるといわゆるスキルチート。レベルや特殊な行動、修行をすることで各種の技能を向上させていくことで強くなっていく話です。ただレベルを上げるだけでなく、レベルを上げていくことで得たスキルをどう使っていくかで話を盛り上げていくんですね。

 

この主人公が一度ダンジョンの最深部に落ちてしまい、そこからダンジョンの外に出るためにスキルを得て、レベルを上げ、最強のモンスターになっていく過程を描きながら、じつはもう一つの話を並行して書いている。

 

その話が転生前に同じ教室にいた生徒の一人をもう一人の主人公にした十年後の異世界の話。じつはこれ、教室にいる生徒、先生が全員なんらかの理由で一度死んで転生してしまったクラス転移ものなんですね。クラス転移もの。文字通り、そのクラス全部が異世界に転生する話です。漂流教室の異世界版だって考えればイメージしやすいと思います。

 

 その話での主人公は人間の姿で生まれたため、まともにレベルを上げてモンスターと戦うのが十年後になっちゃったんですね。

 

 モンスター転生で、スキルチートで、読み進めるとじつはクラス転移で、並行して王道な俺TUEE転生ものもやる。こんなに詰めておもしろくないわけないじゃん。 

 

 これのいいとこがさ。この10年後の話を読むと。10年前からスキルチートで成長しているクモがいったい教室にいただれで。10年後、何をしているのかがめっちゃきになってくるんですよ。

 

 つまり、ミステリーもはいってんですね。

 

 前、3巻が出たころかな。デュラララの作者も絶賛って書いてあったんですけどね。そうなんですよ、あの作品面白かったら。この作品も面白いんですよ。

 

 そういった面白さがあるうえで、作品内で一貫したテーマが。わたしってなんだろう?ってことなんですよね。

 

 たとえば、クラス転移した中にですね。もう一人の主人公の同級生で、元は男なのに女性に転生しちゃったキャラがいるんですけどね。彼は女性の身体で生きているうちに男のもう一人の主人公に恋しちゃうんですよ。でも、それを転生前の男としての心が許せない。結果、彼女のなかで葛藤が生まれるも、ある瞬間を境に転生前の男は俺は今ここで死ぬんだって言っててですね。そこからは彼女はもう一人の主人公が大好きな女の子になっちゃうんですよね。

 

 これはTSものではよくあるんですけどね。こういうふうにスキルを得るのに夢中になって暴走したり。名誉や全能感によって、残忍なことをしたり。この話ではですね。スキルを得るという行為だったり、スキル自体の特性だったり、地位だったり、身体的な特徴によって、クラス転移した仲間たちの心というのが変質してしまう場面を意識的に書いている。それによって、私という個人はどこからできるのか。私ってなんなのかってのを読者に突き付けているんですよね。

 

 そんななか、教室の中の誰なのか。十年後の彼女の目的はなんなのか。そのへんのことを一切明かさずに淡々とスキルチートで強くなっていく彼女のメンタルだけはまったくブレずに「蜘蛛ですが、なにか?」なんですよね。

 

 ネット小説の中では一番好きかもしんないからさ。ぜひ読んでほしい。

 

WEBで無料で読むならこちら!

小説家になろう

蜘蛛ですが、なにか?

 

WEB漫画

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CICADA 1話をネタバレ全開で語ってみる

 さて、ネット小説はいったんおやすみして、今日はシカーダについて語ります。

 

 もうすぐ、単行本も発売するし、岡田斗司夫さんが今度のニコ生で1ページずつ解説するそうですからね。その前に俺が1話だけでもやっちゃいます。

 

 シカーダとは、漫画家山田玲司先生の最新作です。代表作は冴えないオタクが姉の大改造によりイケメン男になって好きなヒロインを口説く漫画、Bバージン。あと、ゲイのビジュアル系バンドの男の子が好きな男のために風水を使ったボールを投げる野球漫画、アガペーズ。伝説のジゴロを父に持つNGな純情男子が憧れの彼女を口説くために父が遺したジゴロの神髄を書いた本、アムリタ経典をもとにすべての女性を救う男NGになる漫画NG。などを描いています。

 

 どれもちょっと聞いただけでおもしろそうでしょ。じっさい、おもしろいんですよ。今、あげた作品の共通するところはですね。ぜんぶ童貞の男の子が頑張る話なんですよね。僕が玲司先生の漫画で好きなとこはですね。女性に傷ついた男性のメンタルみたいなものが漫画の中に入っているってとこなんですよ。

 

 そして、このシカーダの1話もですね。童貞のモテない男の心をつかむような作品に仕上がっているんですよ。

 

 前回もちょっとだけ語ったんですが、今回は1話、ぜんぶ最後まで話します。

 ネタバレはノーセンキューって方は公式のホームページで1話が公開されているから読んでみてください。

 

 

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『だから俺は貧乏ですぐ折れる、クズ野郎なんだよっ!!』

 

 ってさ、一人の男が叫ぶんだよね。涙目でさ。んで、左上のあたりに煽り文。

 

『結局 僕らの時代は真っ暗で、』

 

 このコマだけでさ。ウルっとくるんだよ。コイツだれだかまだわかってないのにさ。きらいになれないってとこまできちゃってんだよな。俺の中のきらいになれないってそうとうなとこだぞ。なにかしらのイベントがなきゃそこまで好感度あがんないんだよ。でもさ、このコマのさ。このセリフがさ。弱気になったり、自嘲気味で言ってんじゃなくさ。ホントにいろんなことがあってさ。ボロボロになった上のさ。魂の叫びだってわかるからさ。ページ開いた瞬間にこの子の叫びが聞こえた気がしたよ。

 

 でっ、次のコマだよ。

 

『でもプライドだけはでかすぎるし

 なんの取り柄もないし、

 君にふさわしい男なんかじゃないし……』

 

 ここでさっきの煽り文のつづきだよ。

 

『きっとくだらない大人になって、

 適当に死んでゆく。

 それでも、

 アキらめない――』

 

 車が描かれててさ。飛んでるから未来やなってわかるやん。何かから逃げてんだなってこともわかるよね。主人公も顔も映ってないし、小さいからさ。さっきの元気はどうしたかってくらい自信ないんだろうなあ、それで取り繕うように早口でしゃべってんだろうなあって思うよね。

 あと、煽り文読んでさ。わかるわってついおもっちゃいました。じつはこの文章、続きがある。そのために長い棒をいれてるってことに、この時の僕は気づかなかったなあ。

 

『ねぇ、レム……

 それって……』

 

 アップにすると車に乗っている主人公が映っててさ。ふきだしがその隣に伸びてて。おもわずその吹き出しの先をみようとしたらさ。次のコマに女の子の横顔があって。ああ、この子がしゃべってんだなって思うじゃん。ここ、ちょっとこわいんだよね。

 

『「それでも好き」って……

 言って欲しいの……』

 

 んで、次のコマで主人公の見開かれた目のアップ。しっかり涙も描いてありますよね。俺、ドキッとしましたよ。twitterで自虐ツィートしているときの俺がフラッシュバックしてさ。心臓つかまれたような気持になりましたよ。

 

 そのハラハラ気持ちのまま、不安な気持ちのまま次のページめくるんだよ。

 この後、スッゲェェェぞ。

 

 まだ読んでないやつは大きめに大きめに余白つくるから読めよ‼ 

 いいから読めよ‼!!

 

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 見開きで一言。でっかいコマで一言。

 ここでようやく女の子の顔がアップででるんだよね。

 さっきは表情みえなかったのにさ。

 

 笑顔なんだよ。しかも満面な笑みじゃなくてさ。死ぬ間際にそばにいる人の手を取ってさ。わたし幸せだったわとか言いそうな笑顔っ!

 

『全部好きよ』

 

 しかも下のところにさ。煽り文が言うんだよ。

『――キミがいる。』ってキミがいるってさ!

 ウルっときますよ。

 

 んで、その次のコマでさ。

 歯ァ食いしばってさ。

 

『だめだ。』

 

 ああダメだよ! 女の子にこんなこと言わせちゃうお前がまずダメだし。今にもこの女死にそうだぞ! どうすんだよオイ!

 

 でっ、「いたぞシカーダだ」って言って追いかけている人がいて。「くっ、くそ!」と言って逃げる主人公。最後のコマで「逝くな、ロルカ――」って言いかけるんだけどさ。バシュってさ。やけに軽い音なんだけどさ。男の乗っている車が打たれるんだよね。

 

 なんでここだけたんたんと語りだすかというと。ここで原作山田玲司、作画バナーイの文字が目に入るから。

 

 その次のページにようやく表紙。シカーダとでっかいタイトル。スカイツリーみたいな建物があって、そこにドンっとちいさなピンク色の爆発。あっ、打たれて爆発したんやなって思うと同時にそういやこれ漫画だよなと冷静になる俺。

 

 そっか、玲司先生が話つくって、このバナーイくんが絵を描くのか。けっこうウマイやん、とこの時は上から目線で考える俺。

 だいたいこのあたりでホットになって感情的に作品を楽しむ俺の心のとなりにさ。冷静になってクールに自分の中の現実を語りだす俺が出てくるんだよな。

 

 やっぱ玲司先生ウマいわ。煽り文の構成とかって編集さんが考えたのかな。あやうく心持ってかれるとこだったわ。まあ、といったってこんな都合のいい女いねーしな。

 

 後でこのクールな俺、スゲェ恥ずかしい思いをすることになるんだよな。

 

 爆発したよ。どうなったんだろうと思ったら。『ロルカ!!』って地面で横になっている彼女に叫ぶ男。よかった生きてたんだね、と僕もほっと一息ですよ。

 んで、コマの中の主人公の独白。

 

『俺はずっと…

 聞きたかったんだ…』

『どうして君は

 俺みたいな

 男を……』

『こんな……

 何もない…』

 

 点の連続がさ。3点ダッシュっていうんだっけ。ウマいよね。自信なさげな感じが伝わる。

 んで、もう一回。『こんな……』って言ってさ。次のページ。

 

 日本列島全体のコマ。今見てみて気づいたんだけど。ところどころ細いね。温暖化でちょっとちっちゃくなっているのかな。1年前って書いてあってさ。ああ、回想はいるんだな、そうだと思ってたよ、と思って左下のコマをみて、あれっ?ってつい思ってしまいました。さっきの男とは違う小太りの男が映ってんだよね。

 さかのぼると寂れた商店街、ごみを片づけているのかな。なにしとんのかな。その小太りの男はボロボロの恰好で何か遠くのものをみている。

 

 次のページを見ると小太りの男はもう一人の男と対面して。なにか紙袋を渡してんですよね。セリフないんですよね。『スッ……』と紙袋を男が見せるとゴクリ……とのどを鳴らす男。中身のことを考えるとさ。今見るとちょっとかわいいシーンなんだよね。

 

 受け取って、だっと小走りで走る男。すると、男は別の男に初老のダンディな男に呼び止められるんですよな。「おい。」ってさ。

 

 ここまで読んでもまだわかんないんですよね。この男だれなのか。さっきの二人はどうなったんだよって思っちゃう。でも、緊迫したシーンだってことは伝わる。最初さ、男は麻薬でも持ってんじゃないかっておもってたよ。

 

 初老の男は、小太りの男を疑っているのかと思いきや。たんに注意しただけなんですよね。んで、そのまま目的地に走った男は仲間と合流する。

 

「手に入ったか?」

「ああ…

 多分、

 本物だ……」

 

『ひさしぶりだ……

 すげー

 ドキドキする…』

『ドアはロックしたか?』

『ああ……

 まあ、落ち着けって……』

『早く

 見せろ‼』

 

 もうさ、中身なんなんだよって気になるし。緊迫するんだけどさ。今読むと、エロ本を友達の家で開こうとしているシーンにしか思えない。 

 

 んで、次のページをめくったらさ。でっかいコマでさ。

 オニ柄のビキニを着たさ。かわいい女の子がいるわけだよ。

 主人公がちっちゃくてさ。ヒロインでかいんだよね。V字に足をひろげているのがやわらかそ~って感じでよくてさ。今、気づいたんだけどさ。はだしかと思ってたら。ちゃんと虎柄のソックスはいてるんだね。そこがいいよ。

 

 真っ赤な顔して表紙を見る3人組。

 かわいい顔してるよなこの3人。

 

 紙の本なのに状態はいいなって言ってんだよね。

 

 んで次のページ。

 

『これが、

 150年くらい前に

 作られたなんて……』

『「マンガ」って……』

『やっぱり想像以上だ……』

 

 ここがスゴイ真面目な顔してんだよね。

 今読み返して思ったんだけどさ。そうなんだよな。俺らってマンガ読むときこうなんだよな。そりゃ最初はさ。かわいい女の子の表紙につられましたよ。はいはい、そうですとも。だけどさ、その後さ、やられちゃうんだよな。その漫画のストーリーだったり、絵だったり、セリフだったり、キャラだったりにさ。感動するんだよな。

 

 んで、これで俺たちのコレクションは10冊になったとか言っててさ。あれれ、漫画ってそんなに流通してないんだって思った次のページだよ。

 

 

 大きな銃声、驚く3人。

 

「マズい、カワセミだ」

 

 いや、カワセミってだれだよ!

 って思ってめくると、さらに次のページに渋い男が出る。

 ブツを出しなって言っててさ。たぶんマンガなんだろうなって予想つくじゃん。

 

 そう思っていると、最後のコマで「レムさん!」。

 ようやく、主人公の名が出てきたよね。

 

 ハアハアって息切らしててさ。後輩には舐められている。しかも年下らしい。で、悔しいからいいとこ見せようってさ。先に現場に入ろうとすると。

 ゴッ!と次のページでパイプに頭をぶつける主人公。

 Bバージンの頃から思ってたけどさ。コミカルな絵とシリアスな絵の組み合わせがうまいよね。しかも、一番情けないコマでさ。レムディ・マーシャル28歳ってテロップ出てんだよね。その次にジェリコ・オオザト22歳のテロップ。

 

「あんたいなくてもおなじでしょ」っと後輩に言われ、次のページではわかりやすく落ち込む。コミカルだなぁと思ったら次のコマで独白すんですよね。

 

『確かに、

 俺には

 何もないし、

 心がすぐに折れる……』

『めげずに何かに挑戦したこともない……』

『仕方ないだろ……』

 

 ってさ、コマは2つに分けてあるんだけどさ。暗い闇の中を歩いているコマなんですよね。落ち込んでいたけど立ち上がって歩き出しているはずの場面心象風景ですね。さっきの『結局僕らの時代は真っ暗で……』のくだりを思い出しますよ。

 

 んで、設定が語られる。うまいですよね。この流れ。

 どうやら、未来日本人の暮らしは表向きでは平等と言ってんだけど、じつは格差が激しい。しかも色分けされていて。主人公は一番下の階層を示す金である。

 

 1ページだからわかりやすいんですよね。

 んで、次のページで先についた中将と合流する。

 ここでさ、没収されている漫画が『最終兵器彼女』なんだよな。

 もう、さっきのうる星やつらもそうなんだけどさ。ビックリだよ。しかも当たり前だけど許可とってんだってさ。他の漫画がこんなに出るなんてびっくりだよね。

 

 漫画の所持は犯罪らしく、次のページで燃やされる。ここでようやくどんな話か分かってくるよね。

 

 んで、主人公はさっきの「うる星やつら」を手に取るんだよな。「色っぽい女だな…」ってさ。たしかに、って思ったよ。ホントさ、バナーイさんの描くラムちゃんがかわいいんだよな。これでもかってくらい。

 

 んで、背後で「触んな」って言う小太りの男。いいこと言うんだよな。

 

「あんたなんかに……

 そいつの価値はわからない。

「このマンガの中にはな……

「当たり前に空を飛ぶ少女が出てくるんだぞ。

「それに主人公のあたるって奴は、

 バカでスケベでなんの取り柄もないのに……

 

 ああ、そうだった。次のページでさ。この小太りの男、メッチャキラキラした顔で言うんだよな。

 

「どんなに女にこばまれても……

「絶対に折れないんだぜ…」

 

 主人公、次のコマでえっ、マジ・・・・・・って顔してんだよ。

 

「しかもヒロインは、そんなクズみたいな男をずっと好きでいるんだ……」

 

 主人公さ。キラキラした目でさ。ちょっとこの漫画に興味持ち始めてんだよな。

 んで、背後から近寄る影。

 バッと、漫画を奪い取る。

 

 中尉だね。中尉がさ。取った本を炎に放り投げて燃やちゃうんだよな。

 

「いくぞ、そいつをつかまえろ

「……はい

 

 の次のコマで走り出す小太りの男。その男を、ジェリコとレムは取り押さえるんだよな。その時のさ。レムの表情が悲痛なんだよね。

 

 んで、仕事終わりの帰り道に後輩と話をしながら買い物をする主人公。一番下のランクであることの悔しさだったり、なぜか今日は特別だからと猫缶を買う主人公。んで、ジェリコはマナって女と帰って行ってさ。主人公はクソウって言いながら帰ると。

 

 恋人なんていねーしと言いながら。自分の家でマシューと呼ぶ。するとそこには白い猫がいるんだよな。しかもかわいい。嫌そうな顔しているとこも可愛い。

 でさ、猫抱きしめながら言うんだよな。俺の誕生日にお前だけはいてくれよってさ。

 だけど、猫はそっぽをむいて遠くを見る。しかも猫缶食べないままどっかいっちゃってんだよな。

 

 でさ、外の寒い中でさ。言うんだよな。

 

 さみしくて死にそうだ。

 

 ってさ。胸が張り裂けそうになりましたよ。

 

 で、ここでさっきの小太りのセリフ思い出す。

 次のコマで描かれるラムちゃん。やっぱりかわいいんだよな。

 

 で、目が覚めると、中尉に起こされているレム。

 また事件があったらしく。彼は車で現場へと急行する。

 車の中で、なんで漫画を燃やすのかって話をしましたよね。

 それで言うセリフがさ。

 

「あんなガキ臭い妄想に労働意欲を奪われたのが、

 この国ががけっぷちになった理由だ」

「全国民が生産性を上げないと国は滅びる」

 

 ホントに経済が困窮している時代なんですよね。今の状態がまやかしでいつ来てもおかしくないんでしょうけどね。

 

「マンガってそんなに価値がないモノなんですか!!」

 って言ってさ。

 

 そしたら、中尉は言うんだよな。

 

「ああ……あんなモノは「クズ」だね…」

 

 経済が貧窮する理由なんてさ。漫画以外にもあるはずなのにさ。それを規制しようとする。あたまごなしにダメって言ってんだよ。かなしいねぇ。

 

 で、ここでさ。やっぱりまた小太りの男のセリフがはいるんだよね。

 

 そして漫画を持っている男の部屋に押し入り、漫画を押収する。

 

 ここでさ、中尉に襲い掛かる男がいるんだけどさ。そこがカッコいいよね。銃を向けて打ち殺すあのシーン。

 

 んで、そんななか。じつは主人公はその部屋で見つけたうる星やつらをさ。こっそり持ち帰って読んじゃうんだよね。そしてさ、うる星やつらのコマをうつしながらさ。さっきの小太りのセリフだよ。しかも、これさ。さっきまで小さくコマに映ってたあたるがさ。しっかり描いてあるんだよな。

 

「主人公の男は…

 バカで、スケベで…

 なんの取り柄もないのに…

 絶対に折れないんだ……」

 

 小太りのセリフは枠に描いてんだけどさ。

 

「そして、ヒロインは…」

 

 は白い吹き出しなんだよな。つまり主人公の独白。主人公が心の底では求めていることなんだよな。

 

「そんなダメな男…」

 

 そして次のページだよ。

 

 ここでさ、ラムちゃんが抱き着くシーンがさ。めっちゃ可愛いの。あと、じょじょにあたるくんが大きくなっているよね。ほんと、バナーイ先生、マジパネェわっ!

 

 んでさ、言うんだよな。

 

「ちっ、

 くだらねぇ……

 こんな女、どこにもいねぇし…」

 

 あれぇ、おかしいなあ? この言葉どっかで聞いたぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………さっき数ページ前に俺が心の中で思ってたことじゃねぇか!

 

 もう、恥ずかしいわ! 玲司先生、俺の心お見通しじゃねぇか! 恥ずかしすぎてさ。背中のあたりがめっちゃ熱くなったよ!

 

 

 恥ずかしいな、と思いながら読み進めるとさ。主人公さ。家に帰ろうとして歩き出すと、誰かにぶつかってさ。漫画を地面に落とすんだよね。そしてそれを拾われる主人公。

 

 女の子の目線が隠れててさ。何考えてんだろうって思うじゃん。

 その次のページでだよ。

 

「だっちゃ?」

 って言うヒロイン。

 

 ああ、お前らここで出会うのか!

 つい納得してしまう俺なんだよ。

 

 いいよな、こんな女いないってさ。今こそ俺にこんなヒロインが必要だってとこ現れるラストね。続き読みてぇよ。

 さて、1話を読んだであろうみなさん。もうすぐ単行本発売ですから、ぜひともこの後のアマゾンのリンククリックして予約購入してください。もちろん、アマゾンじゃなくてもいい。面白いとおもったらぜひともですね。お近くの書店でお取り寄せください!

 

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チートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップ。さらに獣人にしてイチャラブします

本屋には今日もたくさんのネット小説が書籍化されている。そんな中から気まぐれに手に取り、見つけた一冊聞いてください。それが、神島竜のそう、それが言いたかった。

 

 さて、第13回目ネット小説批評。今回の作品はチートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップさらに獣人にしていちゃらぶします。

 

あらすじ

「女神の私は猫好きなんです。最強設定で、猫と一緒に転生させてあげましょう」ある日飼い猫のミーシャと一緒に死んでしまった村田ケイジは、猫好きな女神の力で、チートな力を付与されて猫と一緒に転生させてもらう。ところが―。「…やっと言えた。大好きよ、ご主人様っ!」なんとチートになっていたのは猫のミーシャの方だった!?ケイジが苦戦しているモンスターを颯爽と粉砕。おまけに異世界の知識でもってご主人様を引っ張り出す。「私、人間になってご主人様といちゃいちゃしたいわ」ケイジはミーシャの力でダンジョンを楽々攻略&レベルアップ、彼女を獣人化させ、いちゃらぶライフを楽しむことに―!?

 

 

 森田季節さんの作品を紹介するのはこれで二度目ですね。森田季節さんは以前紹介したスライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになりましたを書いてます。でっ、調べてみたらいろいろ書いてらっしゃるようで。どうりで安定感があると思ったよ。

 

 タイトルからもわかる通り。主人公でなく、一緒に異世界転生した主人公の飼い猫が強くなる異世界転生物です。しかもその猫とラブコメします、と。タイトルで話の流れがわかるのはいいよね。このペットがチートってのは新鮮だし。 表紙の猫耳ヒロインがかわいかったからつい買ってしまいました。

 

 ネコちゃんがこんな可愛い美少女になるんだって期待感があるから。主人公がレベル1で苦労していてもワクワクしながら読み進められます。このペットが強いって設定もただ新鮮味があるだけじゃないんですよね。

 

 サポートとしてついてくれる猫が強くて主人公はレベル1で弱いって設定のため。読者にチートによる爽快感を味あわせつつ、主人公の成長に長めにページを割くことができるんですよ。

 

 ネコのミーシャが人間になるのって、本だと半分の手前あたりで、ここまでは主人公のレベルが弱いから2回くらい死ぬんじゃないかって、ハラハラするとこがあるんですよね。でも、ミーシャが表紙に描かれた美少女になるってのはわかってるからそれが楽しみで読めちゃう。んで、主人公が何度かダンジョンに潜ってようやくミーシャを人間にすると、そのころには主人公の株もだいぶ上がってるんだよね。

 

 最新作読んだ時も思ったけどさ。森田季節さんは努力する人を書くのがほんとに上手いんだね。この作品もさ。ただペットが強いだけじゃなくてさ。今まで一緒にいた女の子が強くて、異世界に来たら守られてばかりだから俺も強くなりたいっていう努力の過程を描いた作品になっている。そんな主人公のことはなかなか嫌いになれないよね。

 

  この森田季節さんの作品、これからもちょこちょこ読んでいきたいね。

 

 

平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです

 バカは風邪ひかないってあるじゃないですか。あれってさ、バカは身体が丈夫って意味じゃないと思うんですよ。

 

 そうじゃなくて、バカでも風邪はひいてるんだけど。それを気にせずに、体の不調に気づかず動く鈍いやつがバカだってことなんですよ。

 

 おなじように本当は傷ついているのに。その傷に鈍くなる。これをつよさと勘違いしちゃう。

 

 俺だけじゃないと思うんだよな。

 

 栄養ドリンクを飲んで乗り切るも大事だけどさ。ちゃんと泣いたり笑ったり怒ったりできてるか。時々は確認したほうがいいですよ。

 

映画とか、アニメとか、本とか読んでさ。面白いと思う。他の人とも話してみると、面白いとこが違うときもあれば同じときもある。そしたら、その面白いはなんなのか。泣けるのか笑えるのか熱いのか。なぜそう感じるのか。哲学に浸らず、イデオロギーでごまかさずに、五文字の言葉のその先を語り。最後にこう言うんだ。

 

そう、それが言いたかった、と。

 

 さて、大事な12回ネット小説レビューは久々の第一回カクヨムネット小説大賞受賞作、平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです。

 

あらすじ

ここは乙女ゲームの世界ですか?いいえ、現実です!京都に修学旅行中、突然平安時代にタイムスリップした女子高生・香子。イケメン貴族に助けられた恩返しに、中宮様へ献上する物語作りを手伝うことになった香子は、持ち前の妄想力でアイデアを出しまくる。しかし出来上がっていく話が『源氏物語』と似ていることに気がついて…?もしかして、私が“紫式部”になるの?現代×平安、時間を超えたラブファンタジー開幕!!

 

読んでみたらさ。予想以上に面白くてビックリした。最初に、わたしが紫式部になるなんてって感じのさ。宮廷でモブに言い寄られてキョドルとこからはじめてからの、タイムスリップの経緯。平安時代で王子様役と出会って、最初は険悪なんだけど、住まわせてもらう恩を返すために彼を助けていくうち紫式部になっていくと。

 

ネタバレじゃねぇかっておもうかもだけどさ。ホントに序盤で、わたしが紫式部なんてただ〇〇してただけなのに……っていろいろ説明しちゃってんだよ。

 

なのに面白い。ゴールがわかるってことはさ。二人がどうなるのかって不安がないことでさ。安心してハラハラドキドキできるんですよ。

 

君の名だってさ。目が覚めたら涙が出るのはあの時からだって回想にはいるからさ。どちらかが死ぬことはないだろうなって思ってみれるじゃん。

 

ゴールを安定させたうえでさ。丁寧に時代考証してんだよな。十二単のしくみだとか。当時は、名前を名乗ることは求婚だったとか。

 

読んでてへーって思いながらも。ちゃんと異性の距離が近すぎて嫌じゃない恥ずかしいシーンもありつつ。最後の最初のシーンに追いついた後のエンディングの流れはうまいですね。

 

 話の構成においてはカクヨム受賞作のなかでは一番うまい作品だと思うのでオススメです。

 

web版

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154922583

 

 

 

 

私、能力は平均値でって言ったよね!

ツィッターで前から知っていたひとが今度書籍化すると聞いて、本屋に言ったらその人の本がある。去年から、そんなことがたびたびある。相互フォローじゃなかったり、こっちが一方的に知ってるだけってのも。なくはないんだけどさ。

 

努力してるって知ってたひとがさ。結果出すのをみるとさ。これをみる俺はなんなんだって思うよな。

 

俺もなんかしたいって思わなくはないんですよ。

 

最近できたネット小説のコーナーの棚を覗いてふと思います。

 

さて、第11回ネット小説レビューはこの作品。私、能力は平均値でって言ったよね。

 

あらすじ

 私、アスカム子爵家長女、アデル・フォン・アスカムは、10歳になったある日、強烈な頭痛と共に全てを思い出した。
 自分が以前、栗原海里(くりはらみさと)という名の18歳の日本人であったこと、幼い少女を助けようとして命を落としたこと、そして、神様に出会ったことを……

 出来が良過ぎたために周りの期待が大きく、思うように生きることができなかった海里は、望みを尋ねる神様にこうお願いしたのであった。
『次の人生、能力は平均値でお願いします!』

 なのに、何だか話が違うよ!

 3つの名前を持つ少女、剣と魔法の世界で、うっかりS級ハンターなんかにならないように気を付けて普通に生きて行きます!
 だって、私はごく普通の、平凡な女の子なんだから!

 

 スゴイ面白いんですよ。息つく暇がないくらい最初から最後まで笑いをつめこんでいってるとこがよくってですね。

 

しかも、その笑いは最後まで主人公の「チートを持ってるんだけどそれを隠して普通の子になりたいのに天然だからバレバレな女の子」ってキャラを立てるためのエピソードをこれでもかってくらいつめていくんですよね。

 

だからさ、一巻読み終えるとさ。主人公のことが好きで好きで好きでたまらなくなってな。ついブログ書く途中だと言うのに、WEB版を覗いてさ。  一昨日更新されたばかりなのにさ。続きがよみたくてしょうがない焦燥感に駆られている。

 

主人公も魅力的なんだけどさ。主人公にふりまわされる周囲の登場人物もいいキャラしてんだよな。

 

あんまさ、コミカルな作品はネタバレしづらいから語りづらいんだけどさ。ホントに面白いんだよ。

 

あと、世界観もいいんだよ。魔法ってのが、ナノマシンで行なわれる世界ってのは目新しいなって思いました。

 

 

 

 

 

ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだについて

むかしさぁ、バトルロワイヤルって小説あったじゃないですか。

 

とつぜん、教室に集められたと思ったら、今からみなさんに殺し合いをしてもらいますって言われてさ。殺し合いをしていくってはなし。

友達同士だったり、兄弟だったり、仲悪かったり、いろんな人間関係がある中で極限の状態で戦わされるデスゲームの原点とされる話ですよ。

 

あの作品さ。映画化した後でさ。ある殺人事件が起きたときさ。少女がこんなことしたのはあの映画の影響だって言ってさ。叩かれてましたよね。まあよくあるテレビのオタク叩きっスよ。今もちょいちょいあるけど。むかしはもっと露骨でしたよね。

 

彼らの言い分ってのがさ。いわゆる子供たちってのはまだまだ何色でもない真っ白な布でさ。その布を自分たちがきれいだと思う色で塗りつぶせばさ。きれいな布になると思っていてさ。俺らのすきなものはその子供の成長の邪魔になる汚い何かだと思ってんですよね。

 

その言い分もわからなくはないんですよ。わからなくはないけどさ。それはあまりにも世界を単純に見すぎじゃないですか。

 

そもそも、教室の中でこれから殺しあえと言われたバトルロワイヤルというのがなんなのかといえばですよ。いわば、受験戦争の暗喩らしいんですよ。俺らってさ。多感な時期に、教室っていう狭い空間に閉じ込められてさ。勉強させられて。テストでほかのヤツよりいい成績をとって、ほかのヤツよりいい大学にいけってさ、そう仕向けられるような仕組みになってるじゃないですか。

 

だけど、教師は仲良くしろ。いじめはよくないって言うじゃないスっか。

 

その矛盾にさ。んなわきゃねーだろー!って大声出しちゃったあの作品だって、むかし『Bバージン』の作者の山田玲司先生がどっかで言ってましたよ。

 

ようはですよ。空気なんですよね。空気。

 

そのきれいな白い布をですよ。東京のビルの真上にでも垂らしてみてくださいよ。10年後にはめっちゃ汚れますよ。車の排気ガスで。

 

そう、排気ガスなんですよ。

 

俺らはな社会の汚れた空気を吸って生まれてきてるんですよ! こんな漫画あるから! こんな小説があるから! 映画があるから子供がヒトを殺すだ言いますがね! 逆だよ!社会やお前らのそういう空気があるから生まれてきてんですよ。俺たちゃな! みんな空気を吸って生まれてきてんだよ!

 

さて、第10回目はこの作品。『ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ』。

 

あらすじ

 御宮星屑は、勇者として召喚されたいじめっ子・鳳崎遼生に巻き込まれる形で異世界に降り立つ。与えられた唯一の固有能力「悦覧者(アーカイブス)」は、世界に存在しているすべての書物を脳内で閲覧する能力だ。異世界でも執拗ないじめを受ける我らが「ゴミクズ」は、「悦覧者」を駆使してレベルを上げ、密かに、そして着々と勇者への復讐の準備を進めていく。愛するロリっ子たちと共に――。
異色の異世界ピカレスクファンタジー、開幕!

 

絵は表紙買いしたんですけど、中身は予想以上に面白かったですよ。

 

この世のありとあらゆる記録媒体にアクセスできる力。悦覧者を使って、レベルを一気に上げスキルを得ていく。何の力もない0の状態のステータスがどんどん上がって、スキルも増えていくのはみててワクワクする。この溜まっていく力の出どころがわかっているのも魅力なんだよな。

 

この作品さ。主人公の目的がいじめっ子に勇者への復讐なんだけどさ。その復讐の相手がスゲェ絵に描いたような嫌なヤツ。だからこそ、ホントはステータス上では格上の主人公に対して調子にのってるとこをみるとさ。いつか痛い目みるんだろうな、と思ってさ。ちょっとニヤニヤしちゃうね。

 

こうした異世界転生ものでお約束のステータス上昇の面白さも魅力なんだけどさ。さらにいいのは少女を隷属させる、あるいは親愛関係をつくっていくとこだね。

 

 ここがこの作品のひとを選ぶとこなんだけどさ。この作品はいじめられっ子が異世界でいじめっ子に復讐する話であると同時に、異世界にいる少女を隷属させる話なんですね。

 

ちなみに俺もこういうのは大好きだ。

 

で、この話に関して大事なのはですね。べつに僕らは加虐趣味、サディスティックだからいいっていってるわけじゃないんですよ。

 

重要なのは裏切られない状態にしたうえで関係を組み立てるってとこに安心感があると思うんですよね。

 

ネット小説が売れる法則ってのはいろいろあるんですけどね。そのなかでとうぶんはぶれないであろう原則なのが読んでてストレスを感じない、感じさせないことなんですよ。

 

 だからこそ恋愛を描くときも、ヒロインが主人公と破局したり、主人公以外の子と付き合う可能性ってのはできるだけ排除しなきゃいけない。

 

基本はヒロインが主人公のことがスゴイ好きってエピソードを押し出して押し切るんですけど。この作品の厄介なとこは主人公がいじめられていて。主人公の他にも、男性キャラがメインでいることなんですよね。ちょっとやそっとのことじゃだめだから契約ってのが大事なんですよ。

 

だからこの主従関係、逆でも構わないんですよ。たとえばゼロの使い魔とかは少女の奴隷になる話ですからね。絶対に離れない関係からはじまる、これが大事なんですね。

 

現に一巻は二人の少女を堕とす話だったんですが、二巻は一人の少女の下につく話で、ちょっとほのぼのしたりぴょんぴょんする場面もあるんですよ。

 

表紙の絵が象徴的ですね。一巻は主人公の手元で死んだ目で人形のようにおとなしくしている少女たち。二巻はツンとした少女に首をたれてその手にキスをしている絵。

 

この作品は自信を喪失していたいじめられっ子が異世界で復讐を決意する話であると同時に、そんな彼だからこその主従関係からはじまる関係構築の話でもあるんですよ。

 

三巻はやくでないかな。web版も更新してくれないかな。いつも楽しみにしてる作品です。

 

web版

http://ncode.syosetu.com/n8769bz/