さて、ネット小説はいったんおやすみして、今日はシカーダについて語ります。
もうすぐ、単行本も発売するし、岡田斗司夫さんが今度のニコ生で1ページずつ解説するそうですからね。その前に俺が1話だけでもやっちゃいます。
シカーダとは、漫画家山田玲司先生の最新作です。代表作は冴えないオタクが姉の大改造によりイケメン男になって好きなヒロインを口説く漫画、Bバージン。あと、ゲイのビジュアル系バンドの男の子が好きな男のために風水を使ったボールを投げる野球漫画、アガペーズ。伝説のジゴロを父に持つNGな純情男子が憧れの彼女を口説くために父が遺したジゴロの神髄を書いた本、アムリタ経典をもとにすべての女性を救う男NGになる漫画NG。などを描いています。
どれもちょっと聞いただけでおもしろそうでしょ。じっさい、おもしろいんですよ。今、あげた作品の共通するところはですね。ぜんぶ童貞の男の子が頑張る話なんですよね。僕が玲司先生の漫画で好きなとこはですね。女性に傷ついた男性のメンタルみたいなものが漫画の中に入っているってとこなんですよ。
そして、このシカーダの1話もですね。童貞のモテない男の心をつかむような作品に仕上がっているんですよ。
前回もちょっとだけ語ったんですが、今回は1話、ぜんぶ最後まで話します。
ネタバレはノーセンキューって方は公式のホームページで1話が公開されているから読んでみてください。
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『だから俺は貧乏ですぐ折れる、クズ野郎なんだよっ!!』
ってさ、一人の男が叫ぶんだよね。涙目でさ。んで、左上のあたりに煽り文。
『結局 僕らの時代は真っ暗で、』
このコマだけでさ。ウルっとくるんだよ。コイツだれだかまだわかってないのにさ。きらいになれないってとこまできちゃってんだよな。俺の中のきらいになれないってそうとうなとこだぞ。なにかしらのイベントがなきゃそこまで好感度あがんないんだよ。でもさ、このコマのさ。このセリフがさ。弱気になったり、自嘲気味で言ってんじゃなくさ。ホントにいろんなことがあってさ。ボロボロになった上のさ。魂の叫びだってわかるからさ。ページ開いた瞬間にこの子の叫びが聞こえた気がしたよ。
でっ、次のコマだよ。
『でもプライドだけはでかすぎるし
なんの取り柄もないし、
君にふさわしい男なんかじゃないし……』
ここでさっきの煽り文のつづきだよ。
『きっとくだらない大人になって、
適当に死んでゆく。
それでも、
アキらめない――』
車が描かれててさ。飛んでるから未来やなってわかるやん。何かから逃げてんだなってこともわかるよね。主人公も顔も映ってないし、小さいからさ。さっきの元気はどうしたかってくらい自信ないんだろうなあ、それで取り繕うように早口でしゃべってんだろうなあって思うよね。
あと、煽り文読んでさ。わかるわってついおもっちゃいました。じつはこの文章、続きがある。そのために長い棒をいれてるってことに、この時の僕は気づかなかったなあ。
『ねぇ、レム……
それって……』
アップにすると車に乗っている主人公が映っててさ。ふきだしがその隣に伸びてて。おもわずその吹き出しの先をみようとしたらさ。次のコマに女の子の横顔があって。ああ、この子がしゃべってんだなって思うじゃん。ここ、ちょっとこわいんだよね。
『「それでも好き」って……
言って欲しいの……』
んで、次のコマで主人公の見開かれた目のアップ。しっかり涙も描いてありますよね。俺、ドキッとしましたよ。twitterで自虐ツィートしているときの俺がフラッシュバックしてさ。心臓つかまれたような気持になりましたよ。
そのハラハラ気持ちのまま、不安な気持ちのまま次のページめくるんだよ。
この後、スッゲェェェぞ。
まだ読んでないやつは大きめに大きめに余白つくるから読めよ‼
いいから読めよ‼!!
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見開きで一言。でっかいコマで一言。
ここでようやく女の子の顔がアップででるんだよね。
さっきは表情みえなかったのにさ。
笑顔なんだよ。しかも満面な笑みじゃなくてさ。死ぬ間際にそばにいる人の手を取ってさ。わたし幸せだったわとか言いそうな笑顔っ!
『全部好きよ』
しかも下のところにさ。煽り文が言うんだよ。
『――キミがいる。』ってキミがいるってさ!
ウルっときますよ。
んで、その次のコマでさ。
歯ァ食いしばってさ。
『だめだ。』
ああダメだよ! 女の子にこんなこと言わせちゃうお前がまずダメだし。今にもこの女死にそうだぞ! どうすんだよオイ!
でっ、「いたぞシカーダだ」って言って追いかけている人がいて。「くっ、くそ!」と言って逃げる主人公。最後のコマで「逝くな、ロルカ――」って言いかけるんだけどさ。バシュってさ。やけに軽い音なんだけどさ。男の乗っている車が打たれるんだよね。
なんでここだけたんたんと語りだすかというと。ここで原作山田玲司、作画バナーイの文字が目に入るから。
その次のページにようやく表紙。シカーダとでっかいタイトル。スカイツリーみたいな建物があって、そこにドンっとちいさなピンク色の爆発。あっ、打たれて爆発したんやなって思うと同時にそういやこれ漫画だよなと冷静になる俺。
そっか、玲司先生が話つくって、このバナーイくんが絵を描くのか。けっこうウマイやん、とこの時は上から目線で考える俺。
だいたいこのあたりでホットになって感情的に作品を楽しむ俺の心のとなりにさ。冷静になってクールに自分の中の現実を語りだす俺が出てくるんだよな。
やっぱ玲司先生ウマいわ。煽り文の構成とかって編集さんが考えたのかな。あやうく心持ってかれるとこだったわ。まあ、といったってこんな都合のいい女いねーしな。
後でこのクールな俺、スゲェ恥ずかしい思いをすることになるんだよな。
爆発したよ。どうなったんだろうと思ったら。『ロルカ!!』って地面で横になっている彼女に叫ぶ男。よかった生きてたんだね、と僕もほっと一息ですよ。
んで、コマの中の主人公の独白。
『俺はずっと…
聞きたかったんだ…』
『どうして君は
俺みたいな
男を……』
『こんな……
何もない…』
点の連続がさ。3点ダッシュっていうんだっけ。ウマいよね。自信なさげな感じが伝わる。
んで、もう一回。『こんな……』って言ってさ。次のページ。
日本列島全体のコマ。今見てみて気づいたんだけど。ところどころ細いね。温暖化でちょっとちっちゃくなっているのかな。1年前って書いてあってさ。ああ、回想はいるんだな、そうだと思ってたよ、と思って左下のコマをみて、あれっ?ってつい思ってしまいました。さっきの男とは違う小太りの男が映ってんだよね。
さかのぼると寂れた商店街、ごみを片づけているのかな。なにしとんのかな。その小太りの男はボロボロの恰好で何か遠くのものをみている。
次のページを見ると小太りの男はもう一人の男と対面して。なにか紙袋を渡してんですよね。セリフないんですよね。『スッ……』と紙袋を男が見せるとゴクリ……とのどを鳴らす男。中身のことを考えるとさ。今見るとちょっとかわいいシーンなんだよね。
受け取って、だっと小走りで走る男。すると、男は別の男に初老のダンディな男に呼び止められるんですよな。「おい。」ってさ。
ここまで読んでもまだわかんないんですよね。この男だれなのか。さっきの二人はどうなったんだよって思っちゃう。でも、緊迫したシーンだってことは伝わる。最初さ、男は麻薬でも持ってんじゃないかっておもってたよ。
初老の男は、小太りの男を疑っているのかと思いきや。たんに注意しただけなんですよね。んで、そのまま目的地に走った男は仲間と合流する。
「手に入ったか?」
「ああ…
多分、
本物だ……」
『ひさしぶりだ……
すげー
ドキドキする…』
『ドアはロックしたか?』
『ああ……
まあ、落ち着けって……』
『早く
見せろ‼』
もうさ、中身なんなんだよって気になるし。緊迫するんだけどさ。今読むと、エロ本を友達の家で開こうとしているシーンにしか思えない。
んで、次のページをめくったらさ。でっかいコマでさ。
オニ柄のビキニを着たさ。かわいい女の子がいるわけだよ。
主人公がちっちゃくてさ。ヒロインでかいんだよね。V字に足をひろげているのがやわらかそ~って感じでよくてさ。今、気づいたんだけどさ。はだしかと思ってたら。ちゃんと虎柄のソックスはいてるんだね。そこがいいよ。
真っ赤な顔して表紙を見る3人組。
かわいい顔してるよなこの3人。
紙の本なのに状態はいいなって言ってんだよね。
んで次のページ。
『これが、
150年くらい前に
作られたなんて……』
『「マンガ」って……』
『やっぱり想像以上だ……』
ここがスゴイ真面目な顔してんだよね。
今読み返して思ったんだけどさ。そうなんだよな。俺らってマンガ読むときこうなんだよな。そりゃ最初はさ。かわいい女の子の表紙につられましたよ。はいはい、そうですとも。だけどさ、その後さ、やられちゃうんだよな。その漫画のストーリーだったり、絵だったり、セリフだったり、キャラだったりにさ。感動するんだよな。
んで、これで俺たちのコレクションは10冊になったとか言っててさ。あれれ、漫画ってそんなに流通してないんだって思った次のページだよ。
大きな銃声、驚く3人。
「マズい、カワセミだ」
いや、カワセミってだれだよ!
って思ってめくると、さらに次のページに渋い男が出る。
ブツを出しなって言っててさ。たぶんマンガなんだろうなって予想つくじゃん。
そう思っていると、最後のコマで「レムさん!」。
ようやく、主人公の名が出てきたよね。
ハアハアって息切らしててさ。後輩には舐められている。しかも年下らしい。で、悔しいからいいとこ見せようってさ。先に現場に入ろうとすると。
ゴッ!と次のページでパイプに頭をぶつける主人公。
Bバージンの頃から思ってたけどさ。コミカルな絵とシリアスな絵の組み合わせがうまいよね。しかも、一番情けないコマでさ。レムディ・マーシャル28歳ってテロップ出てんだよね。その次にジェリコ・オオザト22歳のテロップ。
「あんたいなくてもおなじでしょ」っと後輩に言われ、次のページではわかりやすく落ち込む。コミカルだなぁと思ったら次のコマで独白すんですよね。
『確かに、
俺には
何もないし、
心がすぐに折れる……』
『めげずに何かに挑戦したこともない……』
『仕方ないだろ……』
ってさ、コマは2つに分けてあるんだけどさ。暗い闇の中を歩いているコマなんですよね。落ち込んでいたけど立ち上がって歩き出しているはずの場面心象風景ですね。さっきの『結局僕らの時代は真っ暗で……』のくだりを思い出しますよ。
んで、設定が語られる。うまいですよね。この流れ。
どうやら、未来日本人の暮らしは表向きでは平等と言ってんだけど、じつは格差が激しい。しかも色分けされていて。主人公は一番下の階層を示す金である。
1ページだからわかりやすいんですよね。
んで、次のページで先についた中将と合流する。
ここでさ、没収されている漫画が『最終兵器彼女』なんだよな。
もう、さっきのうる星やつらもそうなんだけどさ。ビックリだよ。しかも当たり前だけど許可とってんだってさ。他の漫画がこんなに出るなんてびっくりだよね。
漫画の所持は犯罪らしく、次のページで燃やされる。ここでようやくどんな話か分かってくるよね。
んで、主人公はさっきの「うる星やつら」を手に取るんだよな。「色っぽい女だな…」ってさ。たしかに、って思ったよ。ホントさ、バナーイさんの描くラムちゃんがかわいいんだよな。これでもかってくらい。
んで、背後で「触んな」って言う小太りの男。いいこと言うんだよな。
「あんたなんかに……
そいつの価値はわからない。
「このマンガの中にはな……
「当たり前に空を飛ぶ少女が出てくるんだぞ。
「それに主人公のあたるって奴は、
バカでスケベでなんの取り柄もないのに……
ああ、そうだった。次のページでさ。この小太りの男、メッチャキラキラした顔で言うんだよな。
「どんなに女にこばまれても……
「絶対に折れないんだぜ…」
主人公、次のコマでえっ、マジ・・・・・・って顔してんだよ。
「しかもヒロインは、そんなクズみたいな男をずっと好きでいるんだ……」
主人公さ。キラキラした目でさ。ちょっとこの漫画に興味持ち始めてんだよな。
んで、背後から近寄る影。
バッと、漫画を奪い取る。
中尉だね。中尉がさ。取った本を炎に放り投げて燃やちゃうんだよな。
「いくぞ、そいつをつかまえろ
「……はい
の次のコマで走り出す小太りの男。その男を、ジェリコとレムは取り押さえるんだよな。その時のさ。レムの表情が悲痛なんだよね。
んで、仕事終わりの帰り道に後輩と話をしながら買い物をする主人公。一番下のランクであることの悔しさだったり、なぜか今日は特別だからと猫缶を買う主人公。んで、ジェリコはマナって女と帰って行ってさ。主人公はクソウって言いながら帰ると。
恋人なんていねーしと言いながら。自分の家でマシューと呼ぶ。するとそこには白い猫がいるんだよな。しかもかわいい。嫌そうな顔しているとこも可愛い。
でさ、猫抱きしめながら言うんだよな。俺の誕生日にお前だけはいてくれよってさ。
だけど、猫はそっぽをむいて遠くを見る。しかも猫缶食べないままどっかいっちゃってんだよな。
でさ、外の寒い中でさ。言うんだよな。
さみしくて死にそうだ。
ってさ。胸が張り裂けそうになりましたよ。
で、ここでさっきの小太りのセリフ思い出す。
次のコマで描かれるラムちゃん。やっぱりかわいいんだよな。
で、目が覚めると、中尉に起こされているレム。
また事件があったらしく。彼は車で現場へと急行する。
車の中で、なんで漫画を燃やすのかって話をしましたよね。
それで言うセリフがさ。
「あんなガキ臭い妄想に労働意欲を奪われたのが、
この国ががけっぷちになった理由だ」
「全国民が生産性を上げないと国は滅びる」
ホントに経済が困窮している時代なんですよね。今の状態がまやかしでいつ来てもおかしくないんでしょうけどね。
「マンガってそんなに価値がないモノなんですか!!」
って言ってさ。
そしたら、中尉は言うんだよな。
「ああ……あんなモノは「クズ」だね…」
経済が貧窮する理由なんてさ。漫画以外にもあるはずなのにさ。それを規制しようとする。あたまごなしにダメって言ってんだよ。かなしいねぇ。
で、ここでさ。やっぱりまた小太りの男のセリフがはいるんだよね。
そして漫画を持っている男の部屋に押し入り、漫画を押収する。
ここでさ、中尉に襲い掛かる男がいるんだけどさ。そこがカッコいいよね。銃を向けて打ち殺すあのシーン。
んで、そんななか。じつは主人公はその部屋で見つけたうる星やつらをさ。こっそり持ち帰って読んじゃうんだよね。そしてさ、うる星やつらのコマをうつしながらさ。さっきの小太りのセリフだよ。しかも、これさ。さっきまで小さくコマに映ってたあたるがさ。しっかり描いてあるんだよな。
「主人公の男は…
バカで、スケベで…
なんの取り柄もないのに…
絶対に折れないんだ……」
小太りのセリフは枠に描いてんだけどさ。
「そして、ヒロインは…」
は白い吹き出しなんだよな。つまり主人公の独白。主人公が心の底では求めていることなんだよな。
「そんなダメな男…」
そして次のページだよ。
ここでさ、ラムちゃんが抱き着くシーンがさ。めっちゃ可愛いの。あと、じょじょにあたるくんが大きくなっているよね。ほんと、バナーイ先生、マジパネェわっ!
んでさ、言うんだよな。
「ちっ、
くだらねぇ……
こんな女、どこにもいねぇし…」
あれぇ、おかしいなあ? この言葉どっかで聞いたぞ……
…………さっき数ページ前に俺が心の中で思ってたことじゃねぇか!
もう、恥ずかしいわ! 玲司先生、俺の心お見通しじゃねぇか! 恥ずかしすぎてさ。背中のあたりがめっちゃ熱くなったよ!
恥ずかしいな、と思いながら読み進めるとさ。主人公さ。家に帰ろうとして歩き出すと、誰かにぶつかってさ。漫画を地面に落とすんだよね。そしてそれを拾われる主人公。
女の子の目線が隠れててさ。何考えてんだろうって思うじゃん。
その次のページでだよ。
「だっちゃ?」
って言うヒロイン。
ああ、お前らここで出会うのか!
つい納得してしまう俺なんだよ。
いいよな、こんな女いないってさ。今こそ俺にこんなヒロインが必要だってとこ現れるラストね。続き読みてぇよ。
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